トルコが反対から一転「北欧2か国NATO加盟支持合意」は「筋書き通り」の結果

東京外国語大学教授で国際政治学者の篠田英朗が6月30日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。反対から一転してフィンランドとスウェーデンのNATO加盟を支持したトルコの存在について解説した。

28日、覚書の署名後に記念撮影に応じる首脳ら。左からストルテンベルグNATO事務総長、トルコのエルドアン大統領、フィンランドのニーニスト大統領、スウェーデンのアンデション首相(ロイター=共同) 2022年6月28日 写真提供:共同通信社

フィンランド、スウェーデンのNATO加盟支持で合意

北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は6月28日、スペインのマドリードで記者会見し、トルコが北欧フィンランドとスウェーデンの加盟を支持することで合意したと発表した。

飯田)北欧2ヵ国であるフィンランドとスウェーデンのNATO加盟について、トルコが一転容認したということです。トルコは突っ張っていましたけれど。

篠田)トルコは存在感を見せましたね。欧米諸国とは少し違うスタンスをとっていて、EUには加盟していないのですが、中東にも足掛かりのある特別な国として、異端的な存在感を見せました。他方、トルコはNATOの強力な構成国であるという認識を他の加盟国にもアピールしましたし、トルコ自身も「NATOにいたい」という気持ちを最後には見せたというところです。「軽く見られたら困るよ」ということも途中、言っていましたが、最初に予測した通りの結果になったということだと思います。

飯田)どこかで容認するだろうということは、みんな思っていたところではありますが、思ったより強硬だなという印象も受けました。

篠田)そうは言っても「最後は折れてくれるだろう」という見方が出てしまったので、トルコとしては、そのように甘く扱われるのはいかがなものかということも途中で言って、「ごめん、そんなつもりではなかった」というやり取りがあったという感じです。

飯田)なるほど。

篠田)お互いにそのようなやり取りをすることも、すべて織り込み済みで、最後にいいタイミングで「こんなところかな」という位置に落とし込めたのだと思います。

NATO首脳会議に合わせて締め切りを設定したなかでのやりとり

飯田)NATO首脳会議は前々から設定があったので、この辺りがお尻かなということは、みんな考えていたのでしょうか?

篠田)そうだと思います。あまり長引かせると本当に揉めている感じが出てしまう。しかし、これ以上早く決まるということもないので、それまで盛り上げて、「もう少し深刻に考えて欲しい」という姿勢を見せつつ、ここで打ち止めにする。お互いに締め切り感覚のあるなかで歩み寄ってきたということだと思います。

独特の存在感を持つトルコ

飯田)トルコは、ロシアによるウクライナへの侵攻に関しても、停戦の仲介をしようとしましたが、独自の道を模索する感じなのでしょうか?

篠田)NATOに入ったのも、冷戦中のいろいろな経緯で入っています。EUには入っておらず、中東の国でもあるので、シリア紛争にも深く肩入れしている。シリア、ナゴルノ・カラバフ、リビアなどでロシアと緊張関係と対話の関係を持っている、独特の存在感を持った地政学大国と言ってもいいと思います。

飯田)地政学大国。

篠田)トルコについては、いろいろな見方もあると思います。正直に言って人権をとても尊重している国ではありません。他方、NATOとしてもトルコを失うことはできない。今回の戦争でも仲介役を買って出るということは、半分は面白くないと欧米諸国は考えていると思いますが、半分は「トルコに仲介役をやってもらわないと、他にどこの国ができるのだろうか」ということもあるので、容認している状況なのだと思います。

トルコの持つ地政学的な重要性

飯田)クリミア半島から見ると、黒海の対岸の部分がトルコになるわけですよね。

篠田)そうですね。黒海は我々からしてみると面白い海で、遠くから見ると海というよりは、内海に近いものなのです。

飯田)湖のようにも見えますね。

篠田)あれが海なら日本海も、と言いたくなるぐらいの特別な海です。もちろん、近くからは対岸が見えるようなものではない立派な海で、ロシアもセバストポリに艦隊を置いているため、クリミアは重要な地域でもあります。逆に言うと、トルコがボスポラス海峡という海峡を封じ込めてしまったら、本当に池になってしまいますので、トルコが持っている地政学的な重要性は計り知れないものがあります。

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