マクロン氏再選も、肉薄したルペン氏の「トランプ氏に似た流れ」

ジャーナリストの有本香が4月26日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。現職のマクロン大統領が再選したフランス大統領選について解説した。

再選を決めパリの勝利演説の会場に登場したフランスのマクロン大統領=2022年4月24日(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

マクロン氏再選

フランス大統領選は中道の現職マクロン大統領が、極右「国民戦線」を率いるルペン党首を破り再選を決めた。

飯田)フランス大統領選は、マクロンさんが再選することになりました。シラクさん以来だということです。

有本)前回の大統領選も同じ2人で争ったわけです。前回よりもさらに、ルペン候補がかなり追い上げました。もしロシアがウクライナに侵略するという事態がなければ、もっと迫っていた可能性があります。

飯田)そうかも知れません。

有本)ルペン候補はNATOからの離脱、あるいはロシアとの関係改善を訴えていましたから。それに対する危機感がかえって強まった。あるいは実際のフランス有権者とは別ですけれども、北欧諸国なども含めて、周辺諸国は「マクロンさんでよかったね」というような論調になっているということです。それでも、ルペンさんは前回よりも票を伸ばしていて、4割以上獲っています。

飯田)やはり国内の不満もあり、マリーヌ・ルペンさんが肉薄する形になりました。

労働者階級が支持するルペン氏 〜トランプ元大統領が出てきた状況に似ている

有本)気の早い話ですが、次の大統領選挙にはマリーヌ・ルペンさんは出られるけれど、マクロン現大統領は出馬できないわけです。次は果たしてどうなるのかと。今回、41%もの票を獲ったというところを見ると、いままで、あるいは現在も日本のメディアは「極右のマイノリティだ」と報じがちですが、少し違うのではないかと思います。

飯田)本来の定義での極右は、「社会構造をすべて壊す」というところでしたが、ルペンさんが主張しているのは「共和制のなかで変えていく」ということです。

有本)やはり自国第一という考え方ですよね。「ロシア寄り」という部分がかなり強調されたのですけれども、マクロンさんのような国際協調主義ではなく、とにかく自国第一なのだと。アメリカでトランプ元大統領が出てきた流れと似ています。フランスの共和制のなかではあるけれども、経済に関しては、自由な方向性を志向しているのではないでしょうか。

飯田)なるほど。

有本)地域によってはマクロンさんの「エリートさ」が好まれないところもあって、まさにトランプ元大統領が出てきたときのように、労働者階級の人たちから「ルペンさんが自分たちの望む国づくりをやってくれるのだ」という支持がある。

飯田)トランプ元大統領支持者のように。

有本)そうすると、次の大統領選ではどうなのかということです。ただ、一方ではルペンさんも前回、今回と露出して、いろいろ粗も見えてきたので、「次にはつながらないだろう」という見方もあります。しかし、この7〜8年でヨーロッパでも起きているような、従来のヨーロッパが目指してきた、EUに象徴される協調主義に対する懐疑。これは依然として強いものがあります。

2月、モスクワで記者会見するロシアのプーチン大統領(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

経済政策をしっかりと行わなければ、日本も他人ごとではない

飯田)ロシアへの制裁に反対していましたけれども、「返り血の部分が、あなたたちエリートへの影響は少ないでしょうが」という。

有本)「自分たちは生活に直結する」という世界ですよね。

飯田)そう考えると、経済政策の部分で「自国優先」となっていくのは、ある意味で当然の帰結というところはあるのだろうなと。

有本)そうですよね。この傾向は今後、日本でも強くなるだろうという感じはします。

飯田)いまエネルギー価格が上昇するなど、いろいろ言われているなかで、しっかりと経済政策を行わないと、「他人ごとではない」という話ですよね。

「EU主導」に反発するフランス庶民 〜国の個性を奪う

有本)それとヨーロッパの場合、従来から言われていましたけれども、「EU主導である」という部分です。これに関して、確かにフランスはヨーロッパにおけるリベラルの象徴のようなところはありますけれども、EUはもっと無国籍的なリベラル性を持っているではないですか。それに対して、フランスの庶民が相当反発しているという声は聞きます。

飯田)志向として、あのような仕組みは国境を解体するような方向にいくと。

有本)そうです。ですから、「国の個性」のようなものを奪っていくというところがあります。

飯田)国境というものが、コロナ禍でもそうでしたけれど、かえって意識されるようになってきている。

有本)イギリスがEUを離脱して「大変なことになる」と言われていたけれども、「そうでもないではないか」という状況を見て、「自分たちも」という意識はあるでしょうね。

フランスがNATOから負う部分 〜責任に合うだけのメリットはあるのか

飯田)その部分と安全保障に関して、やはり一国でやるよりも、NATOのように固まってやった方がいいということとのジレンマがあるのですか?

有本)そうですね。ルペンさんが主張する「NATO離脱」については、さすがに異論を唱える人も多いだろうと思います。しかし、NATOも広い枠組みになっていて、特にフランスのような大国になると、責任を負う部分も大きいですから。

飯田)そうすると、最近入ってきた小国が「ただ乗りしているではないか」ということにも。

有本)そういう感覚はあるのでしょうね。自分たちが負うものは大きいけれど、フランスにとってのメリットもそれだけ大きいのかというところだと思います。

飯田)まさにアメリカが直面したジレンマと同じですね。

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