自然災害を宿命的に抱える日本 48時間前に「避難命令」を出せる政府の権限が必要

ジャーナリストの佐々木俊尚と、衆議院議員の平将明が9月2日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。今後の防災について解説した。

2022年9月1日、徒歩参集する岸田総理~出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202209/01bousai.html)

政府が南海トラフを想定した総合防災訓練を実施

政府は「防災の日」の9月1日、南海トラフ巨大地震の発生を想定した総合防災訓練を実施した。新型コロナウイルスの感染を防ぐため、会議に参加する人数を絞るなどの対策を取り、岸田総理大臣らが被害状況の把握や国民への協力呼びかけといった緊急対応の手順を確認した。

飯田)9月1日は「防災の日」です。関東大震災が起きてから今年(2022年)で99年となり、2023年には100年を迎えます。平さんは衆議院の災害対策特別委員会の委員でもあり、また首都直下型地震などを考えると、東京4区選出という当事者でもあります。内閣府副大臣を務めていたときには、防災についても対応されていたのですよね。

平)やっていました。

内閣府防災が司令塔となって一体的に対応できるようにする ~政治家の役割も重要

飯田)毎年のイベントのようになっていますけれども、訓練する意義というのは当然ながらありますか?

平)各省庁がいろいろな対応をするのですが、縦割りになりがちなので、内閣府という役所、内閣府防災が司令塔となって一体的に対応できるようにするということです。実際に対応するのは自治体や都道府県ですので、省庁の縦割りと合わせてレイヤーが3つ重なっているものですから、一体的にどう動くかという確認が必要なのだろうと思います。

飯田)一体的にどう動くかの確認が。

平)やはり政治家の役割も重要です。私が南海トラフの総合防災訓練のヘッドをやったときも、通信が途絶するものですから、衛星と直通してつながる電話の端末を自衛隊のヘリを使って県庁に届けるという想定があったのです。

飯田)自衛隊のヘリを使って。

平)事前に置いておけばいいことではないですか。「でも高いから」という話なのだけれども、南海トラフや首都直下地震を考えたとき、衛星電話を各自治体に配置するコストと、出てくるアウト感を考えれば、それは置くべきです。そういうところについては、政治家が見て指示することが大事だと思います。

浸水被害では浸水想定区域に住む人が全人口の4割 ~関東では富士山噴火のリスクも

佐々木)予想外の事態が多すぎて、どこまで対応すればいいのかよくわからない。以前、NHKが浸水被害はどのくらいあるのかということを調べていましたが、浸水想定区域に住んでいる人は、全国の自治体データを集計すると4700万人であり、人口の4割くらいに達するのです。

飯田)人口の4割。

佐々木)「いったいどこに住めばいいのか」と思います。地震の可能性、南海トラフなどは広大なエリアではないですか。水害の可能性を考えると、国土は広いと言っても6割が森というような国で、みんな平地にへばりついて暮らしているのに、水害や地震が襲ってきたら「どこまで対処すればいいのか」ということは、政治としても難しいですよね。

平)富士山が噴火するリスクもあります。

佐々木)そうですよね。

飯田)関東に関してはそうですね。

首都直下型地震や南海トラフには、衛星コンステレーションやHAPS(空飛ぶ通信基地局)やシェアリングエコノミーの民泊などで対応する

平)日本は自然災害を宿命的に負っています。目の前の対応と合わせて、かなりドラスティックな発想の転換が必要だと思います。電気の途絶、通信の途絶への対応を政府が行うのではなく、みんなとりあえずバッテリーは持っておきましょうという考え方もあります。

飯田)手元に置いておく。

平)有事だと、携帯の通信は基地局が攻撃されるから、ロシアによるウクライナ侵攻で話題になっている「衛星コンステレーション」などで、通信を直接つながなければならない。しかし、すぐにはできないから、成層圏を太陽電池で3ヵ月くらい飛んでいられる空中基地局のようなものがあるのですが、そういうもので首都直下地震や南海トラフに対応する。あとは「シェアリングエコノミーの民泊」のようなもので、常日ごろから「防災民泊」としてみんなでいろいろなところへ行くことも必要かも知れません。

