EUの「ロシア産化石燃料への依存からの脱却」実現はかなり先のこと

数量政策学者の高橋洋一が5月11日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。EUとして「ロシア産の化石燃料への依存を終わらせる」と述べたEU大統領の発言について解説した。

19日、ブリュッセルで記者会見するミシェルEU大統領(ゲッティ=共同)=2020年11月20日 写真提供:共同通信社

EU大統領、「ロシア産ガス禁輸で依存から脱却する」と表明

EUのシャルル・ミシェル大統領は日本経済新聞のインタビューでウクライナ情勢を受け、EUとして「ロシア産の化石燃料への依存を終わらせる」と述べ、ロシアからの輸入停止措置を天然ガスにも拡大すると表明した。また5月12日には、年に1回の日EU定期首脳協議が行われる。

飯田)ロシア産石油の禁輸に関しては、G7各国が一致する形になりましたが、ガスにも言及したということがニュースになっています。どうご覧になりますか?

「EU大統領」ではなく「EU理事会議長」と呼ぶべき

高橋)私は言葉を気にしてしまう傾向があるのだけれども、報道のなかで「EU大統領」と言うではないですか。しかし、英語では「President of the European Council」ですから、「EU理事会議長」と言うべきなのです。5月12日に日本とEUの定期首脳協議がありますが、関連する外務省の表記を見ると、「EU理事会議長」と書かれています。

飯田)外務省のホームページ等々、公式の文書では。

高橋)他にフォン・デア・ライエン欧州委員長もいるではないですか。欧州委員長を英語で言うと「President of the European Commission」なのです。そこから考えると、大統領と訳すのは違いますよ。

石油ですらハンガリーが反対していて「化石燃料削減」の方向に向かっていないEU

飯田)「大統領」というと、イメージするのは権限が大きい人となります。

高橋)大きくありません。EU内でのまとめ役です。EUが今後そういう方向に向かうということは、そうなのでしょう。化石燃料の依存を減らしたいのだけれど、ロシア産については特に減らしていく。「やめさせる」という言い方なのでしょうけれどもね。でも、よくよく考えてみれば、化石燃料の最たるものである石油について言えば、ハンガリーがまだ反対しています。

飯田)EU加盟国のなかでも。

高橋)ハンガリーが反対していて、調整がつかないでしょう。基本的には全員が賛成しないと、その方向に行かないのです。

飯田)EUは基本的に全会一致が原則。

高橋)だから、1つでも反対があると前に進まないのです。そういう意味では、ガスの話で先走って「こうです」というのは、マスコミとしては取り上げやすい。しかし、現実的に足下を見ると、化石燃料の最も基本的な石油ですら、ハンガリーが抵抗していて、その方向に向かってはいないのです。

「EUがロシア産の化石燃料への依存を終わらせる」ことが実現するのはかなり先

高橋)だからこういう形で、先走ったことを欧州理事会のプレジデントは言うわけですけれどもね。ただ、どれくらいで実現するかを考えると、かなり先でしょうね。

飯田)この発言も思惑含みというか、観測気球的にとりあえず玉を投げてみたという感じですか?

高橋)投げないと、この人たちは仕事になりません。実現するかしないかというのは、かなり先の話です。足下のガス以前の石油ですら、全然調整が取れていないのです。

飯田)しかも、ハンガリーのオルバン政権がこの間の選挙で勝ったばかりですが、ロシアとは近いですよね。

高橋)もともと近いです。エネルギーを入れないと大変だという思惑があるから、EUとしては難しいですよね。

まとめ役のEU理事会議長だからこそ出せる観測気球

飯田)ガスについて、「ドイツはどうするのか」という問題もあります。

高橋)その件についてドイツは黙っていますが、「当分この話は進まない」と思うから黙っているのでしょうね。もし具体的な話になれば、ハンガリーのように反対するかも知れません。

飯田)ただ、外への見せ方や、国内の人権等々を重視する「緑の党」を前にすると、おいそれと「反対」とも言いづらいし。

高橋)言いづらいけれども、本当に反対するのならば、「どうしようか」ということです。誰も文句を言わないから、EUのプレジデントは観測気球を出せるのです。その観測気球が「ミスリーディングになってしまってはいけない」と思うから、「EU大統領」などの表記に関する説明をしているのです。

飯田)これだけ論争的なことを言えるのは、まだ具体的ではないから。

高橋)具体的ではないし、権限がないから言えるのです。

飯田)なるほど。このニュースはそのように見なければいけない。

高橋)「EU大統領として」というと、ミスリーディングになると思います。方向はそうだと思いますけれどね。

海外からは「原発があるのだから使え」と言われる日本

飯田)ウクライナ情勢を受けて、いままでの状況でよいというものではないという。

高橋)それはそうですよ。現に石油の扱いでもそういう動きが出てきて、ハンガリーを除くEUにはロシア産の石油を入れないという方向になっているわけです。

飯田)このニュースを見たときに、EUというかヨーロッパがこちらの方に舵を切ってしまったら、日本も「サハリン1・2」や「アークティックLNG2」を持っているのに、ガスはどうするのかと思ったのですけれども。

高橋)それはありますよね。でも、化石燃料の方に依存する形になると、「日本には原発があるだろう」と必ず言われるのです。「原発を使わないから、その分、天然ガスを日本に入れているだろう。それであれば、当面はこちらに回せ」とかね。だいぶ先の話は別として、当面はガスに依存せざるを得ない。そうすると、当面の奪い合いのときに、日本は原発の話が出てくるのです。

飯田)「お宅は使えるものを持っているのに、なぜ使わないのだ」と。

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