イギリスのEU離脱問題〜イギリスの政治が失ってしまったもの

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月12日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。EUがイギリスに対して離脱のタイムリミットを10月末まで再延期したニュースについて解説した。

EU特別首脳会議後に記者会見するトゥスクEU大統領=2019年4月11日、ブリュッセル(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

イギリスのEU離脱のタイムリミット、10月の末まで再び延期

EUヨーロッパ連合はブリュッセルで10日に開いた臨時首脳会議で、本来なら本日4月12日、日本時間では13日午前7時に迫っていたイギリスのEU離脱の期限を最大10月末まで再び延期することで合意した。期限の前にイギリス議会が離脱案を承認し、イギリスとEU双方が批准した場合、その翌月1日に前倒しで離脱することになる。また6月にイギリスの事態打開に向けた取り組みの進捗などを点検することでも一致した。

飯田)イギリスのメイ首相はもともと6月末までの延期を要請していたのですが、そんな短期間では決められないだろうということで10月末になったということです。

宮家)10月末にしたからと言って、解決できるとは限りません。EUの多くの国は1年くらい時間をかけてやれという意見だったそうですが、話によればフランスのマクロン大統領がもっと短期でと言っていたそうです。これにはどちらにも言い分があります。「1年延ばしてちゃんとやれよ」という意見に対して、「決断するしかないのだから、早く決めさせろ」という意見。でもイギリスはどちらもダメと思います。なぜならイギリス国内が割れていますから。この状況をよく書いていると思うのが、今日の日経新聞に出ているフィナンシャルタイムズ外交評論トップ、ギデオン・ラックマン氏のコラムです。彼は、いまのイギリスの政治に現実主義、プラグマティズムがなくなったと書いています。メイ首相がいなくなったら、次は誰が来るかと言えばボリス・ジョンソンさんという離脱強硬派、もしくはジェレミー・コービンさんという労働党党首で社会主義の人です。そうすると「え? 他にいないの?」という状態。つまりイギリスは極端に両極化しているのです。そのような状況でイギリスのプラグマティズムは一体どこへ行ってしまったのか。このままやっても3者をまとめる力はメイ首相にない。期限を延ばしても駄目だし、では国民投票をまたやるのか。やって同じ結果だったら、いまと同じ状況にまた戻ってしまう。違う結果、すなわち離脱しないという結果なら、今度はボリス・ジョンソンさん以下強硬離脱派は大騒ぎになりますよ。

飯田)ある意味、国民投票と国民投票がぶつかり合うことになる。

英国の閣議後に記者会見するメイ首相=2019年4月2日、ロンドン(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

EUの存在に大きく影響するイギリスの判断

宮家)今何が大事かと言うと、イギリスの政治が妥協の政治を取り戻して、現実的な判断ができるようにしなければならない。どうも、イギリスはヨーロッパ、大陸になると我を忘れるところがある。要するにイギリスはヨーロッパではないのですよ。我々がヨーロッパと言っているのは大陸のヨーロッパ。フランスとドイツでできているわけです。イギリスはそもそも部外者。EEC(欧州経済共同体)を作り、EUに拡大していったときも、イギリスは途中から入った。だけど水と油、体質が合っていないから、やはりやめてしまう。私の見通しでは、フランスとドイツが頑張っているからEUはまだ持つとは思います。いちばん心配なのが、ギデオン・ラックマン氏も指摘していますが、イギリスがまた変な判断をすると、それがEUにも降りかかり、そして今度はEU自体がおかしくなるということです。
米ソのはざまで生き延びようとしてここまで来たEUだけれど、EUもいまのままで行けるのかと心配になるぐらいです。今回のことはそれくらい大きなインパクトがあるかもしれません。いまはフランスのマクロンさんとドイツのメルケルさんがいるけれども、メルケルさんだってもうすぐいなくなります。マクロンさんだけで大丈夫だろうかと心配ですね。

飯田)これが世界史の転換点になるかもしれない。

宮家)その可能性も十分あります。

 

 

飯田浩司のOK! Cozy up!
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