「円安」が日本にとって有利である「理由」 高橋洋一が解説

「円安」が日本にとって有利である「理由」 高橋洋一が解説

学者「円安は日本に有利」

数量政策学者の高橋洋一が6月14日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。東京市場での円・株・債券のトリプル安について解説した。

円相場が1ドル135円台に突入、20年ぶり円安水準を更新した=2022年6月13日午後、東京都港区 写真提供:産経新聞社

円相場、1ドル=134円40銭付近で取引

6月13日のニューヨーク株式市場で、ダウ平均株価は先週末と比べて876ドル05セント安い3万516ドル74セントで取引を終えた。ハイテク銘柄中心のナスダック総合指数は530.79ポイント下がって10809.23。一方、円相場は1ドル=134円40銭付近で取引されている。

飯田)アメリカの場合は、インフレ率をどうするかということが政策課題になってきているのですか?

高橋)全体で8%くらいですからね。下がると思っていたら、5月に少し上がってしまった。

円安になるとGDPが上がり、日本にとっては有利なこと

高橋)日本で「円安」と盛んに言うではないですか。報道を見ると「とても悪いことなのか」と思いますが、ファクトとしては、円安になると実質国内総生産(GDP)は上がるのです。自国通貨安は自分の国には有利であり、他の国には不利ということで、「近隣窮乏化」などという言い方をします。近隣窮乏化というのは、周りの人には迷惑な話であるということです。

飯田)周りの国にとっては。

高橋)日本国内で批判が出るということが、私は不思議ですね。普通は海外から批判が出るのです。「日本だけがよくて、他の国は大変だよ」という文句が来るのです。

飯田)お前だけよくていいよなと。

中小企業には不利だが超優良企業には有利な円安 〜プラスマイナスを合わせるとプラスが大きいのでGDPが増える

高橋)そういう文句がくるのだけれど、いまのところきていないのはラッキーです。10%くらい円安になるとGDPは1%くらい上がるので、有利な話なのです。こういう話をすると「中小企業は」という話題になりますが、為替というのは、中小企業には円安は不利です。ただし、エクセレントカンパニーには有利です。

飯田)超優良企業には。

高橋)輸出比率が全然違うためです。輸出は世界市場で行わなければいけないから、比較的エクセレントカンパニーには有利なのです。輸入は誰でもできるのですが、中小企業は輸出比率が低い。そういう意味では、円安の恩恵を得にくいのは間違いありません。それでも、プラスマイナスを合わせるとプラスの方が大きいので、GDPが増えるということです。

政策対応としては円安で大変な輸入業者や中小企業への対策をする

高橋)GDPが増えるのだから、政策対応は簡単なのです。円安で大変な輸入業者や中小企業への対策をすればいいということです。

飯田)大企業の収益が増える、イコール税収も増えるので、その部分を再分配すればいい。

高橋)例えば、企業収益が過去最高の企業が多いはずなのです。ということは法人税収も大きくなる。それを再分配すればいいので、政策対応は簡単です。GDPが減るような状況での政策対応は大変だけれど、GDPが増えるときは簡単です。

「円安」により、IMFの経済見通しでは日本だけが昨年より成長率が高い

高橋)「円安だ」と大騒ぎしていますが、「GDPが増える」ということはどこも書かないのです。不思議です。内閣府の経済モデルでも言えるし、世界のOECDやIMFの経済モデルでも同じです。

飯田)経済モデルは。

高橋)IMFの経済見通しだと、今年(2022年)の予想は日本だけが去年より成長率が高くなるのですよ。それは円安だからです。

3日、米ホワイトハウスで演説するバイデン大統領(ロイター=共同)=2021年8月3日 写真提供:共同通信社

通常、為替が安くなるときには株は高くなる 〜今回の株安はアメリカ要因のため

飯田)ニュースの見出しとしては「東京市場で円・株・債券トリプル安」ということを言っていまして、1ドル=135円台前半までいきました。1998年10月以来、およそ24年ぶりです。日経平均株価は昨日(13日)、800円を超す値下がりとなり、2万7000円割れ。長期金利の10年国債利回りが年率で0.255%まで上昇。価格は下落したということですが、日銀の目安を超えてきたではないかというようなことも言われています。産経新聞は悪い円安論という言い方です。

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『「悪い円安」論再燃 黒田日銀に修正圧力

円が他の主要通貨に対して売り込まれる「独歩安」が止まらない』

〜『産経新聞』2022年6月13日配信記事 より

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高橋)実質国内総生産(GDP)が増えて「悪い」と言われると、どうしていいのかわかりません。株と為替だけの話をすると、エクセレントカンパニーにはプラスだから、エクセレントカンパニーで構成される株価は円安がプラスになるのですよ。過去の例を見ても、為替が安くなるときに株が高くなる場合はかなり多いです。

飯田)為替が安くなるときには。

高橋)今回どうして株が下がったかと言うと、アメリカの要因があるわけです。株は2つの要因で決まっていて、為替とアメリカです。アメリカの影響が大きいと、こういうことが起こるのです。

