覇権争いの続く米中〜日本はいまのままでいいのか

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月18日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。米中次官級貿易協議が開催されるニュースについて解説した。

会談を前に握手するトランプ米大統領(左)と中国の習近平国家主席=2019年6月29日、大阪市(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

米中次官級貿易協議、19日から開催

アメリカと中国の貿易問題について、19日から次官級協議が開催されることになった。10月初めの閣僚協議を前に知的財産権の保護や産業補助金の削減など、中国の構造改革について論点の整理が行われるとみられる。

飯田)アメリカ通商代表部が、ワシントンで次官級の協議を開催すると発表しました。中国政府は財政省の廖岷(リョウ・ビン)次官率いる代表団が18日、アメリカを訪れる予定と発表しています。協議が始まるけれど、デッドロックにぶち当たるということを繰り返していますね。

佐々木)毎回同じニュースを繰り返して、進んでいない感じがします。大きく射程を広げて考えてみると、経済と安全保障が合体しつつあります。アメリカと中国の関係は、経済が単に対立するだけはありません。日本でも1980年代に日米貿易摩擦がありましたが、これはあくまでも経済だけの話であって、日本としてはアメリカの核の傘、安全保障の下に入っていたわけですから、安全保障で対立する場面はありませんでした。しかし、いまの米中は経済で対立するとともに安全保障、太平洋の覇権をどちらが握るか、またEUへの影響力の大きさというところまで踏み込んで対立しています。要するに経済対立ではなく、総動員体制による対立になってしまっています。

胡錦濤-Wikipediaより

世界中が経済力を他国のコントロールのために使う状況となっている

佐々木)最近言われているのは経済安全保障、きょう(18日)の読売と毎日のニュースでも報じています。日本政府が国家安全保障局に経済部署を設置すると。これからは経済と安全保障が一体化するため、それに日本も対応して行かなければならないということです。これは、歴史的に考えると難しい話です。日本と中国はこれまで政治的に対立する場面が多かった。1970年代に田中角栄首相が中国へ行って、国交回復したころはよかったのですが、1990年代に入ると靖国参拝問題に対して中国で反日デモが起きた。2000年代初頭に国家主席だった胡錦涛さんは、「政冷経熱」と言いました。政治的には対立しますが、経済では盛んにやりましょうと。当時は政治と経済が分離していてもいいというのが、中国と日本の共通認識でした。ところが中国は最近何をしているかと言うと、アフリカに橋頭堡を築くために、実際にはお金を貸しているだけですが経済援助をして、橋や道路をつくったりしています。そしてアフリカに対して政治的コントロールを強める。最近だとソロモン諸島が台湾と断交して、中国と国交を結んだ。これは完全に政治的戦略があります。中国の一帯一路戦略は経済だけでなく、政治的な支配力を強めて行くという政治と経済が一体化した戦略です。日本はそれをやって来なかった。よくODAはばらまきだと批判されますが、あくまでも発展途上国を支援するだけであって、政治的にコントロールしようという発想はまったくありませんでした。

飯田)技術を向こうに植え付けるというものでしたからね。

安全保障は米、経済は中国となりつつあるなか〜今後の日本のとるべき道

佐々木)それは善意の外交であって、日本は褒められるべきだと思います。ただ、トランプ政権含め、ロシアも中国も世界中が経済力を他国のコントロールのために使う状況になっているなかで、「日本はいまのままで本当に大丈夫なのか」という意見が出ているのも事実です。

飯田)経済的な力を持って政治的にもコントロールしようとするのは、新たな覇権主義というか、武力を使わない植民地主義のようなものですよね。

佐々木)だから非常に危険ではあります。韓国との間でトラブルになったフッ化水素の輸出管理強化、ホワイト国除外。あれも新しい経済安全保障戦略の1つと考えれば、日本政府がついに踏み込んで来たとも考えられます。これを世界中でやりすぎると第二次世界大戦前のブロック経済、ABCD包囲網みたいなものになりかねないので危険です。アメリカでも、アメリカの外交情報誌に書いてあったのですが、トランプ政権は当初グローバリスト派と経済ナショナリスト派の両方がいた。グローバリスト派が強かったので中国と政治では対立するけれど、貿易は門戸を開いて自由貿易をやって行く形でした。ところがトランプ政権が3年続くなかで、グローバリスト派は一掃されていなくなった。いまや経済ナショナリスト派が優勢で、トランプ政権はそれ一色になって来ています。経済ナショナリスト派はデカップリングを求めているということです。要するに分離です。米国グローバル経済と中国グローバル経済の間を完全に分けてしまって、世界中を2つに分ける。お互いに距離を置き、付き合わないようにしようと。もし本当にそうなったら日本は困りますよね。アメリカは強い軍隊を持っていて、安全保障分野で強いです。日本はその傘下にいる。一方で中国は、アメリカが保護貿易にはまり込むなかで、いまや世界中の自由貿易体制を主導しつつあります。グローバルサプライチェーンの中核は、もはや中国です。経済的には中国中心で、安全保障や軍事に関してはアメリカ中心。日本はどちらに足をかければいいのでしょうか。太平洋を中国とアメリカが取り合うような。ソロモン諸島が中国と国交を樹立したということは、第2列島線、グアムからサイパンのラインより東側は中国勢力となる。その状況のなかで、日本はどういう立ち位置で生きて行くのか、これは難しいです。

飯田)そうですよね。ある意味、米中が冷戦の時代に入っているということです。

佐々木)そうですね。両方にいい顔をするというのは誰でも思いつきますが、それで失敗したのは韓国です。両方から怒られてしまった。このかじ取りを考えなければいけません。

飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

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