関電の金品受領問題〜刑事責任は問えるのか

ニッポン放送「ザ・フォーカス」(10月1日放送)に中央大学法科大学院教授・弁護士の野村修也が出演。関西電力の役員による金品受領問題について解説した。

関西電力経営幹部らが福井県高浜町の元助役から資金を受け取っていた問題で、同社が会見。会見に臨む岩根茂樹社長ら=2019年9月27日 写真提供:産経新聞社

関西電力、2日再び会見

関西電力の役員らが福井県高浜町の元助役から多額の金品を受け取っていた問題で、関電は2日に臨時取締役会を開くことを発表した。午後には再び記者会見を開き、社内の調査委員会がまとめた報告書の内容を原則すべて公表し、新たな調査委員会の設置も表明する予定。

森田耕次解説委員)福井県高浜町の元助役、森山栄治さんは今年(2019年)3月に亡くなっているのですが、この森山さんは関西電力の子会社の顧問を30年以上にわたって務めていたことがわかりました。助役を退いた1987年から、亡くなる直前の去年(2018年)12月まで関西電力の子会社「関電プラント」の顧問を務めていた。一方で、原発関連工事を担う高浜町の建設会社「吉田開発」から工事の受注に絡む手数料として、およそ3億円を受け取っていたことも明らかになっています。埼玉県川越市のラジオネーム“不遇の中年”さん、53歳の男性からいただきました。「この関西電力の問題ですが、元助役の森山栄治さんが役員らに渡していた金品、3億2000万円の金品のなかには、現金以外にも金(ゴールド)やスーツの仕立て券も含まれていたそうです。驚くのは森山さんの財源、どこなのでしょうか。この建設会社から、と言われています。いくら関連の子会社で30年以上にわたって非常勤顧問の契約をしていたからと言って、そんなに資産家なのでしょうか。個人的には金の出どころがすごく気になります」ということです。この建設会社から貰っていたのかどうか。その辺も含めて記者会見で明らかにするのか、というところがあるでしょうね。

野村)そうですね。問題になっているのは、この建設会社から森山さんにお金が渡って、そこからさらに関西電力の役員の人たちにお金が回っているのではないか、というところです。関西電力が最初に工事を発注すると、建設会社に対して関西電力からお金が流れますよね。そこから森山さんにお金が流れて、そして関西電力の役員の人たちにお金が戻って来る。これが最初から計画されていたものだとすると、特別背任になる可能性もあります。

贈収賄罪にあてはまるのか〜難しい犯罪の成立

森田)こちらは埼玉県朝霞市の“スエトシ”さん、55歳の男性公務員の方からいただきました。「質問です。問題を起こした関西電力の役員は、逮捕されないのでしょうか?」というご質問をいただきました。

野村)もし最初から計画していたとすると、このお金が上積みされた形で代金として支払われている可能性があるわけですよね。最初の建築費のなかに、戻って来るお金が上積みされていたということです。そうすると、これは役員の人たちが自分の利益のために関西電力を不利な扱いにするということで、背任になる可能性があります。ただ、おそらくいままでの記者会見の様子などを見ていると、そういったことが計画的に行われていたわけではないと言っていますので、ここがまず1つのポイントです。それから、こういうお金のやり取りがあると、よく贈収賄という話があるではないですか。

森田)貰ったら収賄、送れば贈賄。

野村)これって、基本的には公務員に適用される犯罪です。ところが会社の取締役や一定の役員の人たちにも、会社法という法律のなかに贈収賄罪という犯罪があるのですよ。

森田)民間にもあるのですね。

野村)本当に例外的なものなのですが、どんなものかと言うと、不正な行為、つまり「違法な行為をしてくれ」と頼まれた見返りとしてお金を貰っていると、贈収賄罪になります。

