敵の射程圏外から攻撃できる「スタンドオフミサイル」 この装備化は日本の防衛力を広げる

国際政治学者で慶應義塾大学教授の神保謙が8月5日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。スタンドオフミサイルについて解説した。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

スタンドオフミサイル

防衛力を抜本的に強化し、いわゆる「反撃能力」を含めた検討が進められるなか、防衛省は来年度予算案の概算要求で敵の射程圏外から攻撃できる「スタンドオフミサイル」の早期の装備化や、無人機の早期取得などを盛り込む方針を固めた。

スタンドオフミサイルの装備化や無人機の早期取得 〜5.5兆円規模

飯田)昨日(8月4日)の自民党国防部会のなかで、このような話が出てきました。要求する額としては5.5兆円規模だという数字も出てきています。規模的にはどうですか?

神保)思ったより積み上がらなかったなという印象です。これまでの議論にあった5年以内にGDP比2%規模、10兆円を超える規模の防衛費に持っていくとすると、単純に考えて年間1兆円ずつ増やしていくということになるわけですが。

飯田)いまが5兆円規模ですからね。

神保)しかし、今回の概算要求では、そういう迫力は見えませんでした。もちろん、日本の予算システムではまだ事項要求があり、遊びを残している部分のなかでさらに積み上げることが可能ですし、補正予算などを含めれば、さらに規模が拡大する。そのなかで、全体で増やしていくという考え方があるのだと思います。

飯田)事項要求。

神保)ただ、当然、これから三文書、国家安全保障戦略や防衛計画の大綱などを固めて、それが固まらない段階で予算だけ走るというのも、確かに難しいところがあります。ある程度、どのような装備を調達するか、どのような予算を立てるかというところを見極めた上で、追加要求をしていくことになるのではないかと思います。

脅威圏外からでも標的に対して撃てる能力のあるスタンドオフミサイル 〜戦闘機、潜水艦、フリゲート艦のいずれも中国の方が有利な状況

飯田)少し前までは敵基地攻撃能力という名前で出ていましたが、「スタンドオフミサイル」という射程の長いミサイルが、抑止を考えるときに通常兵器として重要になるのですか?

神保)いまの防衛省によるスタンドオフミサイルの概念の立て方は、敵基地攻撃能力という言い方をしていません。脅威圏外からでも標的に対して撃てる能力を意味しています。

飯田)概念の立て方は。

神保)作戦概念からすれば、いま東シナ海を見ていただくと、海上・航空優勢を日本の自衛隊が常に確保できるとは言えない、厳しい状況です。2022年に報告された防衛白書によると、3月末時点で、中国の第4・第5世代戦闘機は1270機あり、日本の同じ世代の戦闘機は3月末時点で319機なのです。4倍近い数の戦闘機を持っているし、潜水艦についても、近代的駆逐艦フリゲートに関しても、中国が有利になっています。

脅威の外側から長射程で撃ち込めるということが重要 〜対艦ミサイルとしての装備が重要

神保)空間アセットだけではなく、対空ミサイルや弾道ミサイルなど、いろいろな相手の攻撃能力のなかで、日本がどこまで戦えるのかということが重要です。脅威のなかで戦える能力を高めることも重要ですが、脅威の外側から長射程で撃ち込めるということが、さらに重要になってきています。

飯田)脅威の外側から長射程で撃ち込めるということが。

神保)そのなかでのスタンドオフミサイルです。まず12式地対艦ミサイルを射程延長して開発するのですが、それをファミリー化し、艦艇からも戦闘機からも撃てるようにすることで、さまざまなプラットフォーム(撃てる場所)から長射程で攻撃できる能力を確保する。特に対艦ミサイルです。それが重要だというのはその通りだと思います。

中国軍の作戦遂行を阻害できる 〜日本の防衛力を広げる可能性を持つ

神保)ただ、問題は脅威圏外からの運用だけでいいのかということです。前進配備と言うのですが、より遠くの海上で敵の艦艇を攻撃できるような形にすれば、中国軍が作戦遂行をするときの能力を阻害できるのではないか、という運用構想として、スタンドオフミサイルは日本の防衛力の考え方をさらに広げる可能性を持っていると思います。

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