日本国民は「一致結束して戦い抜くのだ」という覚悟を持てるか ウクライナと同じことが日本に起きても不思議ではない

元内閣官房副長官で慶應義塾大学教授の松井孝治が9月12日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ウクライナ情勢について解説した。

ウクライナ侵攻半年 首都キーウの中央通り プラカードや旗を掲げて歩く子供たち=2022年8月24日午前11時39分、ウクライナ・キーウ 写真提供:産経新聞社

ウクライナ軍が東部ハルキウ州で攻勢、重要拠点イジュームを奪還

ウクライナのゼレンスキー大統領は9月11日の動画声明で、ウクライナ軍が東部ハルキウ州でロシア軍の補給路となっている重要拠点のイジュームを奪還したと宣言した。ウクライナ軍の反転攻勢が続いている。

飯田)ハルキウでの攻勢は数日の間に約50キロと、記録的なペースで進んでいると言われています。局面は変わってきていますか?

松井)専門ではないのでわかりませんが、これほど急速に物事が展開すると「何かあるのではないか」とか、逆に「退いているのか」などとも思ってしまいます。情報戦もありますし。

飯田)展開が急速だと。

松井)これはロシアの侵攻ですから、ウクライナが反転攻勢に入っていることは、私たちからすると「頑張ってくれている」と感じます。他方で気になるのは、あまりウクライナが有利になると、ロシアが窮余の一策で核の使用に及ぶのではないかということです。追い込みすぎないことも含めて、我々は状況を見ていかなければならず、気になります。素人の憶測でこんなことを言ってはいけないのですが。

和解に向けてどう日本は動くべきか ~円安も進み、日本の国益をどう守るかということも

飯田)2月24日に侵略が始まったときから、ロシアは核のオプションを具体的に研究しているし、使うのではないかとも言われています。そうすると支援のあり方も変わってきます。

松井)ウクライナとしては絶対に許してはいけない侵攻なので、跳ね除けていかなければならない。それを国際社会が応援しなければならないのは事実なのですが、他方で、フェードアウトさせる解決策をどのように持つのかということも考えなくてはいけません。

飯田)どのように終結させるか。

松井)日本は単に応援する、あるいはロシアに制裁をかけるだけではなく、最終的には「和解に向けてどう我々が動くか」ということを視野に入れるべきです。ロシアの無法な侵略を許すような融和主義ではないということが、日本の進むべき方策だと思います。

飯田)日本が進むべきは。

松井)欧米が先行していますが、これだけ円安が進み、利上げもできず150円と言う人もいるなかで、日本にとっての国益をどう守るのか、とても難しい局面に入ってきていると思います。

ウクライナを見て、日本が「侵略を受けないためにはどういう対応が必要か」ということを考えなければいけない

飯田)ロシアの力による現状変更を許してはいけないということは、核を持って力による現状変更を思考しているのではないかと思われる国が周りにたくさんある日本の状況を考えると、ウクライナ情勢がどうなっていくかは他人事ではないと思います。

松井)そうです。冷戦がいまから30年前くらいに終わって、全面的な国家間の戦争がなくなった。テロとの戦いや紛争というレベルでは、世界各国のなかで紛争は起こっているから、それをどう抑え込むかということを考えればいいと思っていた。

飯田)冷戦が終わって。

松井)しかし、今回のことで全面戦争が起こり得るということを再認識することになったのです。台湾海峡問題でいろいろな国々の代表団、特にアメリカのペロシさんの訪台がきっかけとなり、中国は現状変更をしているわけです。従来の線から明らかに踏み出して演習を行っている。

飯田)そうですね。

松井)いつ何が起こってもおかしくない状況です。核の使用も含めた全面的な戦争が、架空の脅威ではなく、現実の脅威であることは事実であり、我々はそれをどう抑止するのか。

