世論がウクライナに向いている間隙を縫って、水際対策を緩和する岸田政権

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月2日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。政府による新型コロナウイルスの水際対策が緩和され、ビジネス目的などの外国人の新規入国が再開されたというニュースについて解説した。

2022年2月27日、記者の質問に答える岸田総理〜出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202202/27bura.html)

新型コロナウイルスの水際対策緩和 〜観光を除く外国人の新規入国が再開

政府による新型コロナウイルスの水際対策が3月1日に緩和され、ビジネス目的などの外国人の新規入国を、およそ3ヵ月ぶりに再開した。1日あたりの入国者数の上限は、これまでの3500人から5000人に引き上げられた。

飯田)待機期間を入国後7日間としておりましたが、ワクチンの3回目接種などを条件にして免除、あるいは3日間に短縮されることになっています。

佐々木)厳しすぎるとずっと言われていたので、このタイミングで緩和する判断はよかったのではないでしょうか。新型コロナの感染者数も決して減っているわけではなく、東京では下げ止まり感があって、また増えるのではないかという話もあるのですが、ロシアのウクライナ侵攻ですべて吹き飛んでしまったという状況です。

飯田)そうですね。

佐々木)ウクライナと水際の関係で言うと、ウクライナから日本に留学する予定だった若者が、水際対策で入国できずウクライナに留まっていたところ、戦争が始まってしまい、戦場に行って亡くなったという情報がありました。

飯田)日本に留学する予定だったのが。

佐々木)また、在日ウクライナ人の人たちが、ウクライナから家族を呼んで日本に入国させようと思っても、入れないのでどうしたらいいのかわからないというツイートもありました。それぞれ個別の小さな話なのだけれど、そういう人たちにとっても、水際対策の緩和はよかったのかなと思います。

世論がウクライナに向いている間に水際対策を緩める岸田政権

佐々木)菅政権が新型コロナワクチンの接種を進めたのに感染が収まらず、批判が大きかったではないですか。少しでも感染対策を緩めるとメディアの猛烈な反発があり、それで支持率が落ちるという状況を目の当たりにしたので、岸田政権になってから感染対策をとても厳しくしていますよね。

飯田)完全にトラウマ状態になっています。

佐々木)感染対策はいいのだけれど、若干バランスを逸していて、経済よりも感染防止に寄りすぎているのかなと思っていました。そのため、世論がウクライナに向いているときに「ササッ」と緩めるのは、いいことではないかなと思います。

閉鎖的に見えるいまの日本 〜「オープンに生きて行く」マインドを取り戻すべき

飯田)基準が厳しい日本への入国を諦めて、他の国へ行くという、ジャパンパッシングのようなものが起こっているという話も、特に留学生などではあるということです。

佐々木)ただでさえ日本は、働きに行くにも給料が安すぎるとか、大学の研究者になるにも待遇がよくないということを言われているのです。さらにコロナ禍でますます「なかに閉じこもっている」ということは、みんな感じているのではないでしょうか。

飯田)感じますね。

佐々木)でも、鎖国や村社会などというのは江戸時代のイメージでしかなくて、「もっと積極的に行こうぜ」という民族性も昔は日本にもあったのです。それが忘れ去られて、閉塞的になっているのがここ数十年の状況です。バブルのころは「イケイケ」だったではないですか。

飯田)「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の時代ですものね。

佐々木)「24時間戦えますか」ですよ。「世界のジャパニーズ・ビジネスマン」ですよ。コロナ禍で閉塞的になったのは仕方ないけれど、収束が見えて来ているなかで、もう少し昔のようにオープンに生きて行くというマインドを取り戻してもいいのではないかと思います。

かつての百姓は移動しながら交易にも従事していた

飯田)江戸時代も鎖国と言われますが、長崎の出島を開いたりして、外からの文化を完全にシャットアウトしていたわけではありません。人的交流もありましたし。

佐々木)「村社会」というイメージが我々は強すぎるのだけれど、歴史学者の網野善彦が書いていますが、百姓は別に農民ではないと。移動しながら仕事をしているさまざまな職人や、交易に従事している人たちもたくさん含まれていたわけです。

飯田)いまで言うところのノマドワーカーのような感じ。

佐々木)そうなのですよ。移動を積極的にしながら、貿易もやりたいと思っていたのが当時の日本人だったと。それが明治時代以降、「日本人は村社会だから」という、勝手な自己イメージをつくってしまった問題があるのではないか、と指摘されています。

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