そもそもイギリスはなぜEU離脱を選択したのか

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月29日放送)にジャーナリストの有本香が出演。イギリスのEU離脱期限が延期されたニュースについて解説した。

イギリスのEU離脱期限、来年1月末までの延期で合意

イギリスのEU離脱を巡って、EU加盟国は28日にブリュッセルで大使級会合を開き、10月末の離脱期限を最長で2020年1月31日まで延期することで合意した。これによりイギリスが10月31日に、何の取り決めもなくEUを抜ける「合意なき離脱」は回避された。

飯田)EUのトゥスク大統領が、ツイッターで発表しています。延期は今回で3回目ということになりました。

有本)難産というか、難渋するであろうことは当初からわかっていたでしょうけれど。ジョンソン首相は就任のときに、この人らしい叫びを言っていましたよね。10月末までに何とかしろよと。

飯田)何としてでも離脱すると。

有本)そうでなければ怒るぞ、というニュアンスでしたよね。選挙に突入するということなのですかね。

飯田)すぐに総選挙という議案が出されましたが、3分の2がないと可決できない。そこまで得られずに否決されています。この後はどうするのかというところですが。

EU特別首脳会議後に記者会見するトゥスクEU大統領=2019年4月11日、ブリュッセル(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

メイ首相の言っていた世界の大きな流れの変化〜イギリスがEU離脱へ向かった根源

有本)それでも、選挙で信を問うて行くということになると思いますけれどね。最近の受け取られ方としては、「何回も否決されて何をしているのか」という話ですが、実はもっと大きな流れで捉えるべき事柄だったのです。そもそも国民投票があったのが2016年で、その直後にジョンソン首相の前任であるテリーザ・メイ首相が党首になりました。その当時、非常に印象深かったのですが、党首として言っていたのは、世界の大きな歴史的な流れについてです。いままで世界はみんなが一緒になる方向、平準化されて行く方向が幸せになることだとずっと言って来たけれど、実はそうではなかったと。自分の隣に知らない人が突然来て、代々この国に生きて支えて来た人間と、まったく同じ権利を享受することに対して不満を持つ人がいても、それは当然である。不満を募らせる人がいるのも当然である。他の国から人が来て自分たちの仕事を奪ってしまう、あるいは共同体を一変させてしまう。そういうことに対して恐怖を抱く人たちを、メディアや政治家は「あなたたちは遅れている」という感じで軽蔑して来た。でもそれは間違いだと。一般的な人たちのそうした感覚を大事にして、そのことに国は応えなければいけないのだと彼女は言っていて、そういう流れのなかで出て来たのがEU離脱であり、トランプ政権の誕生ということでもあったのです。日本においてもそういう世論の流れがあるわけで、これは無視できないことなのだろうと私は思う。それに、あの当時いちばんEU離脱を激しく主張していたのが、あのジョンソンさんです。

飯田)保守党のなかでね。

英下院、発言、ジョンソン首相、ボリス・ジョンソン=2019(令和元)年9月3日、英ロンドン(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

世界が分岐点を迎えていることに目を向けて、この問題を見るべき

有本)ジョンソン首相としては、自分が持っている政治課題であると同時に、世界の流れのなかでイギリスがこれからどうやって生きて行くのかという、大きな分岐点に立たされている認識があるのでしょう。だから、何としてでもやり遂げる覚悟はあると思います。これから政治的にどう手を打って行くかということですが、私たちはその政治的な手ばかりに目を奪われるのではなく、「世界がいま流れを変えようとしている」ということに、もう1度目を向けてこのニュースを見るべきだと思います。

飯田)まさにグローバリゼーションと言われたもの。確かに、これは無条件に素晴らしいものだと、日本では未だにそういう報道もあります。

有本)もちろん、EUと一緒になるほうが利益があるという人たちもいるし、目先の点でいえば当然、利益はあるわけです。でもそれをつきつめれば、国とは何なのかということになる。イギリス人の守り育てて来た伝統的な生活、進歩と同時に強固に守って来たものがある。それが自分たちの意思決定できないところで、いとも簡単に壊されてしまう。EU議会や官僚機構で決められたことが、突然降りて来る。これを不当だと思うことは、考えようによっては健全だと私は思います。

飯田)確かにEUの実験というのは、主権の一部をEUに吸い上げる形でやって行く。そうなると、国民国家同士はそこでぶつかり合うわけですよね。同じ国のなかだったら、「俺たちは同胞だからしょうがない」と。どこかで経済が落ち込んだり、災害があっても助け合おうとなるのだけれど、それが別の国となると、「どうして俺たちの税金を持って行かれなくてはならないのだ」となってしまう。

有本)吸い取られてしまうということだと思います。先ほど飯田さんがおっしゃったグローバリゼーションという言葉で言うと、かつてイギリスはまさにグローバリゼーションの覇者だったわけです。

飯田)かつての大英帝国。

リセットして自分たちにいい枠組みを作り直そうとしているイギリス

有本)大英帝国時代はね。そのグローバリゼーションを地で行っていたのがイギリスだったのだけれど、いまはそんなことはなく、そのメリットが小さくなっている。EUとしてヨーロッパ全体で一緒になることにより、デメリットのほうが大きくなっている。その両方を天秤にかければ、もう1回自分たちは離脱して、自分たちにいい枠組みをもう1度作り直そうということなのかもしれません。単純に国民の声に応えるというだけではなくて、イギリスにとって旨味が少ないでしょう。

飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

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