米下院、香港人権法案を可決〜成立のカギ握るトランプは香港市民を助けるのか

ニッポン放送「ザ・フォーカス」(10月16日放送)に産経新聞論説委員・フジサンケイビジネスアイ編集長の山本秀也が出演。米下院で可決した「香港人権法案」と、今後の米中の動きについて解説した。

「カラー」 香港、デモ隊201人逮捕  米議会による「香港人権・民主主義法案」の早期可決を求める集会で、会場周辺の道路を埋める大勢の市民と米国旗=2019年10月14日、香港 写真提供=共同通信社

米下院が香港人権法案を可決。中国は成立した場合の報復を示唆

アメリカ議会の下院が、民主的な改革を求める香港の大規模デモの参加者を支持する内容の4つの法案「香港人権法案」を民主党、共和党両党とも賛成の上、全会一致で可決した。今後は上院でも可決され、さらにトランプ大統領が署名すれば成立する。中国外務省は、アメリカが法案を可決・成立させた場合、強力な対抗措置を講じるとしている。

森田耕次解説委員)「香港人権民主主義法案」というのは、中国が香港に対して保障している一国二制度を守っているかどうか、アメリカ政府に毎年検証を求めるものです。超党派の支持を得ていて、下院では可決、近く上院でも可決される見通しです。アメリカは一国二制度をもとに、ビザの発給や関税などで香港を中国本土よりも優遇しています。この法案の持つ意味合いがどういうことなのか、中国に詳しい産経新聞論説委員・フジサンケイビジネスアイ編集長の山本秀也さんに電話で伺います。この法案は、どういう法案なのでしょうか?

山本)簡単に言うと、中国に主権が移った後の香港にアメリカが与えていた特別扱いを全部取り上げるかもしれない、という法律です。

森田)そうすると、香港の方が困ってしまいませんか?

山本)困るのは明らかに香港ですし、もう1つは香港の裏側で香港を利用してきた中国の国営企業や有力者たちです。

森田)狙いは、中国の国営企業やそっちの方なのですか。

山本)どこからどこまでという線は引けないのですが、香港経済にとって大痛手になることは間違いないです。

森田)もともと、アメリカは香港については中国とは別の関税をかけたり、優遇措置を適用していたのですか。

山本)そうです。1997年に、イギリスから中国に香港の主権が移りましたよね。その少し前、90年代の初めになるのですが、アメリカは香港をどう扱うかを定めた「米国-香港政策法」というアメリカの国内法を成立させています。中国本土とは切り離したビザや関税の扱いをこの法律で決めているのです。

アメリカ合衆国国務省 (Wikipediaより)

アメリカは世界各地から情報収集をしている

森田)中国が約束した自治を香港が享受しているのかどうか、中国政府に毎年検証させるのですか。

山本)いいえ、これはアメリカの国務省です。

森田)国務省が検証するのですか。

山本)アメリカの駐香港総領事館をはじめ、各地のアメリカの大使館、総領事館から上がってくる情報をもとに、毎年レポートを作成して公表するという段取りになるのだと思います。

森田)アメリカが主体となって検証するということですね。

山本)アメリカはこの手の報告書はたくさんつくっていて、人権状況や宗教の自由が守られているか、これはもちろん日本も対象になっていますが、毎年いろいろな国の報告書を上げて、各国の情勢をどう見ているのかということを示しています。特にこの香港の場合は明らかに中国を睨んでやっていますので、下院を通った段階で中国が猛反発しているのです。

実弾発砲で高校生重体 警官隊とにらみ合うデモ隊の若者ら=2019年10月1日、香港(共同) 写真提供:共同通信社

デモ参加者はアメリカの助力を待つ

森田)しかし、香港の市民も大歓迎ではないですよね。

山本)困るのですが、いま香港で行っているデモの関係者や参加した人に聞くと、「もちろん景気が悪くなって痛いのは私たちということで間違いありませんが、香港のシステムで利益を得ているのが誰か我々は知っています。そういう人たちが困るのであれば、一緒に困って貰います」とまで言う人がけっこういるのです。香港経済の痛手は私たちも心配しているのですが、現場ではこういう腹を据えた声も聞こえます。

森田)メールもいただいておりまして、“ザウチのホシ”さん「米中代理戦争と感じます。イギリスは無視。デモが暴徒化しているのは、中国の武力鎮圧を阻止するためもあるからですか?」といただいています。

山本)彼らもやり過ぎると、どこかで中国が鉄槌を下してくるという可能性を見てはいますよね。イギリス統治時代から貯めていた催涙弾を撃ち尽くしてしまって、中国製を買ってこなければいけない状況になっています。

森田)その法案も可決されたようですね。香港警察に対する催涙弾などの輸出も規制すると。

ホワイトハウスで、記者団に話すドナルド・トランプ米大統領(アメリカ・ワシントン)=2019年10月3日 写真提供:時事通信

トランプ氏は法案を大統領選のカードに

山本)法律はまず上院で可決が必要になるのですが、上院と下院で可決した後で法案の内容をすり合わせて一本化した上で、ホワイトハウスへ送って大統領の署名ということになるのですが、最後のところはトランプ氏が署名をするかどうかです。

森田)でも、対中貿易協議のカードになるのではないですか?

山本)まさにカードなのです。彼が今フォーカスしているのは来年の大統領選挙で再選されることだけですから、香港の人権でアメリカが主役を演じた方が票になるのか、それとも中西部の大豆を中国に売りつけたほうが票になるのか。ここを天秤に掛けているのでしょうが、トランプさんの人権感覚を、私は正直言って信用していません。香港の人々はアメリカに助けて貰いたいので、アメリカの星条旗を掲げてデモをしています。それを見捨てるというのは、私は人権問題は非常に大事だと思ってますので、許し難いところです。

森田)中国の報復も考えられるというところですか。

山本)当然そうなります。それから米中の貿易協議、この間の暫定合意は仮の仮の合意なので、本当のところは何も詰まっていませんが、この貿易協議にも影響が出るのは間違いありません。

ザ・フォーカス
FM93AM1242ニッポン放送 月-木 18:00-20:20

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