弾道ミサイル発射〜この時期に行う北朝鮮の思惑

ニッポン放送「ザ・フォーカス」(10月2日放送)に作家・ジャーナリストの河合雅司が出演。北朝鮮が弾道ミサイルを発射したニュースについて解説した。

4日、朝鮮東海の海上で行われた前線・東部戦線防護部隊の火力攻撃訓練を指導する金正恩朝鮮労働党委員長=2019年5月4日 写真提供:時事通信

北朝鮮、弾道ミサイルを発射

2日7時10分ごろ、弾道ミサイルが北朝鮮の東海岸から東の方向に発射され、7時27分ごろに島根県島後(とうご)沖の北、日本のEEZ(排他的経済水域)内に落下した模様。韓国軍は潜水艦から発射されたと発表したが、菅官房長官や河野防衛大臣は「詳細は分析中」と述べている。

森田耕次解説委員)日本政府によりますと、「北朝鮮は午前7時10分ごろ、東海岸付近から弾道ミサイルを発射して、7時27分ごろ、島根県隠岐諸島の沖合およそ350キロ付近、日本のEEZ(排他的経済水域)内に落下したと見られる」と発表しています。韓国軍は、元山(ウォンサン)の北東およそ17キロの海上から発射されたとしており、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の「北極星」系列のミサイルと見て、分析を進めていると明らかにしました。安倍総理大臣は2日朝、総理官邸で記者団に次のように答えています。

 

安倍総理大臣)今朝、北朝鮮が2発の弾道ミサイルを発射いたしました。このような弾道ミサイルの発射は国連決議違反であり、厳重に抗議し、強く非難します。引き続き米国をはじめ、国際社会と連携をしながら、厳重な警戒態勢のもと、国民の安全を守るために万全を期してまいります。

日本近海海底地形図と日本列島(日本の排他的経済水域-Wikipediaより)

米朝協議を優位に進めるためのミサイル発射か

森田)日本政府は当初「2発発射された」と説明したのですが、後に「1発が2つに分離して落下した可能性がある」という修正をしています。韓国軍によると、飛距離はおよそ450キロ、最高高度がおよそ910キロということで、通常よりも高い角度で打ち上げる「ロフテッド軌道」で発射されているということです。CNNテレビの記者はアメリカ政府当局者の話として、「実験用の発射台から打ち上げられた」とツイッターで伝えています。沖合に設けられた発射台から発射されたのではないか、ということのようです。ちょうど、アメリカと北朝鮮は4日に予備接触をして、5日に実務協議を行うということです。金正恩さんもどういう心境でこのミサイルを発射したのか、ということですよね。

河合)今年(2019年)に入ってから11回目ということで、乱射している印象が強いわけですけれども、森田さんがおっしゃったように実務協議を有利に進めるという思惑があって、このタイミングで発射したのだと思います。いずれにしても、事前通告もなく極めて危険な行為で、そこに漁船や人がいる状況だったら大きな被害になってしまいます。北朝鮮には自制を求めたいと思います。

トランプ米大統領(中央右)との再会談に臨む安倍晋三首相(同左)。左端は茂木敏充経済再生担当相。右端はライトハイザー米通商代表部(USTR)代表=2019年8月25日、フランス南西部のビアリッツ 写真提供:時事通信

アメリカに対しても強く言うべき

森田)横浜市の57歳男性、“シマザキテツノリ”さんからいただきました。「北朝鮮のミサイルですが、日本の陸地に着弾するなんてことは絶対にないのでしょうか? それはとても怖いことです。大丈夫なのでしょうか。もし着弾しそうになったら、何らかの対応はできるのでしょうか、教えてください」とメールをいただきました。

河合)私も(軍事の)専門家の分析を聞いている立場ではありますが、飛んで来るものを撃ち落とすというのは、技術的に難しいとされていますよね。とりわけ角度が低くなると補足しづらくなるのは、当然あるわけです。いまは日韓の関係が冷え込んでいることもあって、GSOMIAの話もあり、情報収集そのものが遅れる状況になりつつある。そのなかでの迎撃、対応という話になりますので、防衛体制そのものがこのままでいいのか、日本政府も考えていると思いますが、しっかりやって貰うしかないですね。

森田)それから、“しまちゃん”さんからもメールをいただきました。「後ろ盾をしている中国も絡んでいるのではないでしょうか。昨日(1日)の派手な軍事パレード、北朝鮮のミサイルで力を誇示しているのだとしたら、本当にけしからんと思います。国際社会の断固たる措置を求めます」というご意見もいただいています。

河合)今回、中国は直接関係ないとは思いますけれども、いずれにしても東アジアの安全保障をめぐる情勢が、大きく変わって来ています。トランプ大統領が短距離弾に関しては問題視しない発言を繰り返していることで、こういう状況が起こっていることは間違いないです。(北朝鮮のミサイル発射は)国連決議違反ですので、日本はアメリカに対しても言うべきことは言うべきです。多くの日本国民も、これを脅威に感じていらっしゃると思うので、国民の不安が大きくならないように、政府としては丁寧な説明をして行くことが大事だと思います。

23日、ハノイでの第2回米朝首脳会談のため平壌駅を出発する際、朝鮮人民軍名誉儀仗(ぎじょう)隊を閲兵する金正恩朝鮮労働党委員長(中央)=2019年2月24日 写真提供:時事通信

今後の防衛のあり方が変わる今回のミサイル発射

森田)しかもこれが潜水艦発射型のミサイルだとすると、地上発射のミサイルに比べて、事前に発射の兆候を掴むのが難しいと言われています。

河合)北朝鮮の潜水艦は、先進国に比べて見つけやすいと言われていますが、この性能もいずれは上がることを考えなければいけません。ミサイルそのものの精度も、これからより高まって行く状況になるでしょう。北朝鮮が潜水艦から自由にミサイルを撃てるような状況になると、仮に太平洋に出て来れば、アメリカに到達するようなミサイルになりかねません。防衛のあり方が変わってしまうような道筋へ、今回のことで1歩進んだと捉えるべきだと思います。

森田)日本政府は午後、国家安全保障会議(NSC)4大臣会合の2回目を、午前中に続いて開いたということですが、政府関係者はアメリカとの交渉を優位に進めるための牽制ではないか、という指摘をしています。菅官房長官は「引き続き日朝首脳会談を目指す方針に変わりはない」ということを、午前中の記者会見で言っています。

河合)いまはトランプ大統領と金正恩委員長の間で交渉が進むという形になっていますが、この問題はトップから実務者までの各レベル、各チャネルをフル活用して対処して行かないと、予期せぬことがいつ起こるかわからない。そういう時代になって来たのだということを、日本人も理解しなければいけないのだと思います。

ザ・フォーカス
FM93AM1242ニッポン放送 月-木 18:00-20:20

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