「賃上げ」は具体策を検討して上がるものではない 高橋洋一が指摘

数量政策学者の高橋洋一が2月22日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。賃上げをめぐる実務者協議について解説した。

2023年1月4日、冒頭に発言する岸田総理~出典:首相官邸HPより(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202301/04kaiken.html)

自民・公明・国民民主が賃上げをめぐる実務者協議

自民、公明、国民民主3党は2月21日、賃上げ実現に向けた具体策を検討する実務者協議を国会内で開き、政府と経済界、労働団体による「政労使会議」の早期開催が望ましいとの認識で一致した。政労使会議はおよそ8年ぶりとなる。

飯田)子育て支援についても実務者協議を行ったということです。政労使会議が実現すれば、およそ8年ぶりに開かれることになります。

賃上げは失業率を下げなければできない ~具体策を検討してどうにかなるものではない

高橋)賃上げというのは、具体策でどうにかなるような話ではありません。マクロ経済が重要で、失業率を下げなければ賃上げは難しいのです。失業率を下げる政策を進めていないから。

飯田)失業率を下げる政策を進めていない。

高橋)主に金融政策で失業率は下げられるのだけれど、多くの人はそれがわかっていないのだと思います。何かの手当でできると思い込むのですよ。

人手不足にならなければ企業も賃上げはしない ~失業率が下がれば自ずと賃金は上がる

高橋)そういうものではないのです。企業側も、人手不足にならないと賃上げするインセンティブにならないですから。

飯田)賃金を増やさないと集まってくれないという切迫感。

高橋)そうです。そういうことがない限り、賃上げはしないですよ。賃上げと失業率は関係が深い。失業率が下がれば、自ずと賃上げされるのです。よく賃上げの話で「何%」と言うではないですか。安倍元総理にもよく聞かれましたが。

飯田)どのくらい上げればいいか。

高橋)簡単な話で、前年の失業率から大体計算できるため、安倍さんには「このくらいならみんな文句を言わないだろう」という数字を言っていました。

飯田)そうだったのですね。

高橋)でたらめを言っているわけではなく、「このくらいの失業率であれば、このくらい賃上げしないと人が集まらない」という数字を言っていただけなのです。

賃上げは労働市場で決まる

飯田)定期昇給分とベースアップを合わせて「どのくらい」かを考える。大体、定期昇給分だけで終わってしまうことが多いですけれど。

高橋)どちらでも上がればいいのですよね。それは労働市場で決まるのです。労働市場の価格が賃金なのだから、考えてみれば当然でしょう。

飯田)需要と供給で。

高橋)そうです。労働市場を改善せずに、賃上げだけ行うのは無理です。マクロ的にはまったくできない話になってしまいます。

飯田)仮に一時的に上がったとしても、需要と供給の部分でまた戻ってしまう。

企業側はコストが掛かる賃上げは最もしたくない

高橋)でも賃金は、一時的に上がることはありません。少しでも上げるのは嫌だから。

飯田)企業側からすればコストが掛かる。もともと最も上げたくないものですし。

高橋)最も上げたくないですよ。だから「言えば上がる」ものではありません。

飯田)そうすると、賃上げで優遇税制すると言われても、効きはかなり厳しい。

高橋)効かないですね。それより失業率を下げ、労働環境において人手不足にする方がいいです。

コロナ禍にならなければ予定通り賃金が上がっていた安倍政権時の金融政策

飯田)その部分では、アベノミクスで金融緩和を行い、失業率が下がってきました。いいときには2%台前半までいきました。

高橋)予定通りです。あそこをキープしておけば、3ヵ月~半年後には賃金が上がるとわかっていたのですが、コロナ禍になってしまったのです。

飯田)そうですよね。

高橋)みんな「失敗だ」と言うのだけれど、ほとんど予定通りに進んでいました。

飯田)コロナ禍の前までは。

高橋)コロナ禍になるなど予想できませんからね。失業率が下がっている状態が半年ぐらい続くと、賃金に跳ね返ることは過去のデータからわかっていたのです。

飯田)かつては反転するところの失業率の値が3%を切ってきたら、そうなるのではないかと言われていましたが、意外と底の底があったような感じでしたね。

高橋)日本銀行は「3%台半ばが底だ」と言っていましたが、まったくの計算間違いでしたね。私は「2%半ば」だと言いましたから、そこは当たっていたのです。

日銀総裁の質疑の際、「NAIRUはいくらだと思うか」と聞いて欲しい ~その答えで金融政策の見通しが見えてくる

高橋)インフレを加速させない失業率の下限を「NAIRU(ナイル)」と言います。学者に対するいい質問だから、日銀総裁の質疑のときに「NAIRUはいくらだと思っていますか?」と聞いたらいいのですよ。日銀総裁が「わからない」と言ったら、それだけでアウトです。すぐに「このくらいです」と言えなければならない。バーナンキ氏はスッと答えましたよ。

飯田)答えてくれれば、大体の金融政策の見通しが本来的には見えてくる。

高橋)普通に計算すると2%前半か半ばになるので、まだ金融引き締めしてはいけないことがすぐにわかりますよね。

失業率の値の底が日本より高いアメリカ

飯田)アメリカの場合は雇用の流動性があるので、インフレを加速させない失業率の値の底は、日本より上なのですよね。

高橋)4%か、4%を少し切るぐらいですね。政策決定者なら絶対に知らなければいけないことです。

飯田)それで説明できるのが、いまアメリカは失業率が3%台半ば過ぎである。

高橋)過熱しています。

飯田)だからインフレがなかなか止まりません。

高橋)過熱していくから、利上げは構わない。日本はそこまで達していないから、「利上げしてはいけない」というのが答えです。NAIRUの数字がわかっていれば、ある程度の金融政策はできます。逆に言うと、わからなければできません。

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