ウクライナ侵攻はプーチンの「戦略的判断ミス」 戦争は独裁者が「誤算」したときに起きる

ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」(2月25日放送)に外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が出演。24日午前にウクライナ東部での「特殊軍事作戦」の実施を宣言したロシアのプーチン大統領のテレビ演説内容のポイントを解説した。

24日、軍事作戦の決行をテレビ演説で宣言するロシアのプーチン大統領(ロイター=共同) 2022年2月24日 写真提供:共同通信社

24日、軍事作戦の決行をテレビ演説で宣言するロシアのプーチン大統領(ロイター=共同) 2022年2月24日 写真提供:共同通信社

得られる利益と比べ明らかに不利な「侵攻」をしたのは「戦略的な判断ミス」

宮家)まず一般論として、多くのロシア専門家は「軍事侵攻はないんじゃないか」と言っていたんですよ。もちろん、すべての人ではないですが……。けれども、戦争って実際に起きるんですよ。戦争っていうのは往々にして独裁者が「誤算」をしたときに起きるんです。人間が合理的に判断すれば、こんなバカなことするわけないでしょう。私は、プーチンさんの今回の判断はおそらく戦略的なミスだったと思います。おそらくこれからロシアが被るであろう不利益と、それから仮にウクライナの一部を占領、もしくはウクライナで政権交代をしたとしても、それで得られる利益と比べたら、明らかにロシアにとって不利な判断ですよ。なんでこんな判断するかといえば、どこかで判断を間違えた。もうお年なのか……そんなことはないと思いますけどね、まだ70前でしょ?もしくは何かウクライナに対して特別の感情を持っていたか、理由はわかりませんが、これは後で本人に聞いてみるしかないんですけども、今回僕はこのプーチンさんの戦略的判断ミスがすべてだったと思っています。

その上でこのプーチン大統領のテレビ演説の内容を読みました。要するに、簡単に言うとですね、8年前、得体の知れない人達が何か他国(ウクライナ東部)に入っていって占領して、8年かけて今度は傀儡政権を作って、それで『自国民保護だ』と言って本格的に入っていくわけでしょう。これは「満州事変」ですよね。要するにそれと同じ非常に稚拙なやり方だと私は思う。これで『我々の国境に脅威が迫ってる』……それは逆だろうと……。

2022年2月3日、米ホワイトハウスで、過激派組織「イスラム国」指導者の自爆死について話すバイデン大統領(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

2022年2月3日、米ホワイトハウスで、過激派組織「イスラム国」指導者の自爆死について話すバイデン大統領(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

アメリカの対応は正しかった

宮家)『イラクの時だって大量破壊兵器はなかっただろう』と、アメリカのインテリジェンスをあざ笑っているわけですが、「ないものを探す」っていうのは、なかなか難しいんですよ。でも今回は、「あるものを上(衛星などからの情報)から見ている」わけだから。多くの人が「プーチンが合理的な判断すれば戦争はない」っていうのはその通りなんだけれども、実際にアメリカの情報は今回正しかったんですよ。なぜ正しいかというと、それは相当程度のことが、上から見えるからです。もちろん、いろいろな情報を総合している。軍隊というのは簡単に「ほい、明日から行け!」っていう組織ではないので、しっかり準備していくものですから、プロが見ればこれが本当に戦闘態勢に入ってるのか入っていないのかって、わかるはずなんです。その意味ではアメリカは今回正しかった。でも、なぜ今回はバンバン情報を出したのでしょうか、普通は出さないですよね。出すとどこから情報を取ったかがわかってしまうわけで、下手したら大勢の人が殺されちゃうわけだから。そのくらい大事な情報をなぜ出したかといえば、おそらくプーチンさんに「俺たち、ここまで知ってるんだぞ」と、「だからやめたほうがいいぞ」というふうに言ったつもりなんだろうけど、やっぱりプーチンさんはそれも聞かなかった。なぜ聞かなかったのか。「判断ミスしたから」ですよ、と私は思う。

さらに『我々の計画にウクライナの領土の占領は含まれていない』とも言っている……うーん、そうかな。まあどっちみちウクライナ全土の占領はできないですが、部分的にはやるのではないかと。

2022年2月22日、親ロ派が支配するウクライナ東部のドネツクで通りを走行する戦車(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

2022年2月22日、親ロ派が支配するウクライナ東部のドネツクで通りを走行する戦車(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

戦争の目的がよくわからないままの軍事行動であれば、成功はしない

宮家)一番大事なことはですね。戦争をやるときに戦争目的っていうのがあるわけですよ。目的のない戦争なんてないですから。今回ロシアはウクライナに兵を進め『ウクライナ東部での特殊軍事作戦をやった』と、こう言ったわけですけれども、「特殊軍事作戦」とは何を言ってるのか。よくわからないけれども、東部でやるのだとしても、当然のことながらウクライナの「制空権」もしくは「航空優勢」と言いますが、空の支配ですよね、これをやるためには、当然指揮命令系統、飛行場、武器弾薬庫等々を一気にやらないといけない。もちろんサイバー戦などいろいろな手を使うわけですけれども、そうやって制圧をしていくわけですよね。でも、まだここでも戦争の目的がはっきり示されていない。何を求めているのかわからないけれども、もしこうやって戦略目的がよくわからないままに軍事行動だけをしているのであれば、これはやっぱり成功はしないでしょうね、というのが私のイメージでございます。

残念ですけれども、これが始まってしまった以上彼らは、ウクライナを少なくとも中立化させるために相当エネルギーを使って時間をかけて、そして目的を達成しようとするでしょうね。その時にどのくらい経済制裁をわれわれができて、そしてそれで思いとどまらせるかどうかでしょうが、おそらくロシアは言うこと聞かないでしょうね。そういったイメージですね。

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