EU離脱へ向けた新たな協定案〜ジョンソン首相の断末魔か

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月4日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。イギリス政府がEU離脱に向けた新たな協定案を発表したニュースについて解説した。

英中部マンチェスターでの与党保守党大会で演説するジョンソン首相=2019年10月2日(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

イギリス政府がEU離脱に向けバックストップ条項の代替案を発表

イギリス政府は2日夜、EU(ヨーロッパ連合)からの離脱に向けた新たな協定案を発表した。メイ前政権による協定で懸念材料となっていた、アイルランドと北アイルランドの国境に関わるバックストップ条項に代わる案も盛り込まれている。バックストップとは、イギリスとEUの間で通商協定がまとまらない場合、アイルランドと北アイルランドの国境に厳格な検問所などを設置しないための措置である。このバックストップが発動すると、北アイルランドはイギリスがEUを離脱した後も、EUの単一市場のルールに従うことになるため、ジョンソン首相を含む反対派はEU離脱後もイギリスがなおEU法に縛られると反発していた。

ベルファストの家屋。1981年にハンガーストライキの末衰弱死したIRA暫定派のボビー・サンズを称える絵(北アイルランド問題-Wikipediaより)

EUがこの代替案を呑むかどうか〜ジョンソン首相の断末魔か

飯田)これでは実質的にEUを抜けたことにならないではないか、というところですが。

宮家)これも複雑で、いろいろ考えたのでしょうけれど、簡単に言うと北アイルランドはイギリスに占領されていた場所で、イギリスの領土になっているのですよね。しかし、アイルランド島のなかにあるのだから、アイルランドとの関係が強いわけです。アイルランドがEUである以上、海の先のイギリスの大ブリテン島ではなくて、アイルランドでいろいろな商売がある。そこに国境ができてしまうと大変だということです。そうなると、また北アイルランド独立問題が出て来てしまう。それで悩んでいたのですけれど、今回勉強してみてわかったことは、どうやら検疫のようなものはないらしいと。しかし、国境での税関はやるのだそうです。だから、税関については中央集権化をするのではなく、すなわちそこに検問所があって1つ1つやるわけではなくて、非中央集権化と言っています。つまり、いろいろなところで税関ができるようにして、自主的に自由に通そうということでしょうけれども、姑息といえば姑息です。そしてイギリス本体は完全に連合から外れますから、その意味では妥協策なのですけれども、EUが呑みますかね。もちろん国内でも持たないと思いますけれども、これはある意味で捨て身ですよね。「これがだめなら、もう合意なき離脱だ」と言っているのです。相手が1対1だったら「仕方がない、降りるか」となるかもしれませんが、EUという相手は20数ヵ国もあるのです。イギリスがいろいろ言ったところで、反対する人は沢山います。ヨーロッパも、そんな脅しに乗る人たちはいないです。ジョンソンさんは頑張ったけれど、これは断末魔ではないかという気がしなくもない。

飯田)関税をいろいろなところでやるという、明示的な国境を作らないと。国境のあるなしが、アイルランドと北アイルランドには重要です。

宮家)そうですよ。これで遮断してしまったら、また北アイルランドが孤立してしまいます。やっと静かになって来たところで、またイギリスに対して反感が強まって戻ってしまうのは、どちらにとっても不幸ですよね。

飯田)かつて爆弾テロがあったり、血で血を洗うような争いがあったり。

宮家)そう考えたら、なぜ離脱するのかと。もちろん民主主義の結果だから尊重するのはわかるけれど、イギリスの人たちも、ウェールズやスコットランドといるだろうけれど、よく頭を冷やして欲しいと思いますね。

飯田)10月31日が期限ということになっています。

飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

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