働き方改革〜重要なのは時間ではなく、「自己コントロール感」

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月3日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。4月1日から施行された働き方改革関連法について解説した。


残業の上限規制がスタート〜働き方改革が本格化

長時間労働の是正に向けた働き方改革関連法が4月1日から施行。残業時間の上限規制や、年5日の有給休暇の取得義務などが盛り込まれ、働き方改革が本格的に動き始めている。

飯田)4月からスタートしたのは厚労省の基準の大企業ということです。中小企業に関しても来年からはじまりますが、残業にかなりスポットライトが当たっている感じですね。

佐々木)上限を作って、しかも罰則規定を入れたのは画期的だと言えば、画期的ですよね。有休も取れるようになったし。ただ、この問題は根本的には時間ではなく、「そもそも働くということは何なのだ」という理念そのものをきちんと作れていないところに問題があるのではないかと思います。
起業家の、スタートアップの小さい会社をやっている友人が何人か居ますが、みんな死ぬほど働いているわけです。朝6時くらいに起きて、すぐメールを見て。寝る前までずっと仕事をしています。それで自分のことをブラック労働と思っているかといえば、特段思わないのですよ。何でブラック労働にならないのかと言うと、1日20時間ぐらい働いていますが、楽しそうにやっている。言われてやるからではないわけです。


「自己コントロール感」があるかどうかが重要

飯田)言われてやるからではない。

佐々木)自分が好きでやっているからです。僕も朝から晩まで働いて、土曜日も日曜日も原稿を書いたりしますが、「よし、明日はもうやめだ。山に行こう」と言って登山に行ったりする。要するに自由なのです。いつ何時、自分が登山に行こうが海外旅行へ行こうが自由。自分の労働や日常を自分でコントロールできているかどうか。これが幸せにものすごく重要なことなのです。
以前、神戸大学などの調査で、収入、学歴、自己コントロール感、健康など、4項目くらいで何がいちばん自分の幸せに貢献していますかという調査をしたら、1位は健康で2位は自己コントロール感だったのですよ。

飯田)やらされている感が嫌だと。

佐々木)今回いかに残業時間を抑制しても、「やらされている感」がある限り、いつまでたっても日本人は幸せな仕事の仕方にはならない。逆にツイッターなどを見ていると反論もあって、要するに「残業できないから給料が減っちゃう」と。


残業代がなくなると生活できない

飯田)そうなのですよね。残業代ありきで作っている給与体系のところが多いから。

佐々木)例えば基本給20万円で、プラス10万残業すれば30万入ります。10万円で住宅ローンを払っていて、ぎりぎりみたいな。それが10万減ったらもう生活が成り立たない。これだったら、1日3時間も4時間も残業していたほうがよかったという意見も確かに分かるのです。
結局それは時間の問題では無くて、「自分が好きでやっているかどうか」ということの方が大きいのです。もとをただせば、日本には「社畜」という言葉があるではないですか。会社から言われれば、言われるがまま転勤しなくてはいけなかったり、辛い思いをして単身赴任しなくてはならなかったり、早朝出勤したり、土日に接待でゴルフをやったり。ああいうものが社畜なわけです。これをやめさせなくてはいけないと、90年代終わりから2000年代にかけて派遣法改正とか、いろいろやったではないですか。あれで非正規雇用が一気に増えてしまって、いま4割が非正規雇用という問題になっていますが、当時その旗を振った小泉純一郎首相、あと竹中平蔵さん。それらのグループはいまや極悪人みたいに叩かれていますが、あれは別に非正規雇用を増やして、経済界を潤わせようという発想ではなくて、本来は正社員というものを段々なくして行って、「皆フラットに自由に働けるようにしましょう」ということを目指したものなのです。会社も自由に変われるような、雇用の流動性みたいなものを高める。そうすればみんなが好きに働けるようになるのではないかと。なぜ明日休みたいと思っても休めないかというと、この会社をクビになったらもう生きて行けないと思うからです。

飯田)次がないと。


誰も幸せにならなかった派遣法改正

佐々木)次がないと思うから。いつでも辞められると思えば、「上司が何と言おうと俺は休みます」と言えるわけでしょう。それができないからこうなっているのですよ。だから本来、雇用法制の改革は、「いつでも会社を辞められる。その代わり辞めたら次の勤め先もちゃんとありますよ」という体制を作ろうと考えたのです。当時の90年度の政府は。


就職氷河期世代を救済できる働き方改革が必要

佐々木)でもこれがどうなったかと言うと、結局は正社員を囲って守ったまま非正規雇用だけを増やしてしまって、結果的に働いている人たちの4割は非正規で不安定な生活。残りの6割は正社員なのだけれど、労働時間は長くなり、仕事はきつくなってブラック労働みたいなことをさせられている。誰も幸せにならなかったわけです。

飯田)働き方改革も、例えば零れ落ちた氷河期世代の救済になるのではないかという期待がありましたよね。

佐々木)本当はね。いま経営者たちが人手不足だと文句を言っているではないですか。でも「お前らが欲しいのは人ではなくて奴隷だろう」といった反論があるわけです。安い給料で人が雇えなくなったから困ると言っているけれど、「だったら高い給料を出せばいいではないか」と。高い給料が出せないならば退場してくれという話なのですよね。
就職氷河期世代と言うのは、71〜72年くらいから80年くらいまでですよね。団塊ジュニアとかロスジェネと言われている。この人達の上限が46〜47歳?

飯田)そうですね。

佐々木)下が30代終わりくらい。この世代がまともに就職できないまま年を重ねてしまって、大変なことになっている。優秀な人たちもいっぱいいるのですよ。昔はコンビニのアルバイトは若い人が多かった。最近では外国人も多いですけれど、最近、中年のおじさんがいるのですよ。中年のおじさんでまっとうな、接客も素晴らしくて感じの良い人が、コンビニの店頭に立っているのです。なぜかと言うと、結局正社員になれなかったまま、非正規の人生をずっと送って来た人たちが、いまコンビニでアルバイトしているという状況になっている。この人たちを活用しないで、一体何が人手不足なのだということです。本当に優秀な人がたくさんいるのですよ、いい大学を出ていたりね。ここを変えて、もっと全体の働き方を変えるという、根本からひっくり返さない限りこの問題は無くならないと思います。

飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

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