ロシアの衰退が加速化する可能性が高いプーチン大統領の警告「ロシア産ガス価格に上限設定なら供給停止」

外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が9月9日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。石油とガスの供給停止を警告したロシアのプーチン大統領について解説した。

ロシアのプーチン大統領(ロシア・サンクトペテルブルク) AFP=時事 写真提供:時事通信

ロシアのプーチン大統領が石油・ガスの供給停止を警告

ロシアのプーチン大統領は9月7日、ウラジオストクで開かれた東方経済フォーラムで演説した。プーチン大統領はロシアへの制裁を強める先進7ヵ国(G7)や欧州連合(EU)加盟国に対し、ロシアを孤立させることは「不可能だ」とし、ロシア産の石油とガスの輸入価格に上限を設ける国に対しては供給を停止すると警告した。

新行)2日には先進7ヵ国がウクライナに侵攻するロシアの軍事費の資金源を断ち切るために、ロシア産石油の輸入価格への上限設定を早急に進める方針で合意しました。またEUでも7日、フォンデアライエン欧州委員長がロシア産石油とガスの輸入価格に上限を設けることを加盟国に提案していたということです。

プーチン大統領の発言の2つのポイント

宮家)2つポイントがあります。1つ目は、ついにプーチンさんはルビコン川を渡ったということです。越えるべきではない一線を越えてしまった。2つ目は、これがロシアの衰退を加速させるということです。

新行)ロシアの衰退を加速させる。

輸入価格に上限を設ける国に対して「ロシア産石油とガスの供給を停止する」 ~越えてはいけない一線を越えてしまったプーチン大統領

宮家)まずルビコンですが、戦争にはお金が掛かります。お金がある国とない国では、戦争が続く長さが違います。例えばパレスチナ問題ではイスラエルとアラブが戦いましたが、イスラエルもパレスチナも石油を持っていませんでした。そんな場合に大国であるソ連とアメリカが集まって話せば、戦争は終わるのです。

新行)大国が集まって話せば。

宮家)ところがイラン・イラク戦争は両方とも産油国ですから、8年続いたのです。やめられないしやめたくない。また、やめないだけの収入があるのです。仮に制裁を受けてもブラックマーケットで原油を売るわけです。安く手に入るなら儲かるので、当然、買う人たちはいます。となると、エネルギーを持っている国は戦い続けられるのです。いい意味でも悪い意味でも。

新行)エネルギーを持つ国は。

宮家)日本に近いところでは、ベトナム戦争がありました。この戦争も長かったですが、ベトナムも中国からの支援を受けていました。エネルギーもしくは資源を持つ国は強いのです。

新行)なるほど。

宮家)しかし、そうは言ってもエネルギーは売らなければいけない。ずっとブラックマーケットで売るわけにもいかないので、純正のマーケットで売る必要があります。ロシアも当然のことながら生産量を増やして、供給先を拡大し、ヨーロッパをロシアのエネルギーに依存させるためかも知れませんが、「ノルドストリーム2」のようなパイプラインをつくり、欧州をがんじがらめにしようと思っていたところです。

ロシアと経済活動をする国が減少する ~西側と貿易ができなくなり、ロシアの衰退が早まるだけ

宮家)でも、エネルギーは「供給する」という保証があるからこそ、みんな買うわけです。売るか売らないかわからないガソリンスタンドでは誰も給油しませんよね。行ったら「きょうはダメです」というわけにはいきません。

新行)そうですね。

宮家)となると、ロシアが「供給しないかも知れない」と言った途端に、「ではお宅からは買わないよ」ということに長い目で見ればなるわけです。それって本当はタブーであって、いままで東欧諸国に対し締め付けるためにときどき供給を止めることはあっても、こんな形で公言したことは私が知る限りありません。ということは、ロシアはルビコン川を渡ってしまったということです。

新行)なるほど。

宮家)これをするとどうなるかというと、先程申し上げた通り、ロシアと真面目に経済活動をする国が減るのです。途上国がやると言ったらそれまでかも知れませんが、西側の国々と貿易ができなくなったら政治的影響力もなくなるし、先端技術も来なくなり、ロシアの衰退が早まるだけです。

新行)ロシアの衰退が早まる。

宮家)「ついにやってしまったな」と思います。プーチンさんは今も戦争に勝つ気でいるのでしょうが、私はむしろ終わりが見え始めてしまうくらい間違った判断だと思います。しかし、これ以上プーチンさんにできることはないでしょう。

新行)できることはない。

宮家)ないでしょうね。いまも原油は売っているのですよ。みんながどれくらい安く買っているかは知らないけれど、中国もインドもみんな買っています。しかしこれが長続きするとは私は思いません。1~2年は続くかも知れないけれど、ロシアの将来を考えたら、いいやり方ではないと思います。殿ご乱心ということですよ。

このままだとロシアの状況が悪くなるので「いまのうちにやってしまおう」とロシアがウクライナを侵略した可能性も

新行)ロシアの衰退が早まるとおっしゃいましたが、プーチン大統領は衰退することもわかった上で、このようなことを言ったのでしょうか?

宮家)そうかも知れませんね。なぜ今回ウクライナに入っていったかということですが、ものすごくロシアが強くて何でもできて影響力があった時代は、むしろそんなことをしなくてもいいわけです。

新行)ロシアが強ければ。

宮家)他国に侵入したり理不尽なことを行うのは、追い詰められている、もしくは将来の状況がおかしくなると思うからこそ、「いまのうちにやってしまおう」と判断したという説もあります。

戦略的な判断ミスでロシアの衰退が加速化する可能性は高い

宮家)私はこの説に考え方が近いのですが、プーチンさんの動きを見ていると、このままではロシアにあまりいいことがない。だったらまだ国力があるうちにやってしまおうと焦った。戦略的な判断ミスですが、そういう危険なものを感じます。

新行)戦略的な判断ミスで。

宮家)これからロシアが衰退していくことを直感的に、もしくは肌で感じていて、最後の手段を使ったという見方もできないわけではありません。そういう意味では、プーチンの間違った判断によってロシアの衰退が加速化する可能性は高いと思います。

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