戦死したロシア兵の写真をAIでデータ照合し人物特定 ウクライナが導入する「顔認識技術」

地政学・戦略学者の奥山真司が5月31日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ハイブリッド戦争における顔認証について解説した。

ウクライナ北東部ハリコフ近郊の村で損傷し放置されたロシア軍の戦車。EPA=時事 写真提供:時事通信社

ハイブリッド戦争における顔認証

ウクライナ国防省は2022年3月、アメリカのAIベンチャー「クリアビューAI」社による顔認識技術を導入すると発表した。クリアビューAI社がウクライナ側に無償提供を打診し、ウクライナ側がこれに応じた。

飯田)一部報道されていますが、戦死したロシア兵の顔をAIで識別し、遺族に知らせているのではないかということです。

奥山)これはニューヨーク・タイムズやCNNをはじめ、かなり詳細な報道が出ています。「クリアビューAI」をそのまま報道しているものもあるのですが、倫理的には問題で、かなりグレーゾーンです。

飯田)グレーゾーン。

奥山)まず、スマホなどでロシア兵の遺体の写真を撮ります。それを「クリアビューAI」社という、アメリカのニューヨークにあるスタートアップ企業らしいのですが、ここがネットから拾ってきた何億枚という顔のデータと照合するのです。

飯田)顔写真のデータと。

奥山)遺体の写真をクリアビューAIのアプリに入れると、数十秒で誰なのか特定できるらしいのです。

亡くなったロシア兵の顔写真をロシアのSNSのデータに照合し、親族や友人にウクライナからメッセージを送る 〜「この兵士はあなたの息子ですよね」

奥山)特定するデータ先はどこから持ってくるかというと、ロシアには「フコンタクテ(VKontakte)」というSNSがあるのですが、そこから取ってくるらしいのです。顔と名前が判明すると、その人とつながっている親族や友達に、ウクライナ側からメッセージを送るそうです。

飯田)その兵士とつながっている人に。

奥山)遺体の写真を送って、「この兵士はあなたの友達ですよね」とか「あなたの息子さんですよね」と。そのあとに「遺体があるので、戦争が終わったあとに引き取りに来なさい」というメッセージを送るとのことです。

飯田)戦争が終わったら。

奥山)そうすると、当然ですが8割くらいの人は「ふざけるな」という敵対的な反応をするのですが、2割くらいのロシア側の人からは、「ありがとうございます。行方不明になっていたのですが判明しました。戦争が終わったらそちらに遺体を引き取りに行きます」と感謝されるということです。

飯田)2割くらいの人からは。

奥山)こういう記事を読んで思うのは、今回の戦争における革新的なテクノロジーには、ドローンなどもあるのですが、それ以上にテクノロジーによって個人レベルの領域にまで戦争が入り込んできているということです。しかも戦っている人そのものの顔を晒すのです。

顔認証のシステムによってインターネットにあげられた写真が悪用されてしまう可能性も

奥山)話がずれるのですが、飯田アナはYouTubeの「ドッコイショッピング」という番組に、清水ミチコさんと一緒に出ていますよね。その番組のなかで、「刑務所から出てくるときには顔マスクをする」というエピソードがありました。

飯田)いまはみんなマスクをしているから、それを顔まで覆うようなマスクにする。「そうすれば顔がわからなくなります」というような、通販番組のパロディのネタをやりました。

奥山)やっていましたよね。あれを観て、「もしかしたら、あれくらい顔を覆わなければ、ネットの悪用を避けられないのではないか」と思いました。

飯田)顔認証によって悪用されることを。

奥山)顔認証システムによって、インターネットにあげられた写真が悪用されてしまう問題が出てくるのではないかと、個人的に心配しています。

飯田)自分の顔をどう守るか。

奥山)プライバシーの保護が、これからの我々の人生において、致命的に重要になってくるのではないかと思いました。

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