飯田)今回のように。

高橋)債券の方は安くなったと言うけれど、イールドカーブ・コントロールで金利を一定にさせる。はっきり言うと10年金利で0.25%に収まっているから、これ以上にはならないですね。

飯田)ここから先は日銀が間に入っていく。

一面だけを見て誤った報道をするマスコミ

高橋)それはそれでけっこうなことなのですけれどね。金利が安い状態だから、GDPも増えるということなのです。それなのに、一面だけを見て100円ショップがどうのこうのと言うでしょう? 完全に一面だけのストーリーというやり方で、全体を見誤っている報道です。

飯田)全体を見誤る。

高橋)これはマクロ経済の話だから、全体の話をしないとダメです。マスコミがストーリーテラーとして、1つの例からすべてを説明したがることはよくあることですが、マクロ経済の説明のときにはほとんど間違いになります。

飯田)社会的なドキュメンタリーではよくある手法ですが、経済でやろうとしているのですか?

高橋)1つのことで説明してしまって、「GDPが増える」という話は説明しない。それはダメなのです。マクロ経済としては「GDPが増える」ということで説明が終わるのです。もちろんプラスマイナスはありますが、全体では増えるということです。

円安のいまこそ内需対策をすれば景気は上がる 〜追い風である「円安」だけでいいと対策しない政府

飯田)「10%円安になるとGDPが1%程度増える」ということですが。

高橋)大体1%増えます。

飯田)円安が始まったのは、当然ながらウクライナ情勢によるところがありました。2月の水準だと、私が記憶しているのは1ドル=110円台ぐらいだったと思うのですが。

高橋)そうですね。

飯田)そうすると、いま135円ということは、20%ぐらいは円安ということですよね。

高橋)日本の経済成長率がこれで持っているようなものです。

飯田)GDPが2%増えると考えれば。

高橋)そうですね。逆に言うと、内需の話がきちんとできていない。例えば補正予算は全然足りていません。その部分をきちんとやっていないけれど、円安で持っているという感じです。内需への対応をもう少しきちんとやれば、上がるのです。

飯田)そうですよね。経済協力開発機構(OECD)の予測を見ると、日本は大体1.8〜1.9%の成長と。「あれ?」と思うのは、為替で説明がついてしまうことですね。

高橋)大体はそうですよ。逆に言うと、内需対策をサボっているということなのです。だから「こういうときに内需対策をすれば、ダブルパンチでちょうどいい」と私は思いますけれどね。フォローウィンドが吹いているから、「これはチャンス」と思えばいいのですが。

飯田)追い風。

高橋)だけど、「追い風だけでいい」と思ってしまっているのでしょう。

飯田)追い風で進んでいるから、漕がなくていいやと。

高橋)そんな感じになってしまっているのですね。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

いまこそ、「Go To トラベル」をやるべき 〜いまやれば経済に火が点くはず

高橋)いろいろな発言でも強制貯蓄論というものがあって、自然に爆発するということで、景気対策をサボるのです。強制貯蓄論が出たときには、「少しでも火を点けたらすごいよ」と私は言う方なのですけれどね。具体的に言うと、例えばGo To トラベルです。

飯田)Go To。

高橋)東京都民割が人気なのでしょう?

飯田)そうですね。

参院選のあとでは夏休みの計画に間に合わない

高橋)国の方もやればいいのだけれど、参議院選挙のあとに全部先送りしているのです。すべて検討になっている。いまやれば本当に火が点きますよ。

飯田)このタイミングでやると、ちょうど「夏休みはどうする?」という人たちが。

高橋)参議院選挙以降だと、夏休みに間に合わないかも知れないという不安が業者にもあるのですよ。参議院選挙以降であれば夏休み直前になりますね。

飯田)7月10日だと直前です。そのぐらいの時期には、もう予約を取ってしまっています。

インフレ率が高くなっても、景気対策で所得が上がっていれば問題はない

飯田)仮に経済対策で景気が「ドーン」と上がるとなると、インフレ率も高まるのではないかと思いますが、いかがですか?

高橋)逆に言うと、景気対策を行って所得が上がれば、簡単に転嫁できるという意味で、そちらの方がいいのです。少しインフレ率が高くなっても構いません。インフレ率が高くなっても、景気対策で所得が十分に上がっていれば大丈夫なのです。逆に、インフレ率が高まらないように所得を少なくすると転嫁できないから、企業の方にしわ寄せがいってしまって、最後は雇用に影響するのです。

飯田)なるほど。インフレ率は高まるかも知れないけれど、賃金などが……。

高橋)賃金も上がるから。

飯田)経済成長も高まって、実質部分でプラスになっていれば大丈夫だと。

高橋)他の国の方がインフレになっている部分だけ、最終需要があるという意味で、まだまともなのです。日本は最終需要がないけれど、インフレにもなりにくいので、そちらの方がよくない状況です。

飯田)需要がないから、今度は「生産を縮小しよう」ということになってしまう。

高橋)コストアップが価格転嫁できなかったら、事業を縮めて、最終的には雇用に影響します。ですからインフレになっても「けしからん」ということではなくて、「インフレになっても十分なくらいにお金を景気対策で撒け」というのが正しいのです。

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