「戦争宣言」することで「ウクライナ以外の国」への侵攻も可能になる怖さ

ジャーナリストの須田慎一郎が5月2日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。5月9日の「対独戦勝記念日」後のウクライナに対するロシアの戦闘について解説した。

ロシアのプーチン大統領(ロシア・モスクワ) AFP=時事 写真提供:時事通信

イギリス国防大臣、5月9日にプーチン大統領が「戦争宣言」する可能性に言及

イギリスのウォレス国防大臣は4月28日、ロシアのプーチン大統領が5月9日の「対独戦勝記念日」に合わせて、ウクライナと戦争状態にあると宣言する可能性に言及した。これまでロシアは「特別軍事作戦」と表現してきたが、戦争状態を宣言することで戦闘がいっそう長期化するとの見方が広がっている。

飯田)地元ラジオ局の番組のなかで、「具体的な情報があるわけではない」とした上で、この見方を示したということです。

須田)この発言をきっかけにして、戦争状態に突入するのではないかという見方が出てきました。しかし、「戦争状態をどう宣言するのか」というのは、あくまでもロシア国内の事情によるものだろうと思います。

飯田)ロシアの国内事情によるもの。

須田)戦争体制に持っていくということで、ロシア国内での予備役の動員が可能になり、軍事への優先的な物資の振り分けも可能になります。あるいは、もう既にやっていますが、情報統制なども含めて戦時体制に持っていくことが大きな目的としてあるのではないでしょうか。

物資、人員ともに不足するロシア軍

飯田)そう考えると、物資や人員について、現場では足りなくなっているということですか?

須田)まったく足りていないでしょう。ウクライナと国境を接する旧来からのロシア領の方に攻撃が始まっているという状況も受け、本格的に兵員を大量増員しないと押し返される可能性も出てきています。そうでなくても西側諸国から、ウクライナに対して攻撃型の兵器が大量に提供されるような状況になり、ロシアとしても本腰を入れなければならないのです。

東部戦線が膠着状態になる可能性が高い 〜誤算続きのロシア

飯田)ドイツが対空戦車「ゲパルト」という、自走高射機関砲の引き渡しを発表しました。またポーランドも200両ほどの戦車を出すということです。

須田)これまでは防御型の兵器で、向こうが攻めてきたときに撃ち落とすための対空砲などが主体だったのですが、戦線を押し返すような武器が出てきたということです。

飯田)そうなると、当初は「3日で落ちる」と言われていたキーウですが、東部戦線が膠着状態になる可能性が高いということですか?

須田)それに加えて、これまで中立的な立場を取ってきたスイスが、ロシアに対する経済制裁に向けて動いたということで、ロシアにとっては誤算続きなのだろうと思います。

戦争状態を宣言することでウクライナ以外の国への侵攻も

飯田)スウェーデンやフィンランドなども、NATO加盟を具体的に検討しているということです。

須田)怖いのは、戦争状態を宣言することで、場合によってはウクライナ以外の国々への侵攻も可能になるということです。特別軍事作戦であれば、「ドンバス地方のロシア系住民の保護」という名目だったのですが、ウクライナ一国を対象にするという状況になりますからね。

飯田)ウクライナ以外の国という意味で言うと、既にウクライナ西側のルーマニアとの間にあるモルドバ、特にウクライナとの国境にある「沿ドニエストル共和国」の辺りに向かって進軍し、「モルドバも獲る」というような話も出てきています。

ウクライナ首都キーウ近郊ブチャに隣接するホストメリの路上に放置された焼け焦げた車=2022年4月12日(共同) 写真提供:共同通信社

重要な港「オデッサ」に対する攻略戦が当面のポイント

須田)当面のポイントになるのが、重要な港であるオデッサに対する攻略戦だと思います。すぐ北側はモルドバですので、そこを攻略するためには、モルドバも含めて攻撃することになると思います。

飯田)黒海を大きく開いた口として、口蓋垂の部分をクリミア半島として見ると、その左奥にオデッサがあります。その先にモルドバがあるので、クリミア半島辺りから西に攻めていくと、全部獲ることができるのです。いままさにそれを目指しているということですね。

須田)そうするとウクライナの海岸線が全部ふさがってしまいますから、船舶による物資の供給ができなくなるのです。ウクライナに対しての供給を遮断することにもなります。

オデッサを獲ることでウクライナの交易ルートを遮断

飯田)ウクライナはもともと穀物の輸出が盛んなところでした。輸出経路として、南側にある港から黒海を通り、ボスポラス海峡を渡って地中海に出て、そこから全世界に向かっています。この交易ルートも遮断しようということですか?

須田)「経済的な影響を与える」ということも大きな狙いとしてあると思います。

飯田)だからこそ、「いま我々の停戦に応じた方がいい」という脅しにもなる。

須田)というよりも、当初から獲る予定だったのではないかと思います。アゾフ海をロシアの配下にすれば、黒海がロシアの影響力下に置かれることになります。

飯田)そうすると黒海艦隊も含めて安泰になる。

須田)加えて不凍港の確保です。

飯田)凍らない湖。これはロシア帝国の時代からの悲願なわけですものね。

須田)そのときすらできなかったことですから。

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