7月の月例経済報告 政府の「総合的な判断」には「政治的願望」も含まれている

数量政策学者の高橋洋一が7月27日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。政府による7月の月例経済報告について解説した。

2022年7月25日、会議のまとめを行う岸田総理〜出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202207/25keizai.html)

景気判断「緩やかに持ち直している」 〜コロナ感染拡大後、初めての表現

政府は7月の月例経済報告で、景気判断を「緩やかに持ち直している」と3ヵ月ぶりに上向きに修正した。この表現となるのは新型コロナ感染拡大後、初めて。

「総合的な判断」は「客観的にみているだけではない」という「政治的願望」も含まれている

新行)景気が「緩やかに持ち直している」というのは、外食や旅行などの個人消費の持ち直しが続いていることや、雇用情勢の改善が主な要因ということですが、いかがですか?

高橋)普通に考えると、政府が客観的に景気を説明しているように見えるかも知れませんが、よく見ると、どこかで「総合的に判断して」と言うはずなのです。「総合的に」と言うときは、実は「客観的にみているだけではないですよ」という意味なのです。

新行)「総合的に」と言う場合は。

高橋)政治的な願望も含めた話です。政府の希望も少し含まれているとみた方がいいと思います。先ほど「雇用が持ち直している」と言ったでしょう。しかし、いまの名目的な失業率だけ見ると、勘違いしてしまうのです。

新行)雇用調整助成金もあって、という。

高橋)そういうもので失業率を名目的に抑えているのは間違いない。「緩やかに持ち直している」などと言うのだけれど、雇用調整助成金をすべて取り払って普通の状態に戻せば、すぐに悪くなります。

新行)失業率も。

高橋)そのような感じなのです。景気が「緩やかに持ち直している」ということは、いろいろな数字を見ながら「願望が入っている」と考えた方がいいです。

秋の補正予算で財政支出を抑えたいために「緩やかに持ち直している」と言っているのか 〜コロナ禍前には戻っていない

高橋)8月に臨時国会が開かれますが、これは議長だけの話だからすぐ終わります。そして、秋にまた補正予算のための国会があるのです。その補正予算のときに「景気がいい」と言っていた方が、補正予算を少なくできる。そのような気持ちも入っていると思います。

新行)そこも見据えてということですか?

高橋)「どうして“緩やかに持ち直している”などと言うのかな」と。確かに、非常に低いところからは持ち直しているかも知れません。でも、「コロナ禍前に戻ったのですか?」と考えたら、そうではないでしょう。「これから先、景気がいい」と言って、いろいろな財政支出を渋るつもりなのではないですか。

一方では積極的に行わなかった景気対策をカモフラージュするため

高橋)GDPギャップという言い方をしますが、どのくらい需要があるかを見る指標を調べたところ、日本は需要が少ないのです。需要が少ないということは、景気をよくするために参院選前に大型補正を行うべきだったのに、しなかったでしょう。それが響いていて、うまくいっていないのです。それを何となく「いいのだ」と説明したい政府の意図がある。これまで積極的に景気対策をやっていないから、カモフラージュするための表現として読んだ方がいいと思います。

参院選前に大型補正を行っていればもう少し景気はよかったのでは

新行)7月の月例経済報告の中身を見ますと、個別項目では、個人消費は「緩やかに持ち直している」。雇用情勢は「持ち直している」。輸入は「持ち直しの動きが見られる」。消費者物価は「上昇している」。生産は「持ち直しの動きに足踏みが見られる」と書かれています。

高橋)「緩やかに」などという形容詞が付くでしょう。全体的にそれほどいい話ではないのです。需給ギャップが30兆円くらいあるのを放置しているためで、よくなるはずがありません。春くらいに大型補正を打っていたら、もう少し違う表現になっているはずなのですけれど。やっていないからこのレベルなのではないでしょうか。

円安はリスク要因にはならない

新行)懸念材料として、原材料価格の上昇と、金利差の拡大を背景に進む円安が先行きのリスク要因だと書かれています。

高橋)「円安がリスク要因」などと言い出したら、ほとんど「経済分析としてアウト」です。円安になるとGDPは高くなるから。

新行)高橋さんは以前からおっしゃっています。

高橋)このように「チラッ」と書いてあるところに嘘がある。政府の説明をそのまま書くとそうなってしまうのですけれどもね。そういうときに、「これは違うでしょう」と記者の人が質問するべきです。

日本だけ円安になって日本はラッキー

新行)高橋さんは以前から「円安になるとGDPが上がる」という話をされていますが、円安が悪いかのような報道が出ているのはなぜですか?

高橋)理解不能です。金融界から見ると、円安をなくすために「金利を上げてくれ」という意見が多いのです。それは金融界のなかの事情であり、それをそのまま日本経済に当てはめてはいけないのです。

新行)金融界のなかの事情。

高橋)日本だけが円安になっていて、日本はラッキーなのです。普通は他の国から文句が出てくる。文句が出てこないのはラッキーなので、うまく活用するべきなのです。

新行)日本は円安でラッキーである。

高橋)経済見通しで「日本は1.7%の成長」などと言われていますが、その要因はほとんどが円安です。「円安がリスク要因」などという説明文を聞いただけで、「これはダメだ」と思ってしまいます。

新行)こういう記事が出てきたときは、冷静に見なければいけないですね。

「円安が問題だ」ということは間違い

新行)円安について、「日本の金融政策のせいではないか」とか、「物価高は円安のせいではないか」という意見も出ていますが。

高橋)物価高の影響に円安はほとんど関係ありません。どちらかと言うと、円安で企業収益がよくなっている。3月期決算がいいのは、税収がいいからです。そうすると矛盾するではないですか。はっきり言って「円安が問題だ」などというのは単なる間違いです。

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