ロシア「ウクライナの駅への攻撃」を「戦争犯罪」認定することの難しさ

ロシア「ウクライナの駅への攻撃」を「戦争犯罪」認定することの難しさ

ジェノサイド認定に高い壁も

中央大学法科大学院教授で弁護士の野村修也が4月11日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。52名が犠牲になったロシアによるウクライナ東部の駅への攻撃について解説した。

2022年4月8日、ミサイル攻撃を受けたウクライナ東部ドネツク州クラマトルスクの駅(ゲッティ=共同) 写真提供:共同通信社

ウクライナの駅への攻撃で52人が犠牲、ロシアの戦争犯罪を追及

ウクライナ東部ドネツク州で4月8日、鉄道の駅がミサイル攻撃を受け、少なくとも子どもを含む52人が死亡した。ゼレンスキー大統領は「ロシアによる新たな戦争犯罪だ」と糾弾。また欧米もロシア軍が撃ち込んだとみて、新たな「戦争犯罪」と厳しく非難し、責任を追及する構えを強めた。

飯田)ロシア側は、攻撃はウクライナが行った、住民を人間の盾として利用するため、大規模な避難を阻止することが目的であったと主張し、関与を否定しています。

戦争犯罪ではないか 〜国際司法裁判所と国際刑事裁判所

野村)いま、国際社会が驚きをもってこの様子を見ていると思います。民間人に対して意図的な虐殺行為が行われているということになると、それ自体が明らかな戦争犯罪なのです。国際社会はそこを厳しく指摘しています。

飯田)戦争犯罪ではないかと。

野村)それに加えて「ジェノサイド」という言葉が出てきています。これが何かと言うと、単に民間人を大量虐殺しているだけではなく、特定の民族や特定の国民を殲滅しようというような意図がある行為、集団虐殺行為です。

ジェノサイドであれば国際刑事裁判所(ICC)が動く

野村)それを裁くことに関与する組織が、2つあります。国際司法裁判所が有名ですけれども、こちらは国そのものを裁く組織です。それに対して国際刑事裁判所(ICC)は、戦争犯罪に関与した個人を裁く、そういう仕組みのものです。

飯田)国際司法裁判所と国際刑事裁判所。

野村)ローマ規程で、ICCは国際的に関心の高い重大な犯罪を扱うということが決まっています。ジェノサイドであれば、明らかにICCが動くべき犯罪であるということになります。

「ジェノサイド」に指定することはハードルが高い

飯田)ジェノサイドに指定できるのかどうかというところですが。

野村)最大のポイントはそこです。ロシア側は「フェイクニュース」だと言っています。最近は情報技術が発達しているので、衛星画像などを使い、これがフェイクニュースではないということを証明するのは可能ではないでしょうか。さらに最近出てきている話として、同時多発的に同じような行為が行われているということになると、特定の現場での暴発ではなく、「誰かの意図によって行われているのではないか」ということが立証しやすいと言えます。

飯田)同時多発的に行われていると。

野村)ただ、刑事裁判になりますから、1つ1つの証拠を積み上げていくという作業が必要です。現場のご遺体から、「どういう行為が行われていて、誰が指示を出したのか」ということに関し、かなりの証言や証拠を集めなければなりません。それから、先ほど申し上げた集団虐殺としての意図があったということの証明も、ハードルは低くありません。

指揮命令した人まで辿り着くのは極めて困難

飯田)この意図というのは、例えば指導者の命令などの立証ですか?

野村)そうです。ロシアは今回の戦争の名目として、「ネオナチを排除する」ということを明確に主張しています。それと今回の行為との間に、どういうつながりがあるのかということです。それがつながってくると、場合によっては、プーチン大統領にまで今回のジェノサイドの責任を及ぼしていくことができるのではないかと世界は見ているのです。

飯田)プーチン大統領にまで。

野村)ただ、現場の末端で実行した人の犯罪は立証しやすいのですが、指揮命令した人まで辿り着くのは、戦争以外の普通の犯罪のときでも、極めて困難な部分です。それを実現できるのかということが、いま国際社会の関心事なのではないでしょうか。

「ジェノサイド」認定できるかどうかは重要な意味を持つ

飯田)ジェノサイドという言葉はいろいろなところで聞きますが、実際に認定された例はユーゴスラビア紛争などがあります。

野村)ジェノサイドと認定された件数は3例くらいあります。ただ、かなり時間がかかっているものもありますし、もっとたくさんあったはずなのだけれども、ごく一部しかジェノサイド認定ができなかったということも過去にはあります。非常に難しいということです。

飯田)難しい。

野村)それから、これまでに行われていた環境が、先進的な国が行う行為ではないということなのです。まさか21世紀にこういうことをやらないだろうという前提がどこかにあるので、議論しにくいところがあります。

飯田)なるほど。

野村)アメリカでは、中国で行われているウイグル自治区などへの行為との照らし合わせのなかで、国際的に問題を大きく展開していくべきではないかという議論も進んでいます。

飯田)あらゆる手段を使って、「どうやってロシアを止めるのか」ということですね。その1つとして、ジェノサイドに関する議論があるということですか?

野村)そうですね。国際社会の認定は重要な意味を持つと思います。

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