中国にとって本当は迷惑な「ロシアのウクライナ侵攻」

国際政治学者・慶應義塾大学教授の神保謙氏が4月1日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。4月1日に行われるEUと中国の首脳会談について解説した。

演説で台湾統一実現への決意を表明した中国の習近平国家主席=2021年10月9日、北京(共同) 写真提供:共同通信社

中国とEUがオンラインで首脳会談を開催へ

中国政府は欧州連合(EU)との首脳会談を4月1日にオンライン形式で行うと発表した。会談ではウクライナ情勢についても意見が交わされると見られている。

飯田)中国外務省の汪文斌(おう・ぶんひん)報道官が、3月30日の記者会見で明らかにしました。EUと中国の間合いはウクライナを挟むと、利害が対立することもあるのですか?

神保)中国はいま外交を活発化させていて、インドとも会談を行いましたが、3月30日にはロシアのラブロフ外相が中国を訪問し、外相会議を行いました。今回はEUとの首脳会議ということなので、外交的な調整と事態の打開に向けて、各方面に動いているということだと思います。

世界に支持を広げなくてはならない中国 〜ロシアを全面的に支持することはできない

神保)中国にとって重要なのは、ロシアとの立ち位置をどうするかということです。パートナーシップ関係は依然として重要だとされているのですが、ロシアがウクライナ戦争で完全に敗北することも阻止したいし、結果として北大西洋条約機構(NATO)の影響力が拡大するということも、よくないと思っているのではないでしょうか。

飯田)NATOの影響力が大きくなることも。

神保)とはいえ、中国はグローバルなパワーとして、「一帯一路」などで世界に支持を広げなければいけないという立場です。ロシアを全面的に支持することはできないですし、侵略は中国にとっても大迷惑なわけです。

飯田)「何をしてくれているのか?」という感じですね。

納得のいく形で停戦するために中国が果たせる役割があるかも知れない 〜そのためにはEU諸国と調整して進めることが大事

神保)ですので、完全に支持はできないという事情を汲み取ることが大事なポイントです。中露が完全に一致していると捉えると、中国が持っている潜在的な役割を見逃しかねません。EUやインドに働きかけたということは、そういう目線で見ることが大事です。

飯田)EUやインドに働きかけたということは。

神保)中国にとって打開可能であるとするならば、現在行われている停戦協議や、ロシアが模索している落としどころについて、中国なりのサポートができるかどうかだと思います。

飯田)中国が。

神保)中国がロシアから石油やガスなどのエネルギーを買い取ることによって、経済制裁を骨抜きにすると捉えられるかも知れませんし、逆にロシアがこれほど侵略行為をしているのに、免罪符を与えているとも捉えられかねない。ですから、中国の動きは要注意なのですが、納得のいく形で停戦するために、中国が果たせる役割があるのではないかと思うのです。だとすれば事前にEU諸国と調整して、中国がしようとしていることを、了解のもとに進めていくことが大事だと思います。

中国に「簡単に武力による現状変更はできない」という教訓を学んでもらわなくてはならない

飯田)ロシアがウクライナに対して行っている、既存の国際秩序のルールを破壊しようとする動きですが、それを中国もやろうとしているのではないかと見る人もいます。そこまで中国は思い切るものですか?

神保)これは分けて考える必要があると思います。中国は、領土の一体性や国際機構の役割を注視して世界秩序を見たいと思っています。逆に言うと、アメリカの一方的な力の拡大を、そのような視点から牽制したいということです。そう考えると、ロシアの侵略はやはり相容れない行為と捉えられるのだと思います。

飯田)ロシアの侵略は。

神保)他方で、中国が自ら国内問題と位置付けている「台湾に対する武力統一」について、選択肢から排除していないという問題があります。ウクライナ情勢と対比して考えると、もしロシアがウクライナを電撃作戦でコストなく制圧できてしまったとすれば、中国にとっては「台湾にも同じことができるかも知れない」という教訓になりかねなかったわけです。

飯田)早期に制圧できてしまっていたら。

神保)逆に言うと、ウクライナが抵抗しているので、「簡単に武力による現状変更はできないのだな」という教訓を、中国に学んでもらわなければいけません。いまはそういうフェーズにあると思います。

日本にとっても遠い国の出来事ではない

飯田)その全体構造を考えると、我々日本にとって、ウクライナ侵攻は遠い国の出来事ではないということですね。

神保)そうですね。力による現状変更がどういう結果をもたらすのかを示すためには、ロシアの今回の侵略が完全に戦略的失敗だったという結論をつくらなければいけません。仮に停戦が成立したとしても、ロシアが「最終的に失敗だった」という形に持っていかなければ、「この程度の経済的損失で現状変更できるのだ」と思われてしまうわけです。だから、それは貫徹しなければなりません。

飯田)最後まで。

神保)あとはやはりアメリカと同盟国が、今回のような問題に対する抑止体制と、何かがあったときに介入できる体制をつくることが必要です。中国にそこを過小評価させないことが重要です。

飯田)そのための抑止の枠組みづくりとして、今回、国連が機能しなかったのではないかという問題がありました。核を持っている常任理事国に対して、何もできないということになってしまうのですが、この辺りの改革にも、日本はコミットしていくべきですか?

神保)大事なポイントだと思います。アメリカが介入したら第三次世界大戦になる、ロシアが核を使うなどと言われているのですが、エスカレーションしていきなり核の使用まで行くというよりは、それまでにいろいろな階段があるわけです。その階段を全否定するような介入論は、抑止を危うくすると思います。しっかりと守るべき価値に対して、コミットする姿勢を継続することが大事だと思います。

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