飯田)現実の脅威をどう抑止するか。

松井)日本がもし侵略を受けたときに、戦い抜く覚悟が日本にあるのか。ウクライナはゼレンスキー大統領への批判もあるけれど、ここまで3日で落ちると言われていた状況を戦い抜いているわけです。我々に同じことが起きたとき、我々は戦い抜けるのか。戦い抜くという覚悟がないと与し易しと思われて、現状を変更され、尖閣を獲られるということが起こり得るのです。

飯田)我々に戦い抜く覚悟がなければ。

松井)「GDP比2%」という基準にこだわるべきではないけれど、「日本は簡単には落とせない」と思わせることが平和につながると思うのです。

飯田)簡単には落とせないと思わせることが。

松井)未だにお花畑的な平和論があるけれど、弱いものが侵略されるのです。国家として、ウクライナの動きを我が身に振り返ったときにどうするか。侵略を受けないために、どういう対応が必要かということを考えなければいけないと思います。

ロシアが実効支配するウクライナ南部クリミア半島の町を移動するロシア軍の装甲車両(タス=共同) 撮影: 2022年2月24日 写真提供:共同通信社

「一致結束して戦い抜くのだ」という覚悟を日本国民が持っていることを示さなくてはならない

飯田)かつてからあった「基地があるから狙われる」という考え方は、侵略する側……今回はロシアですが、基地どころか民間の空港から狙ってきて、そこに空挺部隊を落とそうとするなど、こちらが考えているより遥か先の手段を使ってくる。それに対して「やらせない」ために、何をすべきかということをリアリズムで考えなければいけない。

松井)「国民の命を守ることが第一だから、和平を求める」という国が狙われやすいことは事実です。そうではなく、「一致結束して戦い抜くのだ」という覚悟を、日本国民が持っているのだと示さなければならない。

国防に関して、与野党の心が分かれてはいけない

松井)もちろん、かつてのような軍国主義を礼賛したり、賛同するものではありません。まったくないけれど、国民が戦い抜くという、その一致団結した思いを持つ必要があります。

飯田)軍国主義を礼賛するのではなく。

松井)最近の風潮では、何かにつけて「軍事費を増強する」と言うと、それに反対することで有権者にアピールする。程度の差はあっていいのです。もちろん、「2%の目標を掲げるか掲げないか」という議論はあっていいけれど、国防に関しては、与野党の心が分かれて「平和を求めるのだ」という声が高まると、「この国はそういう国だ」と思われてしまう。そう思われることが怖いのです。

ウクライナで起きていることが日本で起きても不思議ではない

飯田)かつての東西冷戦下で、自民党と社会党が対立していたのにはそういう論立てがあって、その部分で国内の工作もやりやすい国が周りにありました。しかし、いまはそんなことを言っている場合ではないわけです。

松井)「アメリカがどこまで守ってくれるか」ということも考えなくてはいけません。もちろん、日本の外交当局もコミットメントを取るために懸命にやっているけれど、リアルな戦闘が起こった場合、中国の国力が増していますから、従来のようにアメリカの核の傘に頼っていればいいという発想ではいけないと思います。

飯田)いまや。

松井)核兵器不拡散条約(NPT)の問題についても、岸田さんは被爆地の選挙区をお持ちだから、どうしても理想を追求される。それは宏池会の伝統でもありますし、悪いことではないのですが、あまり理想論だけに走ってしまうことはよくありません。

飯田)理想論に走ってしまうと。

松井)一般の方と話していると、ウクライナの報道があっても「あれはあそこの話」と、別世界の問題として見られがちなのですが、政治家がきちんと有権者に話すべきです。悲劇を繰り返してはいけないと思います。

飯田)常任理事国で核を持ち、しかもそれをちらつかせる。そのときにアメリカがどう支援するのかということは、ウクライナを日本に置き換えれば、まったく同じことが起きても不思議ではないでしょうね。

松井)相手が常任理事国ですから、国際社会を味方につけるとか、「国際社会が諸国民を信頼して」と言っても、その諸国民に拒否権があるわけですから。そういう国が相手になったときに、国際社会だけでは守りようがないです。

関連記事(外部サイト)

  • 記事にコメントを書いてみませんか?