森田)不法な行為をしてくれ、と。

野村)お金を渡す方の側が、役員の人に対して違法行為をしてくれと頼んで、その見返りとしてお金を渡すという、かなり例外的な場合です。

森田)公務員ですと、公共事業を回してくれ、という斡旋のようなところがありますが、そうではなく違法なことを求めて、ということですね。

野村)公務員の場合には、便宜を図る見返りとしてお金を貰うと、それ自体が犯罪になる可能性があります。しかしこの民間役員の場合には、違法な行為をする代わりにお金を貰うという、非常に限定的なときにしか刑罰が適用されないという問題があります。ですから「逮捕されないのでしょうか」とメールをいただきましたが、犯罪として成立するには、これからの捜査があるかどうかわかりませんが、非常に難しいとも考えられます。

森田)刑事責任を問うには、難しい状況なのですね。

関西電力の役員らが高浜町元助役から金品受領していた問題を受け、岩根茂樹社長が会見=2019年9月27日午前、大阪市北区 写真提供:産経新聞社

会社としての倫理的な問題

野村)ただ、やはりこれは会社としてどうなのかという疑問です。

森田)誰もがそう思いますよね。

野村)会社は、自分の利益のためだけに存在しているわけではありません。特に電力事業者は、一般の私たちに電力を届けるという、非常に公共性の高い事業なわけですよ。その人たちが業者と関係の深い人からお金を渡されるということ自体、防げなければおかしいのです。さらに今回の記者会見を聞いていると、「強く押し込められたので返せなかった」という話でした。

森田)町の実力者で、という。

野村)業者に押し込まれるような会社だったら、仮に業者が何か不正を犯した場合でも、それを「目こぼししてくれ」と言われた場合に「わかりました」となってしまう危険性があるわけでしょう。そういう意味では公共的な事業を営む、特にそういう会社の役員として、本当に任せて大丈夫なのかという問題です。

第三者委員会の調査が重要

森田)1日に出演された菅原一秀経済産業大臣は、「第三者委員会をつくって徹底的に調査しろ」と関西電力に言ったということですが、第三者での調査機関は重要になって来るわけですか?

野村)そうですね。関西電力から独立性のある第三者の人たちが、しっかりと厳しい目線でしらみつぶしに調べられるかどうかです。第三者委員会は、いい第三者委員会もあれば、悪い第三者委員会もあるのです。いい第三者委員会は本当に独立して、厳しくそれを追及するのですが、悪い第三者委員会はアリバイづくりに使われてしまうのです。第三者委員会が問題ないと言ったからいいでしょう、ということになってしまう。

森田)名目上の第三者ということになってしまいます。

野村)そこが、今後の調査の見極めのポイントだと思います。

森田)2日に改めて岩根社長が午後の記者会見をして、八木誠会長も同席するということですから、非公表にしていた20人の氏名や金額などの細かいところを、しっかりと提示しなければいけませんね。

コンプライアンスはどうなっていたのか

野村)そこを出すことが大事ですし、もっと言うと、例えば業者の方と接触するときのルールがきちんとあったのかどうかですね。いまは普通にあるのですよ。コンプライアンス上、複数の人で会うとか。あるいは、お金を貰うようなことがあったときに、それを防ぐための手段をしっかりとつくっているかどうか。コンプライアンスというのは単なる法令遵守ではなく、事前にリスクを管理する仕組みを作ることこそが、その本質なのです。

森田)公務員はいま、しっかりして来ていますけれどね。

野村)そうなのです。企業でも、いまは普通に厳しくなっているのですよ。そのようなものが果たして関西電力にあったのかどうか、そこを調査して行く必要があります。そうした仕組みが整っていれば防げたのに、それを漫然と放置していたのだとすれば、場合によっては、今回の一連の調査や記者会見にかかった費用を役員らが会社に対して賠償する責任が生じ、それを大阪市などの株主が代表訴訟という形で追及することも考えられます。

森田)コンプライアンス自体がどうだったのか、そして事実関係を明らかにすることができるかどうか。これが関西電力の社長、会長の記者会見のポイントになって来そうです。

ザ・フォーカス
FM93AM1242ニッポン放送 月-木 18:00-20:20

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