日米貿易交渉〜世論もセットにして交渉するべき

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月18日放送)にジャーナリストの鈴木哲夫が出演。日本とアメリカの閣僚による新たな貿易交渉の初協議について解説した。


アメリカが対日貿易赤字削減を要求、デジタル分野での協議合意

ワシントンで2日間にわたって行われていた日本とアメリカの閣僚による新たな貿易交渉の初協議が4月17日、日本時間の未明に終了した。アメリカ側は日本との貿易交渉で巨額の赤字を問題視、今後も赤字削減を目指して交渉して行くものと考えられる。
また関税分野では農産物が環太平洋連携協定(TPP)の水準とする方針で一致したほか、自動車やインターネットの商取引、音楽配信などのデジタル貿易分野も協議して行くことで合意。一方で今回注目されていた貿易交渉で扱う対象範囲の確定は見送られた。

飯田)対象範囲の確定が見送られたということを受けて、一部新聞などでは、為替もこれで入るかもしれないというようなことも報じております。まず全体として、鈴木さんはどうご覧になっていますか?

鈴木)第1回戦は何とか踏ん張ったという感じでしょうか。ただ日米の通商交渉は長い歴史があります。日本は常に押しまくられているイメージがありますので、初戦がよかったからと言っても、これで油断してはいけないです。昔、橋本龍太郎さんが通産大臣の時代に番記者をやっていたことがあります。日米の自動車交渉のときに、アメリカのカンター代表が剣道の竹刀を橋本さんの喉元にわざと突きつけるパフォーマンスをしました。真剣勝負のような。

飯田)会見でやりましたよね。

鈴木)完全なパフォーマンスで、いまの時代の人が見たら笑ってしまうかもしれないけれど、当時はそれを真剣にやっていました。あの当時、日米通商交渉は大変で、簡単には勝てないものだと橋本さんはよく言っていました。何勝何敗かと尋ねると、一勝何十敗ではないかと。橋本さんが言っていたのは、今回の場合もそうでしょうけれど、農産物と自動車、プラスでデジタル関係の交渉を表舞台ではやっていますが、全部セットなのだと。1つは安全保障。「誰が日本を守っているのだ?」と言われたときに、どこまでケンカができるのか。それから実はその交渉の外側で、保険や軽自動車のことがどんどん決まって行ってしまう。メインの通商交渉では出て来ないけれど、トータルで見ると他のところで譲っている。こういう決着の仕方が多いのです。「トータルで見るとやられるから難しいのだ」と言っていました。私たちも外側プラスアルファのところもどうなっているのかを見て行かないといけない。

2018年11月29日、20カ国・地域(G20)首脳会合が開かれるブエノスアイレスに向かう前に米ホワイトハウスで記者団に話すトランプ大統領(UPI=共同) 写真提供:共同通信社

譲れないところは突っ張る姿勢が必要

鈴木)もう1つは、やはりTPPからアメリカが出て行ったときに、どうぞアメリカさん、出て行ってくださいと、必要なら日本はそう言うべき。「その代わり門戸は開いておくから。戻って来るならいつでもどうぞ。ただ1回出て行ったのだから、ペナルティは課しますよ」と、そういう姿勢でTPPも日本主導で我慢しながら進めて行くことが必要です。自民党のベテランの多くもそう言っていました。そして、今回はその通りやって来ました。農産物のTPPのところで、日本が絶対に譲れないというところを突っ張っている。

飯田)そこまでしか譲れないよと。

鈴木)ここはよく我慢して来たなと思いますが、トータルだとどうでしょうか。大統領選挙を控えているトランプ大統領が何を言って来るか、まだわからない。

飯田)貿易や関税については今回も注目されていますが、確かに鈴木さんがおっしゃったように、裏というかサービスの部分、つまり非関税障壁と呼ばれる、社会を変えてしまうような仕組の変化の方が、実はアメリカにとってはうまみが大きい。

鈴木)だからそこは、いま民間レベルで進んでいたりするのです。実は政府も絡んでいるのだけれど、というようなことが過去にもあります。

飯田)それこそガン保険といった、生命保険でも損害保険でもない間の分野は、結局アメリカの企業に取られました。保険の規制が緩和されたときに、うまみを取られたのですよね。


世論もセットにして交渉して行くべき

鈴木)総合的に見て行かないと本当の評価はできない。アメリカは、安全保障とそれ以外での分野のセットでの通商交渉となります。日本政府が分かっていないはずはない。でもできる限り、譲れないものは譲れないけれど、譲るものは譲る。そういう姿勢をもう少し見せて、さらにどこまで情報をオープンにするかということも問題です。TPPの農産物の場合もそうですが、日本で実際に農業をやっている人、安全な日本のものを食べている我々、ここが世論形成して日米交渉をバックアップして行かなければいけません。プロ同士で落としどころを作って、プラスアルファ保険や軽自動車などをセットにしながら解決して行くことも必要ですが、日本政府もときには世論もうまく使ってアピールしながらプレッシャーをかける。そんな日米通商交渉があってもいいと思う。

飯田)確かに農業1つとっても、遺伝子組み換え食品を全部受け入れるとなると、それは日本人の生活の大きな変化につながります。それを表示すると差別的なことになるから表示するなと言われても、それは「日本の消費者の安全を考えるとどうなの?」ということになります。

鈴木)交渉過程をある程度オープンにすることによって、わたしたち国民も、そこはおかしいから譲るべきでない、もっと頑張れと、世論もセットにして交渉して行くことを政府も考えていいのではないでしょうか。

飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

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