停戦後、「誰がパレスチナを統治するのか」青写真がない

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AIざっくり要約

  • イスラエルとパレスチナの停戦後、ガザ地区を誰が統治するのか明確な答えはなく、各国の利害関係で合意しにくい。
  • パレスチナ自治政府は選挙を長年実施しておらず、能力不足で統治能力が疑問視されている。イスラエルもガザ再占領は望まない。
  • 戦後の青写真が見つからず、未解決の課題が残る一方、新たな紛争の火種となっている。

実験的な機能のため、正確性を欠く可能性があります。記事本文と併せてご確認ください。

外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が10月27日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。イスラエル・パレスチナ情勢について解説した。

パレスチナ自治区ガザ南部ハンユニスの難民キャンプで国連の担当者から食事を受け取る子どもら 2023年10月24日 (ゲッティ=共同)

パレスチナ自治区ガザ南部ハンユニスの難民キャンプで国連の担当者から食事を受け取る子どもら 2023年10月24日 (ゲッティ=共同)

アメリカの決議案に対してロシア・中国が拒否権行使

飯田)イスラエルとハマスの一連の衝突は10月7日から始まっていますが、X(旧ツイッター)でご意見をいただきました。「ハマスによるテロと、それに対するイスラエルの報復なのに、どうしてもイスラエル対パレスチナということにしたい勢力が多いような気がします」という指摘です。

宮家)いまも国連で議論が進んでいますね。アメリカの決議案が10月25日に出ましたが、ロシアと中国が拒否権を使ったわけです。

飯田)国連安保理で。

宮家)総会でも決議をつくったのですが、総会決議は残念ながら法的拘束力がありません。国連安保理では、アメリカの決議案は、まず「テロを非難する」。そして「イスラエルの自衛権を認める」、「国際法を守りなさい」と続く。その上で「人道アクセスを認めなさい」すなわち、非戦闘員の退避や、もしかしたら人質の解放もあるかも知れませんが、人道補給物資を送るために、戦闘を一時中断しましょうと。

飯田)ガザに対して。

宮家)非常に合理的な内容だと思います。なぜ、それに反対するのかわかりません。ロシアの代表は国連で、「アメリカの決議案はあまりにも政治化されている」としています。意味がないし、内容も疑わしい。自分たちの決議案の方がもっと単純で、短くていいのだと言っているわけです。

米中露の利益が絡んでいるので国連では解決できない

宮家)さらにロシアは「ガザにいる人たちへの攻撃について、非難がないのはおかしいではないか」と言うのだけれど、それを言えば「先にやったのはガザ側ではないのか?」という話になってしまいます。

飯田)ハマス側ではないのかという。

宮家)ハマス側です。水掛け論的になってしまい、しかも、どちらも拒否権を使っています。それが何を意味するかと言うと、パレスチナ問題があまりにも大きな問題だから、国連では解決できないのです。

飯田)中露が拒否権を使い。

宮家)逆に言うと、ガザ以外の小さな地域、もしくは中東地域以外の場所でもこういうことは起きますが、その場合には安保理決議ができるのです。誰も文句を言わないから。要するに、大国が絡まない話であれば安保理決議はできるので、その点ではもちろん国連にも意味があるのだけれど、パレスチナ問題は米中露すべての利益が絡んでいるだけに決議採択が難しいのです。

何年も選挙を行わないパレスチナ自治政府

宮家)パレスチナ自治政府がしっかりしていないと言ったら失礼ですが、自治政府の運営がうまくいかなかったので、結局はガザの方が貧困になり、だから怒り、仲違いするわけです。パレスチナで選挙を行えばハマスの人たちが勝ちます。なぜかと言うと、ハマスはムスリム同胞団の人たちですから、選挙では「大変ね、ああそうなの」と優しく話を聞いてくれるのです。

飯田)ハマスの人たちは。

宮家)慈善事業が得意なので、人々の心を掴める。宗教団体ですから。しかし、ハマスには宗教家としての顔と同時に戦闘員の顔もあり、いまは戦闘員の方が前面に出てきてしまっているのです。「やはりハマスの人たちはダメだ」と思う方々は、パレスチナ人にも多いと思います。特にガザの人たちは。しかし、パレスチナではもう何年も選挙がないわけです。

飯田)自治政府の方も、本来はもっと前に選挙を行う予定でしたが、延びています。

宮家)全然やっていないですよね。

飯田)こちらのファタハと呼ばれる人たちも怪しいですよね。

宮家)選挙をやりたくないのは、負ける可能性があるからです。とは言え、もう10年ぐらいやっていないのですが。

飯田)アッバス議長がずっと留まっている。こっちはこっちでおかしいですね。

宮家)「本当にパレスチナの代表なのか?」と言いたくなるけれど、「昔の選挙で勝っていますから」という理由で居座っているわけです。これではアラブ諸国が匙を投げるのも当然ですよね。

地上戦になればイスラエルが勝つが数ヵ月掛かり、犠牲者も出る

宮家)パレスチナの方々には申し訳ないけれど、彼らの指導者っちには自己統治能力がないのかも知れません。本来は自治政府側もイスラエルとよく話して、ある程度妥協しなくてはいけないのですが、それをやらないので「アブラハム合意」ができてしまい、アラブ諸国が次々にイスラエルと国交を正常化しているわけです。

飯田)ここは棚上げしておき、とりあえずという形で。

宮家)今回の事態が起きる直前、サウジアラビアとイスラエルの国交正常化をアメリカが仲介していました。ハマスや裏にいるイランからすれば大変なことです。「そんなことをされたら、俺たちの出番がなくなってしまうではないか」となる。

飯田)包囲されてしまう。

宮家)だから「やってしまえ」と思ってハマスが壊そうとしたら、何と「見事に壊れてしまった」というのが私の見方です。こうした状態は当分続きますし、地上戦になったらイスラエルは勝つでしょう。でも、終結までに何ヵ月も掛かります。

停戦後の青写真がない

宮家)その上、多くの人が亡くなる。それも悲しいことだけれど、その後の話、すなわち戦闘終結後ガザをどうするかが実はいちばん大事で、要するに「イスラエルはまた占領するのか」ということです。しかし、イスラエルは以前ガザを占領して大変な目に遭ったから、2度とやりたくない。ではパレスチナ人にやらせるのかと言うと、自治政府ができないことを誰ができるのでしょうか。

飯田)パレスチナ人も難しい。

宮家)「ではエジプトに頼むか」という話もあります。しかし、パレスチナ人ができない統治を、エジプト人にできるわけがない。つまり、残念ながらどの選択肢もダメだということです。

飯田)どこも統治がうまくいかないまま、火種が残っていく。

宮家)そもそも停戦になったあとの青写真もありません。もしくは、いまつくっているかも知れない。イラク戦争の時もそうでした。アメリカ軍が入っていったけれど、戦後の計画はなく、それでうまくいかなかったのですから。

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