海外への宣伝文書としての機能も果たす「防衛白書」

地政学・戦略学者の奥山真司が7月26日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。7月22日に閣議報告された2022年版の防衛白書について解説した。

令和4年版防衛白書を掲げる岸信夫防衛相=2022年7月22日、東京・市ケ谷の防衛省 写真提供:産経新聞社

防衛白書

防衛白書とは、防衛省が毎年刊行している報告書。日本の防衛政策の基本方針や周辺国の軍事情勢について、国民の理解を求めることを目的として1970年に発行され、1976年以降は毎年発行されている。7月22日に2022年版の防衛白書が閣議に報告された。

新行)ポイントはどういうところでしょうか?

3段階での中国の脅威を提示

奥山)ロシア・ウクライナ戦争を踏まえた上で、台湾について相当記述しているところが大きいと思います。それに対して、中国の方から「強烈な不満」という形で声明があったということです。台湾のいくつかのシナリオが敢えて提示されているところが興味深いと思いました。「3段階で起きる」という話をしています。

新行)3段階で。

奥山)1つ目は、中国沿岸への軍の集結と「認知戦」による台湾民衆のパニックです。中国が侵攻してくると。2つ目は、重要施設へのミサイル発射やサイバー攻撃。3つ目が強襲揚陸艦の着上陸。この3段階で起きるという、かなりリアルで具体的な話もシナリオですが紹介しています。

宣伝文書としての機能も果たす「防衛白書」

奥山)当然なのですが、海外メディアや安保関係者が見ています。これは国内向けだとご説明いただいたのですが、海外にも見ている人がかなりいます。

新行)海外で。

奥山)日本の防衛省が「自分たちの戦力や安全保障関係をどのように見ているかわかる」という意味では、日本側が伝えたいメッセージとしてつくることも可能だということです。

新行)海外に対して。

奥山)そういう意味では、むしろ宣伝文書として使えるような機能を果たしていると思います。日本が「ここを脅威だと認識している」と言うと、海外も「日本はやはりあそこを気にしているのか」ということで、「では刺激するのをやめようかな」と考えを変えることもあり得ます。プロパガンダのツールというわけではないのですが、日本側がここに興味があるということを示すことは、海外に対するいいメッセージになるのではないかと思っています。

中国が批判するのは筋違い

新行)中国がリアクションしてきたことを考えても、確かにそうですよね。

奥山)しかし、中国がリアクションしてくるのは筋違いかなといつも思います。

新行)筋違いである。

奥山)中国自身は常に現状変更しているわけです。「日本が危ないことをしなければ世界は平和だ」という考えを持っている人は日本国内にもいますが、中国側も「お前らが変なことさえしなければ、我々は平和なのだ」と思っているところがあるのです。その中国が非難してきたとしても、スルーしていいのではないかと思います。

日本は中国や北朝鮮の軍拡に対してのリアクションとして軍拡を考えるだけ

新行)その他に注目すべきポイントはありますか?

奥山)日本側が認識を改めるべきだと常に思います。防衛白書のように、日本側がやや刺激的なことをすると、日本国内でも「日本が軍拡するから中国や北朝鮮も軍拡するのではないか。だから日本も軍拡を止めろ」と言う人が多いのです。

新行)日本国内からも。

奥山)今回の安倍元首相の追悼記事でも、そのようなことを書いている方が何人かいらっしゃいました。「安倍さんが軍拡を進めたからアジアが不安定になった」と。

新行)刺激してしまったからだと。

奥山)でも逆で、日本はむしろ中国や北朝鮮の軍拡に対し、リアクションしているだけなのです。

新行)リアクションしているだけ。

奥山)防衛費もそれほど増やしているわけではありません。我々は戦略環境として、「相手がやっているからこちらもやっている」と捉え直す必要があると思います。日本が何かリアクションをしたら「中国などが怒るよ」というようなことを言う人がいますが、先に中国などがやっていることなのです。

新行)そこに対するリアクションであるという。

奥山)そうです。そこを我々はしっかり考えるべきだと思います。

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