e-Taxで接続障害 日本の「お役所システム」が使いづらい理由

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月16日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。3月15日に起きた国税電子申告・納税システム「e-Tax」の接続障害について解説した。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

e-Taxで接続障害

国税庁は3月15日、国税電子申告・納税システム「e-Tax」の接続障害を受け、2021年分の所得税などの確定申告について、期限延長を個別に認めると発表した。3月15日が申告期限だったが、延長の期間については改めて知らせるとしている。

飯田)システムを再起動して、15日の朝には一時的な改善がみられたものの、再びつながりにくくなったということです。

佐々木)確定申告を提出しなくてはならないので、フリーランスでやっている個人事業主の方々はみんな、この時期は阿鼻叫喚ですよ。

当初はIEしか使えなかったe-Tax

佐々木)e-Taxには難しい問題がいろいろあるのです。昔は「Internet Explorer(IE)しか使えない」という有名な話がありました。このシステムができたころはマイクロソフトのIEが主流だったので、「仕方ない」という感じでした。

飯田)昔は多くの企業でも使われていました。

佐々木)ところが、いまいちばん使われているブラウザはGoogle Chrome(グーグルクローム)なのです。e-TaxがChromeに対応したのは去年(2021年)です。それまではIEだったのですよ。

2021年からようやくChrome(クローム)も使えるように 〜スマホでも提出できるように

佐々木)なぜこんなことが起きるのかと言うと、専門用語で難しいのですが、ブラウザ上で単なるウェブを表示するだけではなく、アプリケーションを動かさなければいけないのです。アプリケーションを表示する仕組みはブラウザによって違うため、ChromeであればHTMLファイルなど標準的なものを使っているのですが、IEは、マイクロソフト独自のActiveX(アクティブエックス)という仕組みを使っているのです。このActiveXでしか、e-Taxが動かなかった。言い方を変えると、ActiveX用につくっていたのです。

飯田)ActiveX用に。

佐々木)そこにChromeが出て来て、一般的に使われるようになった。しかし、ChromeではActiveXは動かないので、「IEを使い続けてください」と言いながら、その傍らでChrome用にe-Taxが動くアプリケーションもつくっていたのです。

飯田)やりながら。

佐々木)ようやく去年からChromeでもできるようになって、スマホでも使えるようになりました。スマホで入力すると簡単にできますからね。今年スマホで初めてやったという人がいて、「意外に簡単でした」と感動していました。そこは頑張っているのです。

なぜ日本のお役所のものは使いにくいのか

飯田)それもあって、去年は多くの人が自宅からe-Taxで提出しました。前年と比べて1.7倍に急拡大したという話がありますから。

佐々木)スマホのおかげだと思いますよ。実際に画面を見ましたが、前よりもかなり使いやすくなっています。現在は税理士さんにお願いしていますが、以前は自分でe-Taxから申告していました。難しかったですね。

飯田)ユーザーインターフェースが難しいという話がありました。

佐々木)日本の問題は常にそうなのだけれど、例えばGoogleのサービスでGmailやGoogle マップなどがありますけれども、使いやすいではないですか。

セキュリティを強固にするためにガチガチのシステムになってしまった 〜ようやくe-Taxが改善された矢先の事故

佐々木)なぜ日本のお役所のものは、どれもこれも使いにくいのかと言うと、セキュリティを強固にしなければいけないからです。個人のプライバシーを大事にすることは、もちろん重要なのだけれども、それを優先しすぎてガチガチのシステムになってしまっている。「ユーザーインターフェース(UI)」の使い易さ、使い勝手のようなものが疎かになっているのは、日本の官公庁や自治体のシステムの特徴なのです。

飯田)官公庁や自治体のシステムの。

佐々木)自治体のウェブサイトを見ても、未だにお知らせがすべてPDFで貼り付けてあったりして、検索できないことがある。改善され始めてはいますが、UIの使い勝手のよさを考えて来なかったのです。e-Taxは、ようやくそこが改善されてUIがよくなったのですが、その矢先の事故なので残念ですね。原因がまだわかっていないため、何とも言えないのですが。

後ろに膨大な「負のレガシー」が積み上がってしまっている

飯田)去年のコロナ対策でも言われましたが、「ガチッ」と完成形のものをリリースしなければいけないと考えている。よく「ベータ版をまず出して、走りながら改善する」という方法ができないという、硬直性のようなものも指摘されています。

佐々木)デジタル庁ができたとき、デジタル庁のウェブサイトがシンプルすぎて、「まるでGoogleの検索エンジンみたいだ」と話題になりました。「このくらいでいいのだ」ということをデジタル庁が示したのは大きかったと思います。

飯田)シンプルでいいのだと。

佐々木)みずほ銀行が典型なのですが、昔のシステムを抱えていると、それを改善しながら動かさなければいけない。そのため、後ろに膨大な「負のレガシー」が積み上がってしまって、綺麗なものがつくれないのです。

飯田)みずほ銀行のように。

佐々木)かつては先進的だったのだけれど、古くなって来ると、後ろに引っ張られてしまう。むしろゼロからつくった方が、新しくて使いやすいものができるのです。よく「リープフロッグ現象」と言いますが、アフリカのように道路があまり整備されていないところだと、いきなりドローンで輸送するというような最先端のインフラができてしまう。また、光ファイバーが流行っていなかった東南アジアでいきなり無線LAN、Wi-Fiなどが進化する。その逆で、先端的だったものが古くなると、あとで足を引っ張られるという現象が常に起きるのです。

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