飯田)多拠点生活のような。

平)いろいろぐるぐる回って、もし被災したら、被災地から全国に散らばるという防災民泊のようなものを、日ごろから国家的、国民的にやっていくことが必要なのではないでしょうか。

2022年9月1日、記者会見を行う岸田総理~出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202209/01bousai.html)

SpaceXの衛星インターネットサービス「Starlink」でT-Mobileのスマホが全米どこでも利用可能に ~日本でも開発するべき

佐々木)公共ということがありますけれども、公だけでは対応しきれないので、共の部分、あるいは自助努力などで何とかカバーしなくてはいけないですよね。基地局だと、テスラのイーロン・マスク氏が……。

平)衛星コンステレーションですね。

佐々木)「Starlink」という通信衛星を全世界に展開して、どこでも使えるようになるということです。アメリカで先日発表されましたが、「どんな僻地でも必ず現状の携帯でつながるようにしたい」というようなことを言っていました。

平)イーロン・マスクさんのSpaceXや、Amazonなどがあるのですが、我々は日本製でコンステレーションをやるべきだと思っています。一応レーダーは衛星コンステレーションでやることになっているのですけれども、通信の部分はまだ計画がないのです。

佐々木)NTTドコモのような民間企業ですか?

平)民間ですね。民間とJAXAが共同で行う。そのインフラを、例えば東南アジアの人たちなどにも使ってもらうようなやり方がいいのではないかと思います。

災害時、48時間前に避難命令を出せる法整備が必要

平)あとは政府の権限を強めなくてはいけません。例えば台風が来て荒川が決壊すると、「100万人が避難する」などという世界なのです。それに対応するためには、48時間前くらいに避難命令を出せるよう、政府の権限を強くしないといけません。

佐々木)緊急事態令などが出せるような制度の問題がありますね。

平)その法整備をしっかりしなければいけないということは、問題意識として持っています。

飯田)有事の際は国民保護法という枠組みがありますけれども、都道府県や市町村が実際に動くようなところは、法整備が必要ですか?

平)例えば100万人~200万人の避難について、東京23区で「区長が出せますか」ということです。

佐々木)そうですよね。

平)やはり総理しか出せないでしょう。現状は防災大臣が出すのだろうと思います。しかし、雨が降ってJRが止まってから避難指示を出されても困るのです。いまは台風の進路についてもスーパーコンピューターを使い、かなり精度が上がっているので、空振りでもいいから48時間前に指示が出せる仕組みをつくる必要があると思います。その法整備が必要です。

災害時には衛星やデジタルをフル活用する

佐々木)荒川が決壊すると、地下鉄に水が流れ込むという危険性があり、それをどうするのかということも言われています。

平)1週間くらい水が引かないとも言われています。そうするとゼロメートル地帯が孤立するのです。そういった意味では個々の備えも大事ですし、さらに衛星やデジタルをフル活用することが大事だと思います。

佐々木)パキスタンでいま大変な水害が起きていますが、すべてが大きな海になってしまって、水を汲み出す先の陸地がないということです。まさに東京などは低地ですから、そういうことが起きるかも知れないですよね。

ウクライナ情勢によって、世界各国が衛星コンステレーションの重要性を確認 ~その衛星を狙って宇宙で戦争が始まる可能性も

飯田)災害時にどんな仕組みで動かすかということは、有事の際、例えば安全保障的な事態が起きたときも、同じ仕組みで対応できるのでしょうか?

平)衛星コンステレーションや、HAPSと呼ばれる携帯電話の空中基地局などは、自然災害のみならず、今回のウクライナでの事例を見ても、世界各国が衛星コンステレーションの重要性を考えています。そうなると、今度は宇宙から戦争が始まる可能性が出てきます。

飯田)それを狙って、まず壊しにいくという。

平)サイバー空間以前に宇宙で戦争が始まり、その戦いがサイバー空間に移って、リアルな戦争が起こる可能性もある。嫌な話ですけれども、いろいろと想定しておく必要があると思います。

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