SWIFTよりも影響の大きいロシア中央銀行の資産凍結 〜これだけあるロシアへの「制裁効果」

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月15日放送)に経済アナリストのジョセフ・クラフトが出演。国際銀行間通信協会(SWIFT)によるロシアの7つの銀行の排除について解説した。

モスクワで、取材に応じるロシアのプーチン大統領(ロシア・モスクワ) AFP=時事 写真提供:時事通信

SWIFTがロシアの7つの銀行を排除

金融機関同士を結ぶネットワークを運営する国際銀行間通信協会(SWIFT)は、3月14日までにロシアの7つの銀行を決済網から排除したと発表した。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に対する制裁として、欧米は2月、ロシアの銀行のSWIFT排除に合意していた。

飯田)排除されたのは、ロシア第2位のVTB銀行やバンク・ロシアなどということです。また、3月20日にはベラルーシの3つの銀行も排除される予定です。この制裁を出すかどうかは大きいと報道されていましたが。

クラフト)大きいです。最初に米国とEU、英国、カナダが共同声明で、ロシアの銀行をSWIFTから排除するよう求めたのが2月26日です。それ以前はかなり弱腰で、「SWIFTからの排除はできない」というのが大方の見方だったのですけれども、ロシアの侵攻などを見て世論が反発し、それに政府が動かされて強硬策に打って出たということです。

飯田)世論に動かされて。

クラフト)ただ、7つの銀行だけですので、抜け道は残してあるのです。例えば最大手である国営ズベルバンクが入っていないということは、ガスや原油のエネルギー決済ができるように残してあるのです。しかし、そうは言っても民間企業はロシアとの取引に消極的になりますので、相当程度の制裁にはなると思います。

SWIFTよりも影響の大きいロシア中央銀行の資産凍結 〜ルーブルの大暴落でインフレが加速

クラフト)SWIFTも非常に大きいのですけれども、SWIFT排除の影響が出るまでには、しばらく時間がかかります。それよりも即効性があって大きいのが、ロシア中央銀行の資産凍結です。これによって、2月28日にはルーブルが4割下落し、株価も暴落して、証券取引所が取引停止になりました。ルーブルの大暴落でロシア国内ではインフレが加速しています。

欧米でも対応が急遽決まった中央銀行への制裁とプーチン大統領ら個人の資産凍結

飯田)中央銀行に対する資産凍結は、各国の判断でできるものなのですか?

クラフト)各国の判断でできます。日本はロシア中央銀行の資産を現金で6兆円ほど預かっているのです。それを今回凍結したということです。

飯田)6兆円を。

クラフト)SWIFTからの排除は話し合われていたことですが、中央銀行への制裁とプーチン大統領ら個人の資産凍結については、事前に協議されていませんでした。

飯田)SWIFTからの排除以外は。

クラフト)欧米の姿勢が急変して、2月26日にいきなり言われたのですが、日本は即決できないため24時間経って、2月27日に岸田総理が賛同することを表明しました。欧米からいきなり言われたものですから、精査するのに少し時間がかかった。それだけ急激で予想外の制裁措置であったということです。

飯田)ロシアにとっても予想外だったと思っていいのでしょうか?

クラフト)中央銀行はまったくの予想外だったと思います。これから効果が徐々に出て来ると思います。

モスクワ近郊ノボオガリョボで、オンラインの安全保障会議に臨むロシアのプーチン大統領(ロシア・モスクワ近郊ノボオガリョボ) AFP=時事 写真提供:時事通信

ロシアが国債の利払いをルーブルで払えば事実上の債務不履行に 〜4月から6月の間に正式にデフォルトに

飯田)ロシアの財務大臣は3月13日、「海外資産の半分が凍結されて利用できなくなっている」と述べたということです。

クラフト)16日に最初のロシアの外貨建ての国債の利払いが来ます。ロシアは利払いをルーブルで、それもマーケットのレートではなく、公的為替レートで払うとしていますが、これをやると、事実上の債務不履行になるのです。

飯田)事実上の債務不履行に。

クラフト)デフォルトになるのですけれども、それが明日(16日)起きるということです。起きたところで何が変わるわけではないのですが、4月〜6月の間にロシアが正式にデフォルトとなり、経済的にかなり痛手を被ることになる。ですから6月までに、いかに制裁を持続できるかというのが欧米諸国に問われていることです。

政策金利を9.5%から20%に上げたロシア中央銀行

飯田)海外の資産を凍結するということで、最初に言われていたのは、これによって為替介入をしようにも弾がなくなってしまうという話がありましたが、それ以上の効果があるということでしょうか?

