トランプ大統領がゴラン高原のイスラエルの主権承認を表明

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月22日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。ゴラン高原を巡るイスラエル情勢について解説した。

ゴラン高原を訪問するイスラエルのネタニヤフ首相(中央)とグラム米上院議員(手前左)ら(ゴラン高原)=2019年3月11日 写真提供:時事通信

ゴラン高原を巡るイスラエルの情勢の変化

アメリカのトランプ大統領は21日、イスラエルが1967年の第三次中東戦争でシリアから奪った占領地ゴラン高原を巡り、「52年を経て、アメリカがイスラエルの主権を完全に認めるときだ」とTwitterで表明した。ゴラン高原はイスラエルが大部分を占領後、1981年に併合を宣言したが国際的には承認されていない。

飯田)トランプ政権になってから、エルサレムの首都認定に続くものになりますね。

宮家)そうですね。その一環でやっているので、またやったかという感じです。大使館移転の方が衝撃的でしたけれどね。もともと67年に占領した、即ち飯田さんがおっしゃった通り、奪った土地の一部です。国連安保理決議があってイスラエルは占領地から撤退しないといけないことになったのだけれど、いろいろあってシリアとの関係が今も悪く、まだ撤退していない。イスラエルは一時は、ゴラン高原から撤退する気があったと思います。シリアとの問題はゴラン高原の下にある湖の水利権だけが問題として残って、本当は返す気もあったのですが、その後イスラエル内政の保守化が進んで来たので、こうなってしまった。
新聞を読むと、中東で緊張が高まるのではないかと書いてあります。そんなことを言ったって、トランプ政権はずっと前からこんな無茶なことをやっているわけだから、今更激化しないことはないだろうけれど、私はもっと大きな問題があると思っている。

中心都市ラマッラー(2012年)(ヨルダン川西岸地区 – Wikipediaより)

認めてしまえばロシアのクリミア、中国の南シナ海の人工島も同じことになる

宮家)イスラエルの占領を認めたと言うことは、ロシアのクリミアはどうなのでしょうか。中国の南シナ海の人工島はどうなるのでしょうか。これを考えるとアメリカが言っていることは違うじゃないか、二枚舌じゃないかという話になります。クレディビリティがますますなくなるわけですよ。そういう意味でも、トランプ政権は何もわかっていない人たちだなと思う。
でも、本当に分かっていないのは大統領だけで、他の人たちは分かっているのです。分かっていても、誰もトランプさんに鈴を付けられない。残念ながら、彼らの頭のなかにあるのは「ネタニヤフさんはお友達、これから数週間で総選挙がある、いまネタニヤフは劣勢だからね」ということでしょう。でも、もし本当にテコ入れしようと思ってやっているのだったら、とんでもない内政干渉です。しかもそれを天下のアメリカがやるのかということです。中東だけではなく、国際的なレベルで米国のクレディビリティが低下して行く恐れがある。もう、やめてくれないかというのが私の個人的な気持ちです。中東をずっとやって来た人間からすれば、「ゴラン高原が占領地ではなくなっちゃうの? トランプさんは何を言っているの?」とガックリ来るぐらい駄目な米政権の決断だと思います。

飯田)ゴラン高原がこうなると、次はヨルダン川の西岸などに…。

宮家)西岸はパレスチナ人が住んでいますし、少なくともいままでの流れからすれば、二国論、すなわち「イスラエルの独立国家とパレスチナの独立国家を同時に認めてやりましょう」という枠組みのなかで和平交渉をやってきたした。そこでゴラン高原までを併合してこれが全部イスラエル領だなどと米国が言ったら、和平交渉はぶち壊しになります。西岸とガザもあるわけですから。イスラエルはガザは絶対に併合しません。そんなに簡単ではないと思いますから。でも、これで完全に中東和平プロセスは死にますね。

飯田)仲介者が誰もいなくなることになりますか?

宮家)そういうことです。

飯田)日本ではなかなか。

宮家)日本では無理。やらない方が良いです。ここはある程度強制力がないと、中東では誰も言うことを聞かないから。話し合いだけでは解決しません。だけどそのアメリカが善意の第三者のふりをして、一定の解決策を押し付けるというと言い過ぎだけれど、それを裏付けする力が米国にあるからこそ、これまではみんな米国の言うことを聞いて来たのです。だけどそのアメリカが中立的な立場を徐々に変えて行けば、誰も言うことを聞かなくなりますよ。

飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

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