キーウ在住の編集者が語る「ウクライナの現状」 ロシアの軍事侵略から半年が経過

キーウ在住で「ウクルインフォルム通信」編集者の平野高志氏が8月24日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ロシアによる軍事侵略から半年となるウクライナの現状について現地から語った。

ウクライナ侵攻 キーウのメインストリートに並ぶ、ウクライナによって撃破されたロシア軍の戦闘車両=2022年8月21日午前11時2分、ウクライナ・キーウ 写真提供:産経新聞社

2月24日のウクライナ全土へのミサイル攻撃から半年が経過 〜恐怖や怒り、喜びや感動を抱えながら走り続けた

2022年2月24日にロシアによるウクライナへの軍事侵略が始まってから、8月24日で半年となる。これを前に23日、ロシアによって8年前に一方的に併合されたウクライナ南部クリミアの奪還を目指して、ウクライナ政府が各国に連帯と支援を呼びかける国際会議が開かれた。ウクライナのゼレンスキー大統領は、「クリミアの解放は世界的な法秩序の回復につながる」と述べ、ロシアへの圧力を強めるよう訴えた。

飯田)現地では8月24日に日付が変わった直後ということですが、どんな思いでこの日を迎えていらっしゃいますか?

平野)「もう半年経ったのか」ということにまず驚いています。文字通りあっという間でした。2月24日の全土へのミサイル攻撃から始まり、キーウにも侵攻されて、ブチャやイルピンでは大きな被害がありました。マリウポリでのいろいろな出来事などもありました。

飯田)そうですね。

平野)悪いことだけではなく、ウクライナがEU加盟候補国の地位をもらうことができ、キーウ周辺からロシア軍が撤退したという喜びもありました。現在はヘルソン州の原発やクリミアの話などもあります。いろいろな出来事があって、恐怖や怒り、喜びや感動などがあり、それを抱えながらここまで走り続けたという気持ちです。

恐怖から怒りに気持ちが変わってきた人も

飯田)平野さんご自身も、さまざま拠点を移して避難もされました。いろいろな人に出会ったと思います。印象に残る言葉などはありますか?

平野)みんな恐怖を持っていたし、怒りもあったと思うのですが、時間が経つにつれて気持ちが変わっているのです。当初は恐怖ばかりを感じていたのですが、徐々に大きな怒りに変わってきたという人もいますし、まだ前線で軍に入って戦っている人もいます。そういう人たちの言葉も聞くと、やるせない気持ちになりますね。

ウクライナの98%の人が「この戦争に勝利しなくてはいけない」と思っている 〜中途半端に停戦したらまたロシアは攻めてくる

飯田)平野さんご自身は、日本の報道や議論もウェブを通してご覧になりながら、さまざま発信を続けてきました。開戦当初、「早く降伏すべきだ」というような議論が日本で起こりました。8月になり、また戦争忌避の雰囲気が強まったなかで、再びそういう議論が出てきたところもありましたが、ウクライナ国内の人たちはこの先の情勢について、どう思っていらっしゃいますか?

平野)最近、世論調査が出たのですが、ウクライナの98%の人が「この戦争の勝利を信じている。勝利しなければいけない」と思っているのです。

飯田)98%の人が。

平野)1つには、ウクライナ軍がウクライナ側の被害を出していないので、自分たちがどれくらい戦争に勝てるのか、あまり正しく判断できない状況にあるということがあります。

6割以上の人が根本的な勝利をしなくてはいけないと思っている

平野)もう1つ、今回の侵攻は2014〜2015年にロシアによる軍事的侵攻があったときに、ロシアとの間で中途半端な停戦をしたことに原因があると思っている人がたくさんいるのです。いま中途半端に停戦したとしても、以前と同様に、しばらくしたら力を蓄えたロシアが、ロシアに都合のいいタイミングで襲ってくることが目に見えているのです。