クラフト)為替の防御ができないので、ロシア中銀が何をやったかと言うと、政策金利を9.5%から20%に「ドーン」と上げたのです。そうすると住宅ローンなど、銀行間、あるいは企業とのローンが跳ね上がります。経済活動がストップしてしまうということで、SWIFTよりも痛い影響があり、相当効くのではないでしょうか。

制裁国の企業の資産を没収 〜利払い、債務を払わない

飯田)ロシアが対抗策を出して来るということはありますか?

クラフト)ロシアが示唆しているのは、制裁国に対して「資産を没収する」ということです。ロシアで活動している海外企業が撤退していますよね。撤退ないし、停止。こうした制裁措置として、資産を没収すると言っています。

飯田)撤退して残った資産を。

クラフト)もう1つは利払いや債務に関して、「払いません」といった措置を取っている。ですから、それなりにロシアにお金を貸している企業、金融機関は直接影響を受けるのですけれども、金融システム全体への影響は限定的です。ロシアの国債の残高は200億ドルくらいなので、それほど大きくはないのです。

飯田)これを発端にして、世界が金融不安に陥るというようなことはない。

クラフト)リーマンショックのような、あるいは1997年のロシア危機のようなことにはならないので、そうした心配はないと思います。

プーチン政権を支える「オリガルヒ」をターゲットに

飯田)金融制裁など、いろいろなことをやっていますけれども、欧米メディアでは個人資産の部分で、「こんな豪勢なヨットを持っている」というような報道も出ています。

クラフト)メディアでは取り上げやすいのですけれどもね。確かにそれも重要で、プーチン政権を支えているのは「オリガルヒ」と呼ばれる富裕層です。彼らの資産をターゲットにされるのは相当痛いはずです。プーチン政権を支えている周りの影響力のある人たちをターゲットにすることで切り崩す。それにしても、数百億円するヨットを没収というのはすごいですね。

飯田)豪華客船のような船ですよね。

リビウ市郊外で現金を引き出すため列を作る人々=2022年2月24日 写真提供:産経新聞社

物価が高騰したり、政策金利が暴騰すれば、国民は「何かおかしいぞ」ということになる

飯田)インフレ圧力の強さによって、ロシアの一般市民を「これ以上プーチン政権を支えない」という方向に持って行きたいということですか?

クラフト)ロシアはメディアを掌握していますから、プロパガンダで「戦争などは起きていません」と、「ロシアが正しいのだ」として事実を隠すことはできますが、金利やインフレを隠すことはできません。ですから物価が高騰したり、政策金利が暴騰すれば、国民は「何かおかしいぞ、何が起きているのだ」という状態になります。そういう意味でも、中央銀行への制裁の影響は大きいと思います。

海外企業が撤退すれば、そこで働く人も職を失う 〜「何かおかしいぞ」と思う

飯田)旧ソ連時代にものがなかった、そしてその後、激しいインフレに見舞われたということが記憶に残っている人は多いでしょうね。

クラフト)多いでしょう。企業が撤退して行くと、そこで働いている人たちも職を失いかねません。そうなれば、国民も「これは何かおかしいぞ」と思うはずです。そのうち制限はされているものの、SNSでいろいろな情報にある程度アクセスできると、「ロシア政府がやっていることは問題だ」となる可能性はあります。そうなれば、切り崩しにつながるのではないかと思います。

中国にロシアへのサポートをさせてはならない

飯田)他方、イランへの制裁のときに、決済の抜け道として、中国が大きな役割を果たしたという話がありました。今回はどうですか?

クラフト)欧米諸国も痛手を受けるし、当然、ロシアはもっと痛手を受ける。どちらが我慢できるかという根競べなのです。我慢しようとしているところで中国がロシアを支えると、ロシアがより我慢できてしまい、欧米が我慢できなくなってしまう。ですから、中国のサポートをなくすことによって、ロシアを追い詰めて行く。当然、ロシアにはできるだけ痛い制裁を加え、欧米は痛手を緩和して持続力を保つことが必要です。

関連記事(外部サイト)