住民避難ルートを設置するのは「住民がいるところを攻撃する」ということ 〜ロシアとウクライナの2回目の停戦協議

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月4日放送)に慶應義塾大学総合政策学部教授の廣瀬陽子が出演。3月3日に行われたロシアとウクライナの2回目の停戦協議について解説した。

モスクワで、取材に応じるロシアのプーチン大統領(ロシア・モスクワ) AFP=時事 写真提供:時事通信

戦闘地域の住民避難ルートを設置する方針で合意

ロシア軍のウクライナ侵攻から1週間を迎えた3月3日、2回目の停戦協議がベラルーシ西部で行われた。双方の代表団は交渉の結果、戦闘地域の住民を退避させる避難ルートを設置する方針で合意したと明らかにしている。また、次回の停戦交渉は来週初めにベラルーシで行われるということだ。

飯田)ウクライナのゼレンスキー大統領はテレビ中継方式で記者会見を行い、停戦交渉について、継続の意思は示しつつも「妥協できない点もある」と難航を示唆したと、ロイター通信などが伝えております。攻撃の激しいマリウポリや南部などに住民避難ルートをつくるという話が出ていますが、全体としてどうご覧になりますか?

廣瀬)これは明らかにロシアの戦い方の方針が変わったことの証明です。当初、ロシアは東部の住民の安全は確保すると言っていました。そのために軍事施設のみを攻撃するという方針だったわけですが、住民退避ルートをつくるということは、「住民がいるところを攻撃する」と言っているようなもので、明らかにロシアの方針が変わったということです。住民が逃げられる状況が生まれるというのは、大事なことではあるのですが、そもそも「住民に攻撃をするな」とロシアには言いたいところですよね。

飯田)人道上の大問題になって来る。

廣瀬)そうですね。

住民を巻き込む無差別な攻撃スタイルに変わって来た

飯田)フェーズが変わって来たのは、いつごろからだと考えられますか?

廣瀬)3月1日くらいから明らかに変わって来ました。その時期から住民が住む地域も意図的に狙っている状況があると思います。これまでロシアはいろいろな戦い方で注目されて来ましたけれども、シリアやチェチェンに対するような形で、住民が住むところにも無差別に攻撃するような戦闘スタイルに変わって来たのだと思います。

飯田)チェチェンのグロズヌイやシリアのアレッポが典型ですけれども、ほとんど廃墟と化してしまう。あの状況が今後、いろいろな都市で起こり得るということですか?

廣瀬)そうですね。特に住民退避ルートをつくる方向で合意がなされたということは、「住民を攻撃しますよ」という宣戦布告のようにすら感じます。

さらに増兵か 〜ベラルーシ軍参戦の可能性も高い

飯田)いままでと戦い方が変わるということになると、入って来る軍隊の陣容も変わって来るということですか?

廣瀬)変わると思いますし、想定されていた軍の3倍くらいの人数になるのではないか、というようなことも言われております。

飯田)アメリカ国防総省の分析などでは、用意した軍の9割を既に投入しているという話がありますが、さらに増兵するという可能性もありますか?

廣瀬)ロシア各地から人を集めて来ることもあるでしょうし、いまはベラルーシとの軍事協力関係が緊密化しています。1回目の停戦協議のときに、「交渉が決裂したらベラルーシ軍が参戦する」というようなことも言われていましたが、それが現実になる可能性も高いと思います。

カザフスタンが加わり「CSTO対ウクライナ」という構図になる可能性も

飯田)カザフスタンも軍を動かすのではないかという話が出て来ていますね。

廣瀬)いまのところカザフスタンは難色を示していますが、カザフスタンは今年(2022年)の1月に政変めいたものがありまして、そのときにロシアが主導している集団安全保障条約機構(CSTO)の参加国が、カザフスタンに軍を送って対応したのです。ですので、カザフスタンはプーチン大統領に借りがあるという状況なのです。

飯田)特に現政権は。

廣瀬)現政権のトカエフ大統領は極めて大きな借りをつくっている状態なので、参戦もなきにしも非ずかと思います。

飯田)そうなって来ると、事態がさらに大きくなってしまう。

廣瀬)そうですね。いまは「ロシア対ウクライナ」という構図ですけれども、「CSTO対ウクライナ」という構図に変わって来る可能性もありますね。

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