「ダムも必要か」〜台風19号により再考の時期に来た水害対策

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月16日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。台風19号の被害を受けた福島県郡山市の取材模様を交えて解説した。

浸水した家から運び出された家財が山のように積まれていた=2019年10月15日 福島県郡山市 写真提供:産経新聞社

福島県では39河川が氾濫、16河川で堤防決壊

共同通信の集計では、台風19号により亡くなった方はこれまで12の都県で73人にのぼっている。NHK、読売新聞の報道によると、福島県で亡くなった方は27人。また、39河川が氾濫し、16河川で堤防が決壊している。

飯田)特に阿武隈川は、南を水源として北に流れている、ちょうど福島県の中通りを縦断するような形です。

佐々木)そうですよね、宮城県まで行って海に出るということですよね。

阿武隈川(宮城県大河原町付近)。出典:国土地理院ウェブサイト(令和元年台風第19号-Wikipediaより)

昨年、対策工事をした郡山中央工業団地での水害

飯田)宮城県の南にある亘理というところで海に出て行くわけですが、流域では大きな被害が出ています。いままでであれば、ここまでは水が来ないというようなところで、相次いで被害が出ています。そのうちの1つ、郡山駅の東に郡山中央工業団地があります。大企業の工場が集まり、それにぶら下がるような形で周りにも中小の工場が集まっています。一大集積地となっているわけですが、そこでの工場主の方にお話を伺いました。まずはそちらをお聞きください。

 

飯田)どのくらいまで水が来たのですか?

芳賀社長)1メートル20センチくらいかな。

飯田)大人の胸くらいまで。

芳賀社長)胸くらいまで行きましたね。ここは86年のときも水に浸かっていません。それ以上に来ました。ただ今回、堤防は決壊していません。だからなぜ入ったのでしょう。ここは去年(2018年)から下水の工事をしています。雨が降ったら流れるようにしていたのですが。

飯田)全部対策したはずなのに。

芳賀社長)そうすると、なぜこうなったのかなと。

 

飯田)HIMテックの芳賀社長に話を伺ったのですが、福島県郡山で話を聞くと、引き合いに出されるのが「8.5水害」です。1986年8月5日から6日にかけて大きな水害があり、福島県内でも11人の方が亡くなっているそうですが、そのときよりも酷い。

佐々木)これが何十年に1回ならまだいいのですが、地球温暖化の影響で頻発する可能性がある。そうなると、いままでの水の対策では間に合わなくなります。もう1度、抜本的に考え直さなければいけない時期が来ているのかもしれません。

飯田)従来の治水という意味では、社長の言葉にもありましたが、去年まで排水の工事をしていた。ただ、直接これを阿武隈川に流すと容量の関係もありますから、支流に流す形でこの辺の排水は完璧になっていて、少々の雨であればすぐに水が引くようになった。今回の郡山の中心部に関しては、堤防は決壊しておらず、超えて水がやって来てしまった。

佐々木)越水というやつですね。

飯田)それだけに、どうしてと。8.5水害でも堤防の決壊があったのですが、一級河川ですので国が主体となって、かなり予算をつけて改修した。15日に福島民友の方にもお話を伺いましたが、800億円以上のお金をかけて堤防を整備する治水事業をやったのに、地元の人は衝撃というか、呆然としますよね。

佐々木)想定を超えてしまえばどうしようもないですよね。利根川もあと少しで越水しそうでしたから。

台風19号 泥水につかった北陸新幹線の車両=2019年10月13日午前11時44分、長野市 写真提供:産経新聞社

大きな土地が必要な事業では低い場所が選ばれ、そこが水害に

飯田)郡山の中央工業団地は、平らな土地に工場がたくさん建っています。話を伺いますと、もともと川がつくりだした遊水池のようなところで、昔は使っていなかったということです。ただ、中央工業団地のように大きな土地が必要な事業となると、そういうところが選ばれがちなのだそうです。

佐々木)千曲川の北陸新幹線の車両基地も、まったく同じ理由で場所が選ばれているわけですから。

飯田)そのリスクの見積もりとして、いままでは水害が少なかった。これも環境の変化ですよね。

佐々木)決壊しない堤防はいくらでもつくれますが、それを超えて越水して来るのは避けようがありません。上流にダムや遊水池をつくり、堤防を高くすると言っても限界があります。その先にどういう水害対策があるのかと考えると、途方に暮れる感じがありますよね。

台風19号で土砂崩れが起きた現場で、自衛隊や警察などが70人体制で行方不明者の捜索を行った。午前8時半と9時半に2人を発見し救出作業が行われた=2019年10月13日 写真提供:産経新聞社

田村町下行合でも浸水被害

飯田)工業団地の南に1キロほど下った田村町下行合には、日本大学工学部のキャンパスがあります。大学の誘致も広い土地が必要だということで、低いところになってしまいます。今回、やはり浸水して被害が出ました。片づけをされている住民の方に話を伺いました。

 

飯田)どのくらいまで水が来ましたか?

住民の方)この上あたりまでです。

飯田)僕の背丈くらいまで。どちらかへ避難されていたのですか?

住民の方)2階。ばあさんが動けないから。だんだん水が上がって来て。

飯田)水が上がって来たのは夜中ですか?

住民の方)9時くらいかな。

飯田)そのぐらいから水が上がって来て。

住民の方)ばあさんがベッドで寝ていたのだけれどね。

飯田)それを2階に上げて。

住民の方)畳も何もかも全部。テレビは2台〜3台がだめ、冷蔵庫もだめ、全滅だね。

 

飯田)冷蔵庫が横倒しになっていて、成人男性の高さくらいまで水が来て、畳もすべてぐちゃぐちゃという状況でした。

佐々木)ベッドで寝ていたおばあさんは何歳ですか?

飯田)90歳代です。それを70歳代のご夫婦で、介護しながら暮らしていらっしゃいました。

佐々木)典型的な老老介護ですね。高齢化で、さらに災害が来たらどうするのかという。8050問題もあるではないですか。80代の親が50代の引きこもりの子どもを世話しているのも、これから9060となるのですからね。

飯田)60歳の息子に、介護の負担がかかって来る。

佐々木)そういう状況のなかで、さらに災害がやって来るという、未曽有の話です。

飯田)今回は大人の背の高さくらいで済んだからよかったものの、環境を考えると90歳代の親を抱えて、70歳代の人が介護している。避難所を開設しても、そこまで避難できるかどうかですよね。早めの避難だったり、拠点をいろいろつくって生活するというようなことも、考えなくてはならないかもしれません。

【台風19号】浸水した住宅街で活動する、災害派遣された陸上自衛隊の隊員ら=2019年10月13日午前、東京都世田谷区 写真提供:産経新聞社

環境の変化から考え直さなければならない時期に来た水害対策

佐々木)水害が起きなかった自治体はまだ甘えているところがあって、避難所に指定している公民館や体育館が低い場所にあるケースがあります。3.11のときもありましたよね。行ってみたら、そこも津波にやられてしまったという。たぶん自治体側もそこまで防災計画をきちんと立てていないので、下手をすると家にいる方が安全だということもあります。高台の家から、平地の体育館に避難することはあり得ませんからね。水害があまりなかった20世紀の長い期間があって、それこそ1947年のキャサリン台風などはありましたが、60年代〜90年代は水害が少なかったのです。その常識で考えるから「脱ダム」とか、「コンクリートから人へ」という政策が民意を得たりしたのですが、そこを再転換して防災をきちんとやり、「ダムも必要だよね」という話に戻さなければいけないかもしれません。

飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

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