人的支援として自衛隊の派遣も検討するべき ~ウクライナ難民支援の首相特使として林外相をポーランド派遣

国際政治学者で慶應義塾大学教授の神保謙氏が4月1日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ウクライナからの避難民の支援にあたる首相特使としての林芳正外務大臣のポーランド派遣について解説した。

ポーランド南部ジェシュフの鉄道構内で避難者に物資を提供するボランティア団体=2022年3月6日 写真提供:産経新聞社

政府が林芳正外務大臣のポーランドへの派遣を決定

政府は3月31日、ロシアが侵攻したウクライナからの避難民支援に向けたポーランドへの閣僚派遣に関し、予定していた古川法務大臣の代わりに林芳正外務大臣の派遣を決めた。4月1~5日の日程で中谷元・首相補佐官と津島淳法務副大臣も同行する。

飯田)人権問題担当補佐官も同行するのですね。日本政府の姿勢が見えますか?

神保)これは林大臣にとって大変重要な仕事になると思います。ポーランドに関しては、避難民支援を受けた枠組みで、いまポーランドへの避難民は200万人を超えています。

飯田)そうですね。

神保)ポーランドの財政圧力と、受け入れ体制のひっ迫が喫緊の課題なので、ここは日本が力を発揮して支援できる重要な領域だと思います。

人的支援で自衛隊の派遣も検討するべき

神保)財政支援のみならず、人的支援で自衛隊の派遣も積極的に検討したらいいと思います。

飯田)自衛隊による避難民への民生支援ということですか?

神保)そうです。医官らの派遣が調整されているらしいのですが、国連平和維持活動(PKO)の枠組みでの難民支援経験は、ルワンダなどいろいろな場所であります。

飯田)なるほど。

神保)自衛隊は支援能力に長けているので、ポーランドに入って支援すれば、日本の役割という点では、いい貢献ができるのではないかと思います。

飯田)ノウハウは既にあるわけですね。

神保)そうですね。

日本がやるべきことは何か

飯田)その辺りの話には、政治決断が必要になるということですか?

神保)「国際平和協力法」という法律があって、その法的な枠組みを満たすということが大事なので、ポーランド政府による受け入れ同意や、各国の調整が必要になると思います。交戦国の隣ということもあるので、どのように安全管理をするのかという考慮も重要になると思います。しかし、いまあれだけの数の人々が避難しているという現実を重く受け止め、日本としてやるべきことを考えて、ぜひ行って欲しいと思います。

飯田)南スーダンのPKOの話があったあと、ここまで厳しい国会等々での縛りが入ると、どこにも派遣できないのではないかとも言われていましたが、今回はある意味、力を発揮するところですか?

神保)PKOの難しさは、PKOのミッション自体が複雑になっていて、場合によっては危険に遭遇するかも知れないし、従来、想定していなかったようなさまざまな機関との連携が必要だということです。法律の建て付けとして整えたにも関わらず、実際、派遣するという政治的な決断ができないジレンマのなかでPKOが縮小し、自衛隊の国際的な役割が前より減っているのではないかということになっています。

飯田)PKOは、より介入的になっています。自分たちで平和を力によっても構築するという側面が出ていると、自衛隊としては出づらくなる。

神保)その通りです。しかも、日本の周りは中国も北朝鮮もあるので、自衛隊の本来の任務として、領土防衛という役割もある。しかし、ここは「国際的に重要な危機における貢献」ということで、避難民支援を考えるべきだと思います。

ポーランドへの派遣のあと、一旦帰国して再びNATOの会合に出席する林外務大臣

飯田)今回、林大臣が派遣されることになりました。これは外務大臣経験のある河野太郎さんがツイッターで指摘していたのですが、4月5日までの派遣日程のため、6日までに日本に帰って来て、再び4月上旬に開催される北大西洋条約機構(NATO)の会合に出席することになっています。これは国会日程との絡みが影響しているようです。

神保)政治の機微はよくわからないのですが、なぜポーランドからベルギーのブリュッセルに行くのに一旦東京を経由しなければいけないのか。しかも、いまはロシア上空は飛べませんよね?

飯田)飛べないようです。

神保)外務委員会に出席するためだけに迂回し、時間を使って往復するのは、政治的なパフォーマンスとしてあまりに悪いと思います。もちろん言い分はあると思います。民主主義のために外務委員会への大臣の出席が大事だということもわかるのですが、いまの日本の国益を考えたときに、林大臣がポーランドに行ってNATOの首脳会議で日本の役割について発言し、コミットすることがどれだけ大事かということです。そのために、万全の日程を組むことが国会の役割だと思います。

外交も国会も両立できるような仕組みをつくるべき

飯田)「これは新しいな」と思ったのが、ツイッターで河野さんが意見を投げたら、立憲民主党の泉さんが「前向きにやるよ」と反応している。昔は裏でやっていた国対政治のようなものが、表に出てきているなと思いました。

神保)そうですね。調整がスピーディーに進むのはいいことですけれど、本当に進めて欲しいですね。大臣ではない代理の出席にするのか、大臣自身がオンラインで出席するのか。これは国会法の改定などの大きな話になってしまうとは思うのですが、将来的には、日本外交の機動力を担保するために国会と外交を両立させる仕組みをつくって欲しいです。この議論は昔からありますよね。

飯田)河野さんが外務大臣時代に、「外相専用機をつくってくれ」と発言したのも同じことですよね。

神保)時間は誰にとっても24時間しかないので、「国会も大事、外交も大事」であれば、それを両立させる仕組みをつくるべきです。

飯田)オフィシャルな会議はもちろんですが、その周辺での雑談も大事になるのでしょうか?

神保)特に今回のNATO首脳会議は、NATO加盟国だけではなく、日本や韓国、オーストラリア、そしてウクライナが参加することになっているわけです。そこで問題意識を一致させることが、国際社会にとってどれほど大事かということです。そこにオンラインで出ましたということでは、まったく違う風景になります。特にNATO首脳会議への林大臣の出席と、そこでNATO加盟国以外の国々が一致して連帯を示すことの重要性は、まさに超党派で支援して欲しいと思います。

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