飯田)しばらくしたらまた。

平野)ロシアが約束をほとんど守らない、息を吐くように嘘をつく国だというのは皆さんご存知だと思うのですけれども、それはウクライナの人が常々理解していることなのです。ウクライナの人々の間では、クリミアもドンバスも獲り返した形で、「ロシアに対して根本的な勝利をしなくてはいけない」という見方が6割以上にのぼっているのです。

飯田)6割以上の人がそう思っている。

インタビュー取材を受けるウクライナのゼレンスキー大統領=2022年3月1日、キエフ(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

「勝てない」となった場合、ウクライナ社会の大きな失望が及ぼす影響

平野)国際社会からの武器提供は続くと思いますし、そもそも米国のレンドリース(武器貸与)法がまだ行われていないのです。ただ、武器提供がウクライナの勝利に間に合うのか、ウクライナ南部の反攻がうまくいくのかなど、ウクライナの人がいま望んでいるような形で勝つことができるのかどうか、判断が難しい状況ですね。懸念しなければいけないところだと思います。

飯田)ウクライナの人たちが望んでいるような形で勝てるかどうか。

平野)もし勝利できなかった場合、いまは勝てると思っているけれど、「勝てない」と気付き始めたときに、ウクライナ社会で生まれる可能性のある大きな失望や落胆が、悪い影響を及ぼしていくかも知れないという心配はあります。

「クリミア・プラットフォーム」で各国が「ウクライナのクリミア奪還の立場を支持する」という形ができたことはウクライナにとって大きい

飯田)そのような危惧などもあり、今回の「クリミア・プラットフォーム」の会議のなかでも、ゼレンスキー大統領は支援を訴え、日本からも岸田総理がメッセージを出しました。この辺りのことについて、ウクライナの方々はどう受け止めていますか?

平野)とても感動していたと思います。去年(2021年)も46の国や国際機関が代表者を送って成功したと言われていたのですが、今年はさらに60の国や機関が代表を送っています。しかもG7からはアメリカを除き、岸田首相も含めて6ヵ国の首脳がメッセージを出しています。

飯田)6ヵ国の首脳が。

平野)ウクライナが「クリミアも奪還する」というメッセージを出したところで、改めて多くの国が「クリミアはウクライナ領である」、「いまの戦争の始まりは2014年のロシアによるクリミア占領から始まっている」ということを指摘しています。原則的に、いまのウクライナのクリミア奪還の立場を支持するという形ができた。これはウクライナにとって大きな出来事だったと思います。

8月24日はウクライナの独立記念日 〜ゼレンスキー大統領が演説

飯田)8月24日という日付に関し、ロシアが節目として、いろいろなことをやってくるのではないかという危惧はありますか?

平野)ありますね。ウクライナ政権の治安機関なども警告を出しており、「24日はロシアも狙ってミサイルを撃ってくる可能性があるので、空襲警報が鳴ったらシェルターに逃げてください」と呼びかけています。

飯田)この日付は侵略から半年ということもありますが、もう1つウクライナにとっては重要な意味があるわけですよね。

平野)そうですね。ウクライナの独立記念日なので、ウクライナ国家における最も重要な記念日です。例年ですとキーウの中心部で軍事パレードが行われるのですが、いまは戒厳令下ということで軍事パレードは禁止されています。ゼレンスキー大統領による大きな演説は行われると思います。

飯田)国民に向けたメッセージは、どのようなものになりそうですか?

平野)戦争開始から半年ということもありますし、ウクライナの国がどういうもので、今後どうしていくか。この戦争に勝たなければいけないというメッセージが中心になると思います。いかにウクライナがここまでやってきたかということを伝えるものになると思います。

ウクライナが団結することで勝つことはできるのか

飯田)さまざまな識者の方たちも「長期戦になる」と話していましたけれども、やはり国民の結束が大事になりますか?

平野)国民は既に結束しているのです。最大限結束していると思うのですけれども、「武力対武力」のところで、実際に大国ロシアと真っ向から対峙して領土を奪還できるのか、ウクライナが団結することで勝つことができるのかどうかは、これから先にならないとわからないことだと思います。

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