台湾有事の際、アメリカは日本を守ってくれるのか

ジャーナリストの佐々木俊尚が5月18日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ロシアによるウクライナ侵攻によって変化する各国の安全保障について解説した。

ロシア軍から奪った戦車の上に立つウクライナ兵=2022年3月27日、キエフ郊外(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

フィンランドとスウェーデンがNATOへの加盟申請を正式に表明

北欧スウェーデンのアンデション首相は5月16日に記者会見し、北大西洋条約機構(NATO)への加盟申請を正式に表明した。

ロシアのウクライナ侵攻に影響される各国の安全保障

飯田)フィンランドとスウェーデンがNATOへの加盟申請を正式に行いました。ロシアによるウクライナ侵攻が、各国の安全保障にもいろいろと影響を及ぼしています。

佐々木)次の段階は、対中国についてどうなるのかということですね。

飯田)我々日本人は特にそうですよね。

佐々木)「世界中でウクライナ侵攻のニュースを最も見ているのは日本人」という統計調査があるのです。みんな台湾や尖閣のことを考えてしまい、釘付けになっているのではないでしょうか。

ロシアという共通の敵ができたことで再び団結するEU

佐々木)ヨーロッパでも、日本と同じように敗戦国だったドイツが、それまでの国民的意識は「絶対に過ちは繰り返しません。戦争はしません」というものだったけれども、今回のウクライナ侵攻で一気にドイツの国民意識が変わった。国防費もGDP比2%以上に引き上げました。同じようなインパクトが日本にもあるのだと思います。

飯田)そうですよね。「スイスがNATOに接近」という報道もあります。

佐々木)ギリシャ危機や難民問題などでヨーロッパが崩壊に瀕していて、「EUは終わりだ」などと言われてきました。しかし、ロシアという共通の敵ができた瞬間に、EUやNATOが再び一致団結の方向に向かった。よくSF映画で宇宙人が侵略してきて、突然国連が進化して世界政府になり、みんなで戦うというようなストーリーがありますが、あれと同じだと思うのです。共通の敵があると団結できるということです。

バイデン政権が「レンドリース(武器貸与)法」を成立させた理由 〜アメリカは血は流さないが、協力はする

飯田)東アジアにおいて考えると、潜在的な脅威として中国の存在があります。それにどう対応するかというところで、NATO参謀長会議に日本から統合幕僚長が出席します。

佐々木)統合幕僚長が出席するのは初めてだそうです。

飯田)アジア太平洋地域の安全保障環境に関する認識を共有するとのことです。

佐々木)今後、NATOと協力関係を強めていくのではないでしょうか。同時にアメリカとどう付き合うのか。いままで日本は安全保障の枠組みのなかで、アメリカが守ってくれるだろうと思っていましたが、本当に守ってくれるのかどうか。

飯田)そうですね。

佐々木)今回のウクライナ侵攻でわかったのは、ウクライナは軍事同盟もないし、アメリカが守る筋合いはないのだけれども、アメリカ軍が戦うのではなく、「レンドリース(武器貸与)法」を成立させて、多くの武器を供与することにしたのです。アメリカ人にとっては、「自分たちの血は流さないけれども協力はするぞ」という、1つのスキームができたという感じですよね。

キエフ近郊でロケット弾の発射準備をするウクライナ兵士(ウクライナ・キエフ近郊) AFP=時事 写真提供:時事通信

「レンドリース(武器貸与)法」は各国に対してのアメリカのメッセージ 〜ただし、軍隊を送るかどうかは、どこまで戦う意志があるかによる

佐々木)ウクライナが今回うまくいっているのは、ウクライナ人が徹底的に戦うことを意思表示したからです。「我々は徹底抗戦します。だから皆さん、協力してください」という姿勢に対して、西側諸国が呼応しているのです。

飯田)西側が呼応した。

佐々木)ということは今後、台湾や東アジアの問題に対しても、台湾人や日本人が「徹底的に戦う」と言わなければ、対応してくれない可能性がある。そういう話になってきたのです。「レンドリース(武器貸与)法」を成立させたということは、各国に対する「今後も武器は大量に供給しますよ」というメッセージだと思うのです。

飯田)各国への。

佐々木)「ただし、軍隊を送るかどうかは、あなたたちにどこまで戦う意志があるかどうかだ」ということです。湾岸戦争のときに日本が自衛隊を出さなかったことに対して、アメリカ側から「旗を見せろ」と言われたことがあったけれども、まさにあのようなことがいま求められているのではないかと思います。

台湾有事の際、さまざまなことに日本が対応しなければアメリカはどこも守ってくれない

飯田)それに対して、どこまで備えられているのか、あるいは国内の議論がどこまで詰められているのか。

佐々木)台湾有事が起きたときに、自衛隊はどこまでコミットするのか。さらに台湾から大量に避難民が溢れてきた場合、どう対応するのかなど、考えなければいけないことがたくさんあります。「全部やらないと、アメリカはどこも守ってくれない」ということを我々は考えるべきだと思います。

飯田)週末に沖縄へ行き、自衛隊関係も取材しましたが、強い危機感を持っていました。一般人を退避させながら、自分たちも守らなければならない。どこまで海上封鎖されるのかということを考えると、南西諸島が大きな危険に晒される可能性があります。

佐々木)先島周辺には人がたくさん住んでいますからね。それを退避させるには、いままでの国民保護法では足りないです。

飯田)強制力をどこまで持たせられるかなど。

佐々木)強制力をもっと持たせるべきだったのだけれども、あのときは「戦争が起きた場合のことを議論するとは何ごとだ」と野党が怒って、あまり有効な法律にならなかった。もう1回議論して、法改正などの対応をして欲しいですね。

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