警告無視なら撃墜してよいのが「領空侵犯」  中国空母の日本領海での5日連続戦闘機発着艦が起こす「危惧」

元航空自衛官で評論家の潮匡人が5月9日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。沖縄南方に展開中で戦闘機などの発着艦が確認された中国軍の空母「遼寧」について解説した。

香港に寄港する中国初の空母「遼寧」=2017年7月7日(共同) 写真提供:共同通信社

沖縄南方に展開中の中国軍の空母「遼寧」、戦闘機などの発着を5日連続で確認

防衛省統合幕僚監部は5月8日、沖縄南方に展開中の中国海軍の空母「遼寧」で7日にも艦載の戦闘機やヘリコプターの発着艦があったと発表した。太平洋に入った「遼寧」での戦闘機の発着艦は3日以降、5日連続で確認されている。

飯田)この報道発表はネット上にもあがっています。写真が鮮明であったり、地図上にプロットしたり、いつもより詳しく出ているのではないかと思うのですが。

中国の空母が日本の領海で戦闘機の発着艦をすると、自動的に領空侵犯になる 〜軍用機の場合、警告しても従わなければ撃墜してもよい

潮)5日連続で確認されているわけですから、防衛省としては「見ていますよ、わかっていますよ」ということを、日本国民に対しても情報開示しているということだと思います。仮に中国の空母が日本の領海内に入ってきて、同じような行動をとった場合どうなるのかというと、自動的に領空侵犯になってしまうのです。

飯田)上がった瞬間に。

潮)領海の上空は領空なので、あまり正確に認識されていないところがありますが、「領海侵犯」という言葉は、国際法上はあまり正確な表現ではないのです。どの国の領海においても、いわゆる無害通航権というものがあるので、軍艦であれ誰であれ、沿岸国に対して無害な通航については自由に認められているのです。

飯田)無害通航権。

潮)しかし、その上空にある領空は排他的かつ完全な主権が認められているので、特に今回のような軍用機については、警告しても従わない場合は撃墜してよいというのが確立した国際法の慣習です。ですので、そのようなことを許す可能性が今後、増えていくのではないかと危惧しています。

今後は機微を孕んだ展開が予想される

飯田)潮さんはビッグコミックで連載されている『空母いぶき GREAT GAME』の監修をなさっています。航海の上ではよいことが、領海へ入った瞬間にどうなるか、そのときに我が国はどうするかというものを監修なさっています。この問題は昔からあったけれど、見て見ぬふりをしてきましたよね。

潮)そうですね。「いぶき」シリーズは尖閣編から始まっているのですが、尖閣諸島については日中間で領有権の所在について認識が異なっており、中国側は自国の領土だと主張しています。その尖閣諸島の領海に入ってきて、そこで発着艦するということになれば、もちろん領空侵犯ということにもなるし、今後は機微を孕んだ展開が予想されると思います。

カタパルトを装備した3隻目の空母を投入する中国

潮)報道によると、中国は3隻目の空母を投入するということです。しかも、その3隻目はカタパルト方式であり、今回の「遼寧」のようなスキージャンプ方式とは異なり、燃料や兵器を搭載して、重くなっても発艦できるタイプのものを投入するのではないかと言われています。そうなると、安全保障上の問題として領空侵犯に留まらず、我が国としては警戒するべきだと思います。

2021年11月22日、中国・ASEAN対話関係樹立30周年記念サミットに出席した習近平氏 新華社/共同通信イメージズ 写真提供:共同通信社

いざというときに対処できる能力を蓄えておくべき

飯田)今回、海上自衛隊は「いずも」という艦艇を出しています。ヘリコプター搭載護衛艦で、広い飛行甲板を持っている。将来的には、垂直に発着できる戦闘機を乗せるという話も出ていますが、それで足りるのかどうかと思ってしまいます。

潮)日本の「いずも」型については空母化という形で報道されていて、必ずしもその表現は間違いではないと思いますが、純然たる戦闘機の運用を主目的に改修が行われるのではありません。

飯田)いずもに関しては。

潮)どう表現したらいいのか難しいところだと思うのですが、空母についても今後、その方向は進めていくべきだと思います。重要なのは、いまの中国の空母については、潜水艦の餌食だという見方もあるのだろうと思いますし、我が国としては、そのような能力も含めた動き、いざというときに対処できる力を蓄えておくべきだと思います。

将来的にはAUKUSの枠組みに日本が入り「JAUKUS」として、太平洋の安全保障を検討するべき

飯田)通常型の潜水艦に関して、日本は相当高い技術を持っています。他方、オーストラリアはイギリスやアメリカと組んで原子力潜水艦を入れるという話になっています。日本において、非核三原則はありますが、それを抜きにして純粋に戦略として考えた場合、可能性としてはありますか?

潮)現状ではその可能性が見えていないと思いますが、あるべき論を語ってよければ、「AUKUS(オーカス)」という枠組みのなかで、それが行われている。AUKUSという名前はそれぞれの国名からつくられていますが、ここに日本が入れば、「JAUKUS(ジョーカス)」という新たな言葉が生まれる可能性もあります。私は少なくとも「JAUKUS」を潜水艦の技術にとりあえず絞って進めていくべきであり、将来はそこを軸として、新たな太平洋における安全保障上の枠組みを真剣に検討するべきだと思います。

飯田)やはり海の国々で手を取り合うという形。

潮)そうですね。別途、インドを含めた枠組みもあるのですが、今回のウクライナ情勢で、インドは少なくとも日本の期待に応えてくださらなかったということもある。今後は同じ海洋国家同士の「AUKUS(オーカス)」の枠組みに日本が従事していくというのが現実的だと思います。

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