「節約術」では経済は上向かない

ジャーナリストの佐々木俊尚が8月3日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。「メディアにあふれる節約術」について解説した。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

メディアにあふれる節約術

飯田)佐々木さんがリツイートされた、「メディアにあふれる節約術について」というつぶやきに関するコメントがありました。一部の価格が上がっているところが大きいのですが、これだけ物価が上がると、生活防衛ということでメディアが盛り上がりますが。

佐々木)「4人家族で月の食費2万4000円の献立」というような記事が多いのです。生活防衛はいいことなのだけれども、言いすぎるとデフレマインドの維持にしかならないのではないかと思うのです。

生活防衛はデフレマインドを悪化させるだけ 〜ようやく「物価が上がるなら仕方ない」という気持ちになってきた

佐々木)「物価が上がったら、みんなお金を使わないようにしましょう」と。なるべく節約をしましょうということは、もちろん必要なことなのだけれども、そればかりやっていると、また物価が上がらないことになってしまう。企業側も、お金を使ってもらえないのだから、物価を上げないように必死で企業努力をしようということになります。

飯田)価格を抑えようと。

佐々木)企業努力の内実は、従業員の給料を減らしたり、コストカットすることなのです。もしくは原材料や部品の価格を落とす。それによって下請けや原材料供給企業の収益が減っていく。そうすると、下請け企業の給料が減る。結局、平成の30年間やってきたデフレマインドを悪化させるだけなのです。

その切り替えがメディアにできていなくて、世論が「節約術」などの記事に引きずられ、デフレマインドに戻りつつある

佐々木)ようやくここへきて、「物価が上がるなら仕方がない」という気持ちにみんながなってきたのです。しばらく前に日銀の黒田総裁が「家計の値上げ許容度が上がっている」と言って叩かれましたが、あれがまさにそうです。「物価が上がっても仕方がないから買うか」というマインドになってきて、ようやく物価が上がるとともに経済が上向く可能性が出てくるのです。

飯田)経済が上向く可能性が。

佐々木)もちろん、現在はコストプッシュインフレであり、エネルギーや食料品が上がっているだけだから、それだけでは経済は上向かないのですが。ただ、「物価が上がっても仕方がないよね」という気持ちに持っていくことが大事なのです。その切り替えがメディアのなかでもできていなくて、そこに世論が若干引きずられ、またデフレマインドに戻りつつある感じがするのが、少し危惧するところです。

物価上昇には特別給付金などで対応するべき 〜最終的には経済が上向き、税収も増える

飯田)所得が低い人や家族が多い人にとっては、価格が上がると生活が苦しくなることもあります。そこに対してはきちんとピンポイントで財政出動させるべきであると、日曜討論で以前、日銀副総裁を務めていた岩田規久男さんが指摘していました。この辺りがこれから先、ポイントになりますか?

佐々木)物価が上がることへの対応については、生活防衛をすることではなく、「お金を増やすしかない」ということです。そのためには特別給付金で、また20万円くらい配るなどの対応をした方がいいのではないかと思います。

飯田)給付金で。

佐々木)そうすると最終的には経済が上向く。税収も増えるだろうし、財務省も大喜びだろうと思うのですけれど、みんなでマイナス、ネガティブな方向に行こうとしている感じがします。

よくない景気が続いたこの30年

佐々木)節約が染み付いてしまっているのですよね。

飯田)30年というと、本当に1世代ですよね。

佐々木)いま30歳くらいの人は生まれてこの方、景気が悪い時代しか知らないということですからね。

飯田)隣で頷いている人がいますけれども。

新行市佳アナウンサー)手をあげてしまいましたけれども。私は1992年生まれで、今年(2022年)30歳になるのですが、景気のいい日本をあまり知りません。

飯田)物心ついたころにはすでにデフレの真っ只中という。

新行)バブルは、映画やドラマの世界という感じです。

バブル時代のような勢いのある日本が戻ってきて欲しい

飯田)「お金って使うものなの?」ということになってしまう。

佐々木)そうですよね。

飯田)そうなってしまうとよくはないですよね。

佐々木)「バブルはよかったのか」という議論は別にして、あの勢いのある日本にもう1回戻ってきて欲しいなと思います。路上で1万円札を振りながらタクシーを探すというような。

飯田)「そんな時代があったんだ」と、私も思います。

佐々木)どうすれば景気がよくなるのか。財政出動も含めて、それをやってくれる政治家をみんなで盛り上げようとか、そういうことをやってくれる運動をみんなで盛り上げようなど、社会運動や政治につなげていった方がいいのではないかと思うのです。「生活防衛は疲れてしまったよね」ということだと思います。

「制度としての最低賃金」と「社会全体として給料をどう上げるか」を両方議論するべき

飯田)8月1日に最低賃金についての議論があり、30円余り賃上げするということになってきていますが、ひところはそんなことを言っても、「最低賃金では人を雇えないのだから、とっくにそのレベルを超えてしまっている」ということが言われていましたけれども。

佐々木)最低賃金の議論はもちろん大事なのですけれど、もう少し上の中間層の給料をどう上げるのかという議論もしていかないといけません。最低賃金にばかり目がいってしまうと、「最低賃金だけ払っていればいいのか」という話になってしまう。それはそれで違うのではないでしょうか。

飯田)中間層の給料をどう上げるか。

佐々木)制度としての最低賃金と、社会全体として給料をどう上げていくかということは、レイヤーの違う議論なので、両方やらなければいけないと思います。

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