ロシアとウクライナの戦いは「2〜3年続く」その理由

地政学・戦略学者の奥山真司が5月31日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ウクライナ情勢の今後について解説した。

対ドイツ戦勝記念日の式典に出席したロシアのプーチン大統領(中央)=2022年5月9日、モスクワ(タス=共同) 写真提供:共同通信社

ロシアの外相がプーチン大統領の病気報道を否定

ロシアのラブロフ外相は仏メディアのインタビューで、プーチン大統領が病気にかかっているとの報道を否定した。ラブロフ外相はプーチン大統領が毎日、公の場に姿を現していると指摘し、「テレビで彼の姿を見て、彼の演説を聞くことができる」と強調した。

飯田)健康状態をめぐって、いろいろな報道が出ています。

奥山)ロシアのような、まさに戦争を行っている大国のリーダーに関しては、どうしてもこの辺りの話は出てきます。ロシアの平均寿命と比較すると、プーチンさんはかなりお歳だということになりますから。

飯田)ロシアの平均寿命は、男性で68.2歳です。

奥山)プーチン大統領は69歳なので、健康問題が常に話題にのぼるのは仕方がない部分はあります。私自身は、プーチンさんの病気説などはあまり考えず、分析からは外そうといつも思っています。真実はわからないので、あえて詮索せずに、とにかく彼の行動から状況を見ます。

飯田)そこは詮索せず。

奥山)プーチンさんが何を考えているかもわからない、病気になっているかもわからない。しかし、日本も絡んできますが、西側で議論されている内容は、「いかに戦争を終わらせるか」ということに関心が集中しているなという印象があります。

ロシアに領土を少し渡してでも“即時停戦”を提案するキッシンジャー元国務長官

奥山)戦争なので、「早く終わらせなくてはならない」ということがあります。今回の戦争の最終着地地点をどうするかについては、2つの考え方があると思います。

飯田)2つある。

奥山)1つ目が、最近話題になりましたけれども、スイスのダボスで開催されていた「世界経済フォーラム」で、フォード政権の時代に国務長官を務めたヘンリー・キッシンジャー氏が、「即時停戦だ」と発言しています。「ロシアを追い込むとまずいから、戦争を終わらせるために、ウクライナはロシアに領土を少し渡したらいいのではないか」という話をして、世界のメディアで炎上しています。

飯田)ウクライナ政府も抗議しています。

奥山)そうですね。

「即時停戦しろ」と言う平和派はドイツ、イタリア、フランスも同じ

飯田)キッシンジャー氏というと、米中国交正常化のイメージです。

奥山)60年代〜70年代から外交の前線で活躍していた人です。99歳で、ヨーダのような人ですよ。

飯田)ヨーダですか。

奥山)スターウォーズに出てくる。彼らをはじめとしてドイツ、イタリア、フランスも同じですし、私がお世話になっている戦略家のエドワード・ルトワック氏もそうなのですが、「即時停戦してすぐに平和を実現しなくてはいけない」という「平和派」の人たちがいるのです。

飯田)日本にもいますね。

奥山)日本にも、「表向きには即時停戦して、早く平和を実現しろ」と言う人がいます。

一方ではポーランド、バルト三国、イギリスのように「ロシアを潰せ」と言う「過激派」

奥山)一方で、反対の人たちがいます。私は「復讐派」だと思っています。「ロシアを潰せ、弱体化させろ」と言う過激な方々です。国で言うと、ポーランド、バルト三国、あとはイギリスです。イギリスは過激ですね。

飯田)イギリスは過激ですか。

奥山)ウクライナのゼレンスキー大統領もこちら側です。「復讐していかなければならないのだ」という。あとは、アメリカのなかにいる「ネオコン」という人たちです。

飯田)アメリカのネオコンサバティズムの人たち。

奥山)こういう人たちが「まだ停戦などしたらダメでしょう。ロシアをとにかく追い込んで潰すのだ」と言っています。

2022年5月17日、ウクライナ・マリウポリの製鉄所から退避し、バスで収容施設に運ばれた兵士=ドネツク州(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

