「偽情報」への対応が遅れる日本の現状

東京大学先端科学技術研究センター特任講師の井形彬が9月7日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。「国際ビジター・リーダーシップ・プログラム・プロジェクト」について解説した。

※画像はイメージです

「国際ビジター・リーダーシップ・プログラム・プロジェクト」

アメリカのブリンケン国務長官はインド太平洋の安全保障を強化するために「国際ビジター・リーダーシップ・プログラム・プロジェクト」を9月から開催する。日米豪印クアッド諸国の有識者をアメリカに集めてディスインフォメーション(偽情報)やインフルエンスオペレーション、外国干渉への対策を考えるプロジェクトである。

新行) このプロジェクトには井形さんも参加されます。井形さんはこのプロジェクトでアメリカ国務省に招待され、1ヵ月ほどアメリカの各都市を転々とするそうですね。

井形)明日(9月8日)から4都市に行ってきます。

新行)詳しく教えていただけますか?

井形)ワシントンD.C.、セントルイス、シアトル、カリフォルニアと、ほぼ1ヵ所に1週間行きます。日本とアメリカ、インド、オーストラリアの4ヵ国……クアッドの有識者が、ディスインフォメーションやインフルエンスオペレーションへの対策をどうすべきか、都市をツアーしながら考えるというようなプログラムです。

メールでいきなりのオファー

新行)どのように井形さんにオファーがきたのですか?

井形)実はいきなり3月~4月くらいに“congratulations”と、「あなたは選ばれました」という内容のメールがきたのです。スパムかと思って消そうとしたのですが、よく読んでみたら国務省からのメールだったのです。

新行)よく見たら。

井形)すぐに電話して、「何も応募していないのですが、“congratulations”というメールがきました。これは何ですか?」と聞いたら、「こういうプログラムをやるのでぜひ来て欲しいのです」と言われました。

新行)メールを消さなくてよかったですね。

ディスインフォメーションに対してどのように対抗すべきか ~みんなで考えるプログラム

新行)各国、クアッドを中心として、偽情報や外国干渉への対策を考えるということですけれども、最近だと岸信夫前防衛大臣をめぐる偽ツイート問題がありました。あれも偽情報ですよね。

井形)あれがまさに偽情報ですね。あのようなことが英語のツイッターやFacebookで日常的に行われているのです。

新行)日常的に。

井形)今回のロシアによるウクライナ侵攻を受け、ロシアに対して好意的なディスインフォメーション(偽情報)がソーシャルメディアに氾濫するようなことがあります。また、中国もよく使っていると言われていますが、新疆ウイグル自治区で起きている人権侵害に対し、「そのような事実はない」というストーリーをSNS上で出していく。

新行)偽の情報を。

井形)ディスインフォメーションに対して「どう対抗すべきか」ということを考えると、なかなかいい手立てがないのです。そのため、「どういうことならばできるのかをみんなで考えましょう」というようなプログラムとなっています。

各国のこれまでのディスインフォメーションへの対策

新行)各国はこれまで、どのような対策を考えてきているのでしょうか?

井形)最終的には一般国民が批判的な思考能力を培うことによって、「こんな情報が出てきたけれども、本当に信頼してよいソースなのか」、「このロジックはおかしい」などと判断できるようになることが、根本的な解決策になると思います。

新行)一般市民が判断できることが。

井形)いまからそれを始めても、「効果が出るのは何十年後になるのだ」という話になります。そこで「ファクトチェッカー」という形で、「このソースは信頼できます」、「できません」、「その理由はこういうことです」というものを地道に言い、チェックするような団体がつくられています。

新行)組織をつくって。

リツイートする前に警告が出るアメリカ

新行)私たちもSNSで「ああ、そうなのだ」と思って気軽な気持ちでリツイートしてしまったり、偽情報の拡散に意図せず加担してしまう可能性もあるということですよね。

井形)アメリカではツイッターと連携して、記事を読む前にリツイートしようとすると「あなたは本当にこの記事を読みましたか?」というような警告が出ます。また、「このアカウントは中国政府に関連するアカウントです」、「アメリカ政府に関するアカウントです」と明示することによって、「この情報は政府から出ているのだ」と一般の人にわかりやすくし、透明性を高めるような対策を取っています。

小さいころからの教育も必要

新行)フィンランドでは子どものころから偽情報について学ぶ授業があり、教育でそういう思考を身に付けてもらうという取り組みも行っています。

井形)そのような教育も必要になると思います。メディアリテラシーについて学び、偽情報があることを理解する。ソーシャルメディアも含めて、どういうところから情報を取ってくるべきなのかというようなレッスンは、日本でも行うべきだと思います。

遅れている日本の対応

新行)現状、日本の偽情報や外国干渉への対策はどうなっているのですか?

井形)ディスインフォメーションやインフルエンスオペレーションに対して、日本政府は対応が遅れているのではないでしょうか。

新行)遅れている。

井形)クアッドを見ると、アメリカは頑張っていますし、オーストラリアでは省庁間で連携するようなメカニズムをつくり、インフルエンスオペレーションや外国干渉に関する担当者を付けて、戦略までつくっています。日本にはまだそれがないという状況です。

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