本当にうまくいくのかどうか……「こども家庭庁」に立ち塞がる「これだけの問題」

ジャーナリストの佐々木俊尚が5月18日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。衆院を通過した「こども家庭庁」設置関連法案について解説した。

2021年11月25日、園児と交流する岸田総理〜出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202111/25shisatsu.html)

「こども家庭庁」設置法案、自公国民などの賛成多数で衆議院通過

子ども政策の司令塔となる「こども家庭庁」を設置するための法案は、5月17日に衆議院本会議で採決が行われ、自民・公明両党や国民民主党などの賛成多数で可決され、参議院に送られた。こども家庭庁は2023年4月の設置を目指し、虐待やいじめ、不登校、子どもの貧困などの解決に向けて幅広く対応する。

飯田)こども家庭庁と文科省が緊密な連携を図るよう求めることなどを盛り込んだ付帯決議も、賛成多数で可決されました。

佐々木)子どもに関する虐待やいじめなどの問題については、警察も関わり、当然ながら文科省も関わり、厚労省も関係するなど、たくさんの省庁にまたがっています。それを「1ヵ所にまとめましょう」ということなのだけれども、本当にうまくいくのかどうかという問題があります。

出身省庁の意向が強く働き、まとまらず崩壊が始まったデジタル庁

佐々木)1つは、自分の出身省庁の意向が強烈に働いてしまうので、うまくまとまらないのではないかという懸念です。デジタル庁がまさにそうで、鳴り物入りで始まり、みんな期待していたのだけれども、ここへきて崩壊し始めた。民間から登用された人材が次々に流出しているということです。

飯田)職員が辞めているという。

佐々木)会議がやたらと多く、しかも各省庁から出向してきた人に対する根回しが大変で、話が進まない。

飯田)みんながみんな「俺は聞いていない」という状況になるという。

分野が広がると関係省庁も広がる 〜その瞬間に「何もできなくなる」

佐々木)子どもとは関係ない話なのですが、総務省はIT系の政策をいろいろつくるではないですか。「インターネットのインフラをつくりましょう」という時期はよかったのだけれど、ネットが普及して、いろいろな生活分野に関わってきました。例えば「食品トレーサビリティをやりましょう」とか、「病院のカルテを電子化しましょう」などの案を出す。そうすると、いろいろな省庁に分野が広がるわけです。

飯田)そうですね。

佐々木)そうなった瞬間に何が起きるかというと、何もできない。

デジタル庁が入る紀尾井町ガーデンテラスに設置された案内表示=2021年9月1日、東京都千代田区 写真提供:時事通信

他の省庁に対して勧告する「勧告権」が与えられているこども家庭庁 〜勧告権だけでうまくいくのか

佐々木)有名な話ですが、経産省が電子カルテに移行しようとして、実証実験を九州などで行うわけです。クラウド化して、いろいろな病院のカルテを一元管理するというものです。

飯田)ありましたね。

佐々木)それを実際に全国でやろうという話になると、そこで厚労省が出てくるわけです。すると、いきなり厚労省も医師会も「そんなものはいらない」と言って、総じて反対する。そして、結局ストップしてしまう。

飯田)いきなり反対されて。

佐々木)でも、そのあとに東日本大震災が起きて、津波で病院の紙カルテが流されてしまい、「やっぱり電子化してクラウド化しておいた方がよかった」という話になるのです。

飯田)そうでした。

佐々木)何かやろうと思って、いくら1ヵ所で行っていても、それが省庁の垣根を超えた瞬間に、「他の省庁が反対するからできない」ということが繰り返される。それが日本の霞が関の伝統芸なのです。

飯田)伝統芸。

佐々木)こども家庭庁は一応、他の省庁に対して勧告する権利、勧告権が与えられています。先述した事態を想定しての話だと思うけれど、果たして勧告権だけでうまくいくのかという問題、課題が1つ。

飯田)勧告権だけでうまくいくのか。

財源をどう確保するのか

佐々木)もう1つは財源です。それなりに財源を持たせないとダメだし、岸田首相も「きちんと財源は確保する」とは言っているのだけれども、どう確保するかについては明言していません。

飯田)そうなのですよね。「追加で予算を」というのは、岸田政権のやり方を見ると、あまり前向きではないのかなと。

佐々木)どうも積極的な財政出動に対して、さほど前のめりではない姿勢が見受けられ、チラチラと財務省の影が見え隠れしなくもないかなという感じがします。

飯田)既存でやっていた文科省の予算を引きはがして、こども家庭庁に持っていこうとすると、文科省は省をあげて抵抗する。どこの省庁もそうですけれど、本当に予算の引きはがしは難しいのだと、官邸で働いていた人が頭を抱えていました。

社会保障費を削ることができない理由 〜高齢者に関しては議論しない日本

佐々木)独自に新しい財源をつくるしかないのだけれども、それに関しては国債を増発するのか。

飯田)「新しい税金をつくってくれれば、もちろんやりますよ」と財務省は言うらしいのですが。

佐々木)またそれで増税をするのか。

飯田)「子ども1人あたりで何円取る」という話をするのかというと、それはできない。

佐々木)議論としては、社会保障費があまりにも拡大し過ぎているので、そこを削るしかないという話をしなければならないのですよね。

飯田)高齢者だけではなく、子どもにも。

佐々木)将来を考えれば、高齢者よりも子どもだという話なのだけれど、日本は高齢者の力が圧倒的に強い。人口も多いですし、国会やテレビ、新聞でも、高齢者を逆撫でするようなことは一切言わないし、書きません。「高齢者に関しては議論しない」というのが日本の民主主義になってしまっているから、誰も踏み込まないのです。

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