ロシアのウクライナ軍事侵攻 長期化する可能性が出て来た「いくつかの要因」

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月28日放送)に二松学舎大学・国際政治経済学部専任講師の合六強氏が出演。ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナ情勢について解説した。

ロシアによるウクライナ侵攻の懸念が高まるなか、国土防衛に協力したいという一般住民の軍事訓練が行われた。訓練で射撃の態勢を学ぶ民間人の参加者=2022年2月19日、キエフ近郊 写真提供:産経新聞社

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻、これからの行方

2月24日に始まったロシアによるウクライナへの全面的な軍事侵攻、侵略。現在も首都キエフをはじめ各地で戦闘が起こっている。ここでは、ウクライナ情勢に詳しい二松学舎大学・国際政治経済学部専任講師の合六強氏に、現状分析や今後の対応について訊く。

飯田)ここまでのウクライナ情勢を、どうご覧になりますか?

合六)今回の軍事侵攻は、ウクライナの主権および領土一体性に関する国際法違反に留まらず、ヨーロッパ、そしてグローバルな秩序を支える根本原則に対する挑戦だと思います。もちろんウクライナ人がロシアと戦っているわけですけれども、自分事として考える必要があると思います。

飯田)まさに力による現状変更を国際社会が認めてしまうのか、という瀬戸際の部分ということですね。

合六)そうですね。

ベラルーシ国境でのウクライナとロシアの話し合いは、もの別れになる可能性が高い

飯田)ウクライナとロシアがベラルーシ国境で話し合いを行うということも報じられていますが、今後の推移はどうご覧になりますか?

合六)もちろん、ウクライナとロシアはできるだけ犠牲者の数を減らしたいでしょう。ただ、そのためには、それぞれ目的が達成されなければ意味がないわけです。いまは一応、話し合いに合意するとは言っていますけれども、他方でロシアの方は、プーチン大統領が核の脅威をちらつかせています。ロシアが望む高い要求をウクライナ側にのませようとしているのだと思います。ゼレンスキー大統領も、対話の見通しは厳しいということをおっしゃっていますから、もの別れになる可能性も高いです。

ロシア側の要求は「ウクライナの非軍事化と中立化」

合六)プーチン大統領が開戦の演説で述べていたのは、「ウクライナの非軍事化と中立化」ということでした。これが何を意味するかと言うと、完全に主権国家としての体をなさないということです。ここを要求として出している以上、ウクライナ側の現政権としてはのめないだろうと思います。

飯田)それは属国化することとほぼ等しい。

合六)そうですね。

西側からの武器供与が届けばさらに抵抗を続けるウクライナ

飯田)今回の話し合いに関して、ウクライナ側が何か提示できるカードはありますか?

合六)なかなか厳しいところはあると思うのですが、少しでもロシア軍によるキエフ包囲を遅らせ、時間稼ぎをするなかで、西側からの武器供与などが確実に届くようになれば、さらなる抵抗ができると考えている可能性はあります。

モスクワのクレムリンで、ベラルーシ大統領との共同記者会見に臨むロシアのプーチン大統領(ロシア・モスクワ) AFP=時事 写真提供:時事通信

紛争は長期化する

飯田)今回の話し合いが妥結に至らなかった場合、ロシア側としては、それを口実に総攻撃を開始する可能性はありますか?

合六)あると思います。これまで和平のためのミンスク合意に基づいて議論、交渉して来たわけです。ミンスク合意が締結された2014年9月、2015年2月の前には、ロシアはかなりプレッシャーを掛け、ウクライナ領内に入って戦況を有利にした上で、自分たちの要求をのませています。核の脅威をちらつかせていますけれども、それも一環でしょうし、合意できなければ当然、さらに攻勢を続けることで、相手を屈服させようとしていると考えるのが妥当ではないでしょうか。

短期的な目的というのは、キエフに入り込んでゼレンスキー大統領を拘束、あるいは殺害し、自分の息のかかった政治家をトップに据えた新政権を樹立することだと思います。しかし、各地に残ったウクライナ軍や一般国民が抵抗することによって、新政権樹立時に不安定化する可能性もあります。その意味では、火種が残ったまま紛争が続くことも考えられますし、1回落ち着きを見せても、またその後に再燃する可能性はあると思います。

犠牲を払ってでも、自由や独立のために戦い抜く

飯田)ゼレンスキー大統領はキエフに留まり続けているということです。今後、亡命政権的なものなども含めて、組織的な抵抗が続いて行く。西側諸国としては、抵抗を続けることによって、「現状変更を認めない」というところまで行かなければならないということですか?

合六)ゼレンスキー大統領は非常に難しい選択を強いられていると思います。このまま戦闘を続ければ、より多くの国民に犠牲を強いることになります。それはいいことなのかどうか。あるいは犠牲を払ってでも、自由や独立のために戦い抜くということが、中長期的なウクライナという国家のためにいいと判断しているのか、というところです。現状では、後者を取っているのだろうと思います。

ドイツも武器供与を決める 〜具体的にどんな軍事支援ができるか

飯田)これに対して、例えばNATOが何か支援できるのかどうかというところは、どのような議論になっているのでしょうか?

合六)ご存知の通り、ウクライナはNATO加盟国ではありません。ですから、いわゆる集団防衛義務というのは、今回のケースには適用できません。しかし、この軍事侵攻以降も、NATO諸国は相次いでウクライナ軍に対する武器供与を行うという決定を下しています。

飯田)そうですね。

合六)また26日には、これまで消極的な姿勢を取っていて、それに対して国際的な非難も集まっていたヨーロッパの大国であるドイツが、姿勢を転換して武器供与を決めたということは、遅ればせながら大きいと思います。あとはキエフ周辺で攻防が続くなか、ロジ面も含めて具体的にどう軍事支援が行き届くかというところが重要になると思います。

返り血を浴びてでもSWIFTからロシアを排除するべき

飯田)日本は何をするべきでしょうか?

合六)冒頭に申し上げた通り、これはグローバルな秩序を揺るがす大問題です。日本も享受して来た、既存の国際秩序の原則が揺らいでいるということですから、主権と領土の一体性を維持するということ、そして力による一方的な現状変更は絶対に認めないということを、ただ声を上げて確認するだけではなく、具体的な行動を取る必要があると思います。その意味では、27日の制裁も大きかったと思いますし、少なくともG7あるいは西側諸国の結束に穴をあけなかったことは評価してもいいのではないでしょうか。

いま何が問題なのかと言うと、先ほどから確認しているような国際秩序の原則です。根本原則なので、このためには返り血を浴びてでも甘受する必要があると思いますし、首相をはじめとして政治家の方々には、それを国民に説明して理解を得た上で、みんなに我慢してもらうということもはっきり言う必要があると思います。

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