アメリカが太平洋島嶼国との首脳会議を開く契機となった「ソロモン諸島での一件」

日本経済新聞コメンテーターの秋田浩之が9月29日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ワシントンで行われるアメリカと太平洋島嶼国との首脳会議について解説した。

【米バイデン大統領帰国】米軍横田基地に到着し、大統領専用機に乗り込むバイデン米大統領=2022年5月24日午後、東京・米軍横田基地 写真提供:産経新聞社

アメリカ、太平洋島嶼国との首脳会議を初開催へ

アメリカ政府は現地9月28日~29日の日程で、太平洋島嶼国との初の首脳会議を首都ワシントンで開く。南太平洋地域で影響力拡大を図る中国を念頭に、首脳会議を通じて島嶼国との関係を強化する考え。

飯田)日本は「島サミット」を行っていますが、島サミットに近いものですか?

秋田)そうですね。日本の方がアメリカよりも早く進めてきたと思いますが、ようやくという感じでしょうか。

太平洋の島々に投資する中国を念頭に関係強化を ~このままではオーストラリアが孤立

飯田)オーストラリア、日本、ニュージーランド、イギリス、ソロモン諸島、フィジー、キリバスなどの国々が招待されていて、インドもオブザーバーとして参加します。

秋田)中国は太平洋の島々を援助し、投資しています。それだけではなく、今年(2022年)4月にソロモン諸島と安全保障協定を結ぶなど、経済的、安全保障的に地図上を赤く染めるような動きをしているのです。

飯田)地図上を赤く染めるような。

秋田)そうなると、オーストラリアは孤立してしまいます。オーストラリアはアメリカの同盟国でもありますので、アメリカから見ても、そういう状態は避けなければいけない。もう1回経済的にも安全保障的にも「テコ入れしましょう」ということになっているのだと思います。

重要な位置にあるソロモン諸島 ~この周辺を獲られるとハワイやグアム、日本の基地しか使えない

飯田)地図で見ると、オーストラリアとハワイ、グアム辺りに線を引くと、ちょうど間にソロモン諸島があります。だからこそ、先の大戦で帝国海軍はここを獲りに行った。

秋田)そうですね。中国がやっていることは、旧日本軍がアメリカとオーストラリアの連合国に対抗するためにやったことと、偶然か必然かはわかりませんが似ています。

飯田)そうですね。

秋田)日本も第一次世界大戦で、戦勝国としてドイツが持っていた南太平洋の一部を、まずは信託投資という形で支配下に置き、やがてそこに海軍基地をつくるわけです。

飯田)海軍基地を。

秋田)そこから、ガダルカナル島の戦いもありますが、ソロモン諸島や南太平洋をめぐって日本とオーストラリアとアメリカが戦ったわけです。ここは生命線なのです。ここを軍事的に抑えれば、アメリカはオーストラリアを基地として使えません。使えるのはハワイとグアムしかない。そうなると、飛石でしか基地が確保できなくなるのです。

飯田)ソロモン諸島を獲られてしまうと。

秋田)日本はそういう形でオーストラリアを孤立させようとして、南太平洋に出ていったわけです。中国は、もちろんそこまで考えているとは思いませんが、台湾海峡でもしも戦争になってしまったときは、南太平洋に中国の基地がたくさんある。そうなれば、アメリカはオーストラリアと連携しづらくなります。ハワイやグアム、日本の基地しか使えなくなってしまう。取材していると、そこを懸念している軍事専門家が増えている気がします。

ソロモン諸島などを自分の安全保障の勢力圏にしようとしている中国

飯田)台湾有事になれば、日本のシーレーンも影響を受けますが、オーストラリアの南を迂回するとソロモン諸島の辺りを通ることになります。

秋田)経済的に中国が進出して、古い飛行場を新しくするなど、インフラを近代化するのはいいことだと思います。しかし、西側の警戒が強まったのはやはり、安全保障協定を結び出したことです。

飯田)ソロモン諸島と。

秋田)しかも、それを結んだソロモン諸島が2022年8月、アメリカの沿岸警備隊の巡視船が「寄港させて欲しい」としたのを拒否しました。

飯田)そうですね。

秋田)そうなると、単に「インフラを近代化してあげます」ということではなく、自分たちの安全保障の勢力圏にしてしまうということになります。そういう疑念が、「巻き返さなければいけない」という今回のアメリカの動きにつながっていると思います。

きちんとケアしていなかったアメリカ ~その隙間を中国に突かれた

飯田)伝統的には、南太平洋諸国は英連邦の一部だったところが多くあります。オーストラリアとの結びつきは大きかったですよね。

秋田)もともとそうですし、オーストラリアの右側の方に行けば、フランス領土があります。フランスはそこに太平洋艦隊を置いているわけですから。

飯田)ニューカレドニアに……。

秋田)本来であれば、欧米との結びつきが強い地域だったわけです。しかし、オーストラリアは一生懸命やっていましたけれども、アメリカもきちんとケアしていなかったのでしょうね。アメリカは大使館も置いていなかった地域があるので、慌てて大使館をもう1回つくっています。

飯田)間隙を突かれたところがありますか?

秋田)そういう感じが、少なくともアメリカから見ればあるのではないでしょうか。安全保障にまで手を出したところが目覚まし時計になったのですね。

いまからでも間に合わないことはない

飯田)いまからでも間に合いますか?

秋田)いままで戦略的に何もやってこなかったところから始めるので、100%のゾーンに近いような効果が表れると思います。間に合わないということはないでしょう。

飯田)日本やオーストラリアなど、先行して動いていたところと連携していく。

秋田)そういうことが大事だと思います。

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