トルコのシリア侵攻〜トルコだけを責められない難しい背景

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月15日放送)にジャーナリストの有本香が出演。トランプ大統領がトルコに対して制裁を表明したニュースについて解説した。

シリア北部カミシリで営まれた、トルコ進撃に伴う戦闘で死亡したクルド人民兵の葬儀(シリア・カミシリ)=2019年10月14日 写真提供:時事通信

トランプ大統領〜トルコに対する制裁を表明

アメリカのトランプ大統領は14日、シリア北部のクルド人支配地域に侵攻しているトルコに対して、鉄鋼関税の引き上げなどを含む制裁に踏み切る方針を表明した。

飯田)現在トルコ軍はシリア北部に侵攻しており、敵対するクルド人に対する軍事作戦を続けています。国境周辺の町や村の制圧を進めていて、多数の死者や難民が発生しているとも言われています。

10日、トルコ軍が攻撃したシリア北部テルアビヤドで立ち上る黒煙=2019年10月10日 トルコ南東部アクチャカレ(共同) 写真提供:共同通信社

トルコを責められないところもある

有本)この辺りは少し複雑だから、なかなか日本ではわかりにくいところもあるし、専門家の方々でも見解はかなり分かれています。アメリカは、シリアに軍をそのまま少し残すということを、トランプ大統領が決断したというニュースが入っています。ISの動向を監視するためということです。それと、もう1つ懸念されているのは、クルド人勢力がアサド側と今後また近づくのではないかとも言われています。どうなるのか、本当に予測できない状況になっています。私はトルコが軍事侵攻というか、作戦を展開していることを、あながち全部は責められないと思います。

飯田)トルコのエルドアン大統領としては、国内のクルド人の方々の政党、PKKというものがあって、いろいろと過激な抗議活動もやるのでテロ組織と認定している。

クルディスタン労働者党の兵士(クルディスタン労働者党-Wikipediaより)

PKKに対するクルド人の認識

有本)認定していますね。PKKに関しては、クルド人も全部を是認しているわけではないし、「非常に困る」という声もあります。

飯田)平和に共存しているはずだったのにと。

有本)3年前にトルコに行きましたが、イスタンブールの街の中心部でも、普通に生活されているクルドの方々は大勢いらっしゃいます。日本での情報からは、クルド人の人たちはおしなべて差別されている状況だと思いがちですが、そうでもない。もちろんトルコ人と違う部分は相当あるのだけれど、かなり成功している人もいます。シリア領内に住んでいるクルド人同士には親戚がいるわけですが、そこから逃げて来た人たちを、商売しているクルド人たちが、お店で働かせるというところもありました。

飯田)雇って。

有本)ですから、トルコのなかでしっかり根を張って生活している方たちは、自分はクルド人だけれど同時にトルコ国民だとも言っていて、PKKのような過激勢力に関しては、その当時も迷惑だという声もありました。

飯田)今回のことも、アメリカが引くかもしれないというところ。ある意味でのパワーの空白は、必ずどこかが…。

トルコ最大の都市イスタンブール(トルコ-Wikipediaより)

ヨーロッパはトルコに対して非難するだけではなくきちんと向き合うべき

有本)大変なことになりますからね。とりあえず軍を残す決断をしたという、最新の情報がありますから。それと、ヨーロッパは非難していますが、非難するだけではいけませんよね。

飯田)もとを辿れば…。

有本)当事者中の当事者でしょう、というところがあるわけだから。

飯田)特に、イギリスの三枚舌外交とか。

有本)古く遡ればそういうところもありますし、フランスだって文句を言っているだけではまずかろうという部分はあります。

飯田)そもそもシリアの辺りは、フランスの植民地だった。

有本)フランスの植民地にしていた場所ですから、そういう意味できちんと、この問題にヨーロッパも向き合うということは求められるでしょうね。

飯田)トルコに対して強く出ると、「お前のところに難民たちは行きたいと言っているから、送り出してやるよ」と言われる。それは勘弁してくれという問題。

有本)ヨーロッパがいいとこどりをするのはまずいでしょう。

飯田)綺麗ごとでは済まされないところだった。

アンカラの首相官邸で記者会見をするエルドアン(レジェップ・タイイップ・エルドアン-Wikipediaより)

ずる賢いエルドアン大統領

有本)そうです。そのなかでアサド政権とロシアが、いろいろ取引しているのではないかと見られています。これに対して、アメリカが耐え難い状況だということを言っているのだから、目が離せない状態ですね。

飯田)ロシアの話が出ますと、ミサイルシステムを入れたりと、エルドアン政権とも悪くない。

有本)あれは、アメリカに対しては悪い。わざとでしょうけれどね。トルコのエルドアンさんも、なかなかずる賢いところがある人で、強権的なイメージで伝えられてはいますが、意外と国民の人気は高いですからね。日本にいると理解しがたいのですが。

飯田)公共投資をやったり、貧困層への手当という意味では人気があります。

有本)貧困層に対する手当を、かなり厚くやったということです。いま世界に出て来ているこの種のリーダーは、ある意味リーダーシップが強いとも言えるのですが、強権的であるかのように言われる人の特徴ですよね。エルドアンさんもそうだし、フィリピンのドゥテルテ大統領もそうです。貧困問題は国にとって本当に重要でしょう。

飯田)そうですね。世界的にも重要です。

飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

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