どちらにしたらいいのか「わからない」アメリカ 〜即時停戦と徹底抗戦の間で揺れる

奥山)大きく2つの派閥があるなかで、当のアメリカはどうなのかと言うと、即時停戦を求める「平和派」と「復讐派」の間で揺れ動いているという印象が強いです。

飯田)平和派と復讐派の間で。

奥山)ウクライナを最も支援しているのはアメリカなのですけれども、アメリカ自身が「どちらに動けばいいのかわかっていない」というのが、微妙な感じだなと思います。

飯田)アメリカ自身が。

奥山)領土でいえば現状維持、いまの状態で止めてしまうのか、それとも2月24日の侵攻以前に戻すのか。もしくは2014年以前のロシアが入ってくる前に戻すのか。そういう議論はあるのですが、私は、戦争そのものは、まだまだ長く続くのではないかと思います。

データを見ると戦争は平均で「3年」続く

奥山)第二次世界大戦後に、戦争時期の長さを調べた人たちがいるのです。それによると、平均で3年くらい続くと言われています。

飯田)短期的に「数ヵ月レベル」で片が付くということはないのですか?

奥山)ないこともないのですが、これくらいの大規模なものになると、基本的には3年くらい続くというデータがあります。現状を見ていても、国際的に「いい加減戦争をやめよう」という雰囲気にはなっていないではないですか。

飯田)そうですよね。ウクライナがキーウ周辺は押し戻したということですが、一方で東部ドンバスの辺りは逆に、ロシア軍に包囲されてしまったのではないかという報道も出ています。

お互いが「もうやめよう」となるまで、あと2〜3年続く

奥山)ロシア側は「まだできる」と思っている。ウクライナ側も「アメリカがもっと支援をしてくれれば我々はいける」ということになる。お互いが納得して戦争をやめようと思わなければ、戦争は終わりませんので、私の結論としては、あと2〜3年は続くと見た方がいいと思います。

飯田)トルコのエルドアン氏が仲介をしようと、国連も含めて声を掛けていますが、なかなかそういう機運は出ないということですね。

奥山)戦争はお互いが「嫌だ、もうやめよう」という姿勢になるまで終わらないのです。

「ロシア国内に届くロケット砲は渡さない」バイデン大統領の失言か

飯田)アメリカの腰が定まらないということですが、ウクライナが多連装ロケット砲を求めているのに対して、バイデン大統領は、ロシア領に入るような300キロくらいの射程のものは渡さず、70キロくらいの射程のものを渡すと発言しました。「手の内を明かしてはダメだろう」と思ったのですが、どうなのですか?

奥山)これは失言なのかなと少し思います。ロシアに対して、「国内には攻め込まない」という意向をあえて言いたかったのかも知れませんが、そこは曖昧にしておくべきです。言ってはいけないことを言ってしまったのではないでしょうか。

飯田)よく捉えれば、「そこまではやらないから、核や化学兵器は使うなよ」というメッセージになるのですか?

奥山)そうだと思います。一応、ロシア側も「戦術核は使わない」ということを、ロンドンにいる駐英ロシア大使がBBCのインタビューに答えて話題になっています。しかし、ロシアの公式発表は当てになりません。嘘を言うことがありますので、彼がそう言ったところで、「それでもロシアは使うのだろう」という疑いは晴れないというのが正直なところだと思います。

東京で例えると、新小岩の辺りでスカイツリーの方に追い出しているところ

飯田)ロシアは北部のキーウ周辺は諦め、いまは東部と南部に集中しようとしています。

奥山)東京で言うと、いま葛飾区と江戸川区を上と下から、新小岩の辺りで都内の方、スカイツリーの方に追い出すというような状況にあります。

飯田)23区の地図で例えると。

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