宇宙長期滞在を終えて……星出彰彦宇宙飛行士 帰国後単独インタビュー(前編)

「報道部畑中デスクの独り言」(第284回)

ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、星出彰彦宇宙飛行士について—

宇宙長期滞在から帰還した星出彰彦さん(2021年11月9日 JAXA・NASA提供)

国際宇宙ステーションに昨年(2021年)、半年あまりにわたって長期滞在したJAXA宇宙飛行士の星出彰彦さん。アメリカ「スペースX」の新型宇宙船「クルードラゴン」で宇宙に向かった日本人宇宙飛行士は、野口聡一さんに続いて2人目となりました。

滞在期間は2021年4月24日からおよそ200日。滞在中はステーションの船長としての重責を担いました。11月、無事に地球に帰還。リハビリ期間を経て日本に一時帰国しました。その星出さんに、オンラインで帰国後単独インタビューを行いました。

冬休みのタイミングで帰って来たため、休暇を利用しながらゆっくり過ごせたという星出さん。ただ、世の中は新型コロナウイルス、オミクロン株の感染拡大が続いている状況。「友人との再会も控えている状態」と残念そうに話していました。

星出さんは今回、自身としては4回目となる船外活動を行いました。28時間を超える累積時間は日本人宇宙飛行士としては現時点で最長です。ステーションの外では、新型の太陽電池パネル設置のための土台づくりが進行中ですが、星出さんの作業もそれがメインとなりました。

—–

(畑中)船外活動、今回は不安なく行えましたか?

(星出)今回、私が行った船外活動は、後々、新型の太陽電池パドルを取り付けるときの準備をして行くというもの。当日は想定外の事象は少しありましたが、作業自体に対する不安はなかったです。

(畑中)想定外の事象とは?

(星出)そんなに前回ほど大事には至らなかったのですが……構造物をかこっている、熱的に防護するための布のようなものを、所定の位置に取り付けられないといった事象はありました。地上のチームとコミュニケーションをとりながら、改善できるところはしましたし、そのままでいいという指示があれば、それで対応しました。

—–

いまから10年前、2012年の長期滞在での船外活動。このとき、星出さんは電力切替装置の交換作業を行いましたが、ボルトのねじ山に金属のごみが噛みこんでしまうという「想定外の事態」に見舞われたことを思い出します。

4回目となる船外活動で、宇宙ステーションの外は星出さんにはどのように映ったのでしょうか?

—–

(畑中)以前、国際宇宙ステーションを我が家と言っていましたが、外は庭みたいなものですか? 前回に比べて外に出た瞬間、感じたことはありましたか?

(星出)前回はワクワク感が大きかった、特に1回目はそうでした。今回は4回目の宇宙遊泳で、どちらかと言うと仕事モード。地に足がついてという部分がすごかったように思います。もちろんワクワクして出て、いろいろ眺めようという気持ちはありましたが、どちらかと言うと、きょうはこういう仕事があって、無事にエアロックに戻ることがいちばんの仕事だと話をしていました。

(畑中)記者会見で宇宙ステーションは「いい意味で手垢がついていた」と話していましたが、外観もそのように見えましたか?

(星出)外観も……実際に作業場所の経路で、過去に作業した跡が残っているんですね。作業ではワイヤーを固縛するために針金のようなものを使うのですが、いろいろなところに置いてあって、誰かが作業したんだなとか……3回目の船外活動のときには私もこのエリアに行っているので、懐かしく思い出しつつ、ここに来たなと思いながら行っていました。

(畑中)すっかり仕事場という感じですか?

(星出)畑中さんが「庭」と言っていましたが、そんな気もしますね。あまり外側は意識していなかったですが、なかなか出ることができない庭みたいな感じでしょうか。

—–

星出彰彦さん船外活動の様子(JAXA・NASA提供)

宇宙空間で「地に足がついて」とはこれいかに? 何やら小話のようですが、これも星出さんならではの実感でしょう。

一方、記者会見では「宇宙服」が話題になりました。サイズの調整が今後の改善点と話していましたが、インタビューではさらに踏み込んでみました。題して「宇宙服の秘密」です。

—–

(畑中)記者会見では、宇宙服のサイズ調整が難しいと言っていましたが……。

(星出)サイズが決まっている部分と、調整するためのパーツがあります。人間は体に個人差があり、ぴったり合わせるテーラーメードはできない設計になっていますので、ある程度の調整はするけれど、あとは人間が宇宙服に慣れると。

(畑中)やせてスポッと抜けてしまうような心配はあるのですか?

(星出)やせる、太るは大きく影響しないと思いますが、宇宙に行って無重力になると、背が伸びる人が出ることがあります。宇宙に行って船外活動する前にいまは、ちゃんとフィットチェックをします。問題がなければ、そのまま別の日に宇宙遊泳を行います。できるだけ調整できるようにしていますが、とは言ってもなかなか人間なので、ピッタリではないということはあります。

(畑中)微調整はスペーサーか何かをかませたりするのでしょうか?

(星出)スペーサーでしたり、ひものようなもので引っ張って短くしたり、伸ばしたりできます。ひじの位置をずらすとか、手首の長さを短くするとか、そういった微調整ができます。

(畑中)身長はどれぐらい伸びるものなのですか?

(星出)人によるみたいです。本当に数センチレベルで伸びる人もいるし、それで背骨が痛いという人が出ることもあります。今回そういうことはなく、私自身も痛みはないのですけれど、そういうことを加味してサイジングは行わなくてはいけません。

—–

宇宙ではムーンフェイスといって、顔がまん丸の月のようにむくんでしまう現象が起きるそうですが、背が伸びるというのは初めて聞きました。何でも脊髄の椎間板が重力から解き放たれることで起きる現象だそうですが、なるほど、人間の寸法という「パラメータ」のなかで、宇宙服はどうあるべきか……古くて新しい課題と言えそうです。

さて、今回の長期滞在では数々の実験が行われましたが、なかでも将来の月・火星探査に向けた実験も注目されています。これについては次回に譲ります。(了)

畑中秀哉(はたなか・ひでや)

■ニッポン放送 報道記者・ニュースデスク。
■1967年、岐阜県生まれ。早稲田大学卒業後、1990年にアナウンサーとしてニッポン放送に入社。
■1996年、報道部に異動。警視庁担当、都庁担当、番組ディレクターなどを経て、現在は主に科学技術、自動車、防災、経済・政治の分野を取材・解説。
■Podcast「ニッポン放送報道記者レポート2022」キャスター。
■気象予報士、防災士、くるまマイスター検定1級。

関連記事(外部サイト)