ASEAN諸国、インド、日本の「東西におけるコネクティビティをいかに強化するか」ということが鍵に

前国家安全保障局長の北村滋が6月27日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。米ホワイトハウスが立ち上げることを発表した太平洋地域の島嶼国への支援強化のための枠組みについて解説した。

【クアッド日米豪印首脳会合】会合に臨むバイデン米大統領=2022年5月24日午前10時35分、首相官邸 写真提供:産経新聞社

アメリカが太平洋島嶼国への支援を強化、日本などと新たな枠組みを立ち上げ

アメリカのホワイトハウスは6月24日、太平洋地域の島嶼国への支援を強化するため、日本やオーストラリアなど5ヵ国からなる新たな協力の枠組みを立ち上げると発表した。気候変動対策や海洋の安全保障、保険、教育など島嶼国にとって特に重要な課題に力を合わせて取り組んでいくとしている。

飯田)太平洋地域への影響力を強める中国を牽制(けんせい)する狙いがあるというように解説されますが、この動きはどうご覧になりますか?

北村)2013年に習近平国家主席とオバマ大統領が会見していますけれども、このときに習近平国家主席は「広く大きな太平洋には米中の両大国を受け入れる十分な空間がある」という発言をされています。

飯田)ありました。

北村)長期的に見ると、中国は西太平洋における覇権の追求を行っているのだろうと思います。今回の太平洋島嶼国への支援強化の枠組みですが、若干話を昔に戻すと、太平洋戦争というのは、太平洋における覇権をめぐって日米で戦われたと言ってもいいと思います。

飯田)太平洋戦争は。

北村)今回のソロモン諸島については、ここにガダルカナルがありますし、キリバスもそうですけれども、タラワというかつての激戦地があります。米国は今回、新しい枠組みを提示しましたが、このような地域、太平洋地域における平和と安定の重要性を十分認識している背景があって、今回の枠組みの立ち上げになったと考えています。

同じ価値観を有する国が協力して支援を強化する 〜中国の債務の罠に近い太平洋島嶼国への「財政支援」にも対応する

飯田)中国がソロモン諸島と協定を結ぶということが表に出てきたのは2022年の話ですけれども、報道を見ていると、2019年辺りから既にそのためのたたき台などをつくってきているということも言われています。今回のウクライナ情勢があり、アメリカは背後を突かれたという感じにも見えるのですが、いかがですか?

北村)島嶼国に対する浸透は長く取り組まれてきていて、今回はかなり目立った形で出てきたということもあります。ニュージーランドやオーストラリアは、特にこの地域を重視していますので、「同じ価値観を有する国が協力して支援を強化していこう」ということになるのだろうと思います。

飯田)同じ価値観を有する国で。

北村)一方、中国の関与としては、債務の罠に近いような「財政支援」によって、当該国の決定自体をかなり拘束するという側面があります。そのようなことに対して、取り組んでいくことになるのだと思います。

支援の透明性の確保は重要

飯田)いま債務の罠という言葉が出ました。スリランカのハンバントタ港がよく引き合いに出されますが、「お金を貸してあげるから港を整備しなさい」と言われて、お金がないからありがたく整備すると、「借金したのだから返せ」と言われる。しかし、収益があげられず、経済的に立ちいかなくなり、土地や港が中国の手に渡ってしまうという事例が増えています。これに対する日本のアプローチとしては、資金の支援などという方法になるのでしょうか?

北村)あとは借款のあり方、その他についても、もう少し透明性を高めるということです。大阪でのG20サミットの際、そういうことを安倍元総理から提案されて、中国自身もそのような原則はそれなりに了解していると思います。当該国の繁栄につながらなければ意味のない話ですので、支援の透明性の確保は極めて重要だろうと思います。

26日、オンラインで行われた東南アジア諸国連合(ASEAN)との首脳会議に臨むジョー・バイデン米大統領(中央)[ASEAN事務局提供]=2021年10月26日 写真提供:時事通信

ASEAN諸国とインド、日本の「東西におけるコネクティビティをいかに強化するか」ということが鍵に 〜中国の南アジアへの動きに対して

飯田)中国は島嶼国のみならず「一帯一路」のなかでも、陸の方はシルクロードをなぞるような形で、沿線国に対してもインフラ投資などを行っています。西側としては、その辺りも対抗していかなければなりませんか?

北村)対抗というか、少なくとも「中国・パキスタン経済回廊(CPEC)」や、カンボジアのリアム港に対する支援は、インド洋等にいかに出口を求めるかという戦略的な視点で行われているのだろうと思います。

飯田)中国が。

北村)特に南アジア等に対する動きについては、ASEAN諸国やインド、我が国の「東西におけるコネクティビティをいかに強化するか」ということが鍵になってくるのだろうと思います。

飯田)東西におけるコネクティビティを。

北村)先日のクアッドの共同声明においても、コネクティビティを確保するためのインフラに対する支援も盛り込まれていますが、価値観を共有する国同士が協力していくという方向性を、我々は追求しているのだろうと思います。

「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を多層的な形で具体化することが重要

飯田)価値観の部分で、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」と言われますけれど、日本国内でもそうですが、国際的にも浸透してきました。これは日本が旗を振って行われたものです。これを1つの下敷きとしながら、「共有する人はみんなウェルカムだ」という形で対応していくというのが日本のスタイルになりますか?

北村)そうだと思います。特に岸田総理のシャングリラ・ダイアローグでのスピーチ、先般の日米共同宣言などにもその概念が盛り込まれています。開かれた思想ですので、多層的な形でこれを具体化していくことが重要だと思います。

飯田)まずトランプ政権がFOIPという概念を取り、かつて「アメリカ太平洋軍」と言われたものが「インド太平洋軍」に変わったということまでありました。これはバイデン政権になってどうなるのでしょうか? トランプ政権のものをそのまま引き継ぐことに支障はなかったのでしょうか?

北村)あったかも知れませんが、「自由で開かれた」という概念自体は米国等が取り入れても、何ら問題のない概念です。当初、「安全で繁栄した」という言葉も使われていますけれども、実際にその言葉はいまも米国のインド太平洋戦略等では出てきますので、それがあったからどうということではありません。いずれにしても、「フリー&オープン」という部分が強調されるということは、我が国にとっても米国にとっても悪いことではありません。

当該国への重層的な支援が重要になる

飯田)シンガポールで行われたアジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)での総理のスピーチのなかにも、安全保障の部分で言うと、海洋の保安や、軍と軍だけではないところでも協力していくのだという。ある意味での能力構築支援のようなものは、日本の得意とするところですよね。

北村)特に、海上保安庁はその部分でかなり力を入れていますし、南シナ海におけるさまざまな状況は、法執行能力、海洋警備力の当該国の不足に起因する部分もないわけではないと思います。そういった意味での支援についても、政府はかなり力を入れているのだろうと思います。

飯田)その辺りの重層的な支援が、これから先も重要になりますか?

北村)重要だと思います。

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