「都市型のコンパクトオリンピック」はどこへ?〜五輪マラソン“札幌案”の課題

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月31日放送)にジャーナリストの鈴木哲夫が出演。オリンピック札幌開催案からみる課題について解説した。

五輪マラソン札幌開催案 急転「政治決着」に反発も 2018年8月の北海道マラソンで札幌市街地を走るランナー=2018年8月26日 写真提供:共同通信社

IOC調整委員会の札幌開催案協議〜小池都知事は改めて反対

東京オリンピックの暑さ対策として、マラソンと競歩の開催地を札幌市に変更するという変更案について、国際オリンピック委員会(IOC)調整委員会や東京都、大会組織委員会、政府などが30日から合同会議を開き協議した。

 

記者)現時点では知事として明確に、IOCの札幌開催には反対ということでよろしいですか?

小池都知事)Decision(決定)とおっしゃっていましたけれども、これについては私どもは受けていないということです。東京都として別の会場に都民の税金を支払う考えはございません。

 

飯田)会議の後、記者の質問に答える小池都知事の音声をお聞きいただきました。まずは費用負担の部分をコメントしたわけですが、いろいろとメールもいただいております。東京都板橋区から‘しょうきち’さん54歳の方。「『エコオリンピック』を謳っていたはずなのに多額の税金を使ってこんな状態。トライアスロンも水質問題で変更するのではないですか」と。あるいは馬術だとかいろいろな競技が北海道で行われるのかというようなことも言われてます。

【小池都知事がIOCのコーツ調整委員長と会談】IOCのジョン・コーツ調整委員長(左)と会談する小池百合子東京都知事=2019年10月25日午後、東京都新宿区の東京都庁 写真提供:産経新聞社

「コンパクトオリンピック」はどこへ行ったのか

鈴木)そういったものをこれから移すのかどうかは、まだ微妙な状態です。でもこれだけ問題が大きくなって、今後も何でもかんでも移そうということになると、「東京オリンピック」でなくていいのではないか、となりますよね。僕は他の競技については、慎重になって行くのではないかという見通しを持っています。それにしてもリスナーの方が指摘されていた通りで、『エコオリンピック』『都市型のオリンピック』『コンパクトなオリンピック』というのが、東京オリンピックの売りだったのです。市民の協力によっていろいろな工夫をしながら、都市型であまりお金をかけずにやって行く。これが『コンパクトオリンピック』という、ある意味では誘致の際の1つの売りでした。僕は2002年から取材をしていますが、本番が近づくと「もう決まったよね」「もう時間がないよね」「だから仕方がないよね」と言って、どんどん税金が投入される可能性が出て来るから、気を付けなければいけないと書いて来ました。実際に予算をどうするかということで、これまでも東京都や組織委員会、国が揉めたりしています。そのたびに、何とか議論しながら分担を決めている。そう考えると今回、マラソンの件がいきなり降りて来たことは、お金の問題や規模の部分で果たしてどうなのか。もっと言えば組織委員会を含めて、その辺りを本当にきちんと考えているのか、問題提起しなければならないと思います。小池さんが言うように地方財政法では、1つの自治体のお金は特例などを除いて、ルールとして他の自治体には使えないことになっている。だから札幌で行うからといって、東京都のお金を札幌にポンと持って行くわけにはいかないのです。札幌で行うとなったときに、お金の問題をどうするのかは極めて重要な問題で、10万円や20万円の世界ではないわけですよね。

飯田)そうですね。

内閣官房内閣広報室より公表された肖像写真(森喜朗-Wikipediaより)

なぜ東京都知事に連絡が遅れたのか

鈴木)東京都はすでに暑さ対策を含め、マラソン関係で300億円を超える予算を投入しています。東京都だけではなく、コースになっている23区の自治体の予算も投入して、しっかりと進めて来ている。言葉は悪いけれど、これが捨てるお金になってしまうのです。23区の自治体は、もしかしたら返還請求という話が出て来る可能性もある。ならばこれは東京都に求めるのか、国に求めるのか、IOCに求めるのかと。では次に、札幌で開催する……これも警備代など、いろいろなことにお金がかかります。これを東京都から持って行けないのならばどうするのか。国から出せばいいと、組織委員会の幹部の方は最初、安易に言っていましたが、東京都と国のお金はすべて税金なのです。なのでこういったことで、「都市型のコンパクトオリンピック」というのはどこに行ったのかという話になります。この辺を徹底的にチェックしなければならないのに、時間がないなどということでやり過ごされているとすれば、これは大問題です。それともう1つ、IOCから言って来たときに、森さんが小池さんを外している感じがあったのですよね。15日に組織委員会の武藤事務総長が小池さんの元へ来たときに、彼女はびっくりしているわけです。実はちょうどその日の夜に、僕は都庁の周辺を取材しているのですが、とにかくいますぐに記者会見をしてぶちまけると。札幌も全部知っていて、なぜ東京都だけが知らなかったのか。

飯田)きょう(31日)に詳しいことが出ていましたが、8日〜9日あたりに固まって来ていて。

鈴木)1週間前にね。

飯田)そのくらいから、すでに札幌市も含めて根回しは済んでいたという話が出ていますね。

鈴木)組織委員会の森会長が、「IOCから『東京都には最後に話してくれ』と言われた」と言っているけれども、やはりオリンピックは東京都、国、JOCと組織委員会。この4つが連携してやって行こうと、握手をして約束していたではないですか。ここで費用の問題、手続き上で東京都への話が遅れてしまった。森さんと小池さんの関係は、2008年〜2009年くらいからよくないのです。なので、そういうことがあったのではないかと。お金の問題と連絡系統の問題というのは、ものすごく大きいと僕は思います。

日本スポーツ協会前より見る(2019年10月24日撮影)(新国立競技場-Wikipediaより)

五輪開催が迫るなか、危うい信頼関係

鈴木)これからオリンピックムードを盛り上げて行かなければならないなかで、信頼関係を損なうようなことが起きてしまった。単にマラソンをどこに持って行くのかという問題だけではなくて、いきさつや経緯も含めて、その辺をしっかりと表で話さなければ前には進めませんよね。

飯田)開催都市の知事がIOCにパイプがないということになってしまうと、いろいろな意味で具合が悪いですものね。

鈴木)森さんと関係がよくはないことはわかりますが、IOCが言って来た瞬間に、いちばんに小池さんに言っていれば前へ進んだのかもしれません。そういった部分の、ちぐはぐなところが気になりますね。

飯田)IOCは(今回の件を)“アスリートファースト”と言っていますが、それだったらそもそも論にはなるけれど、10月開催にすればと思ってしまいます。

鈴木)いいことを言うではないですか。なぜこの時期にやるのかと。こんなに会場を変えて行くならば、そもそも東京で行うこと自体が無理ではないかという話になりますよね。

飯田)東京どころか、と言ったところですよね。例えば次はパリでという話になりますが、パリだって夏は熱波で40度と言われています。それなら北半球の相当北の方か、南半球の相当南の方でないと、オリンピックはできないということになってしまいますよね。

鈴木)もうオリンピックまで時間がないだとか言っている人が結構いますね。それを理由にしてしまったらいけませんよ。そういうところをしっかり表に出して、1ヵ月くらい止まっても整理しなければ、僕は前に進めない気がします。

飯田)それこそ、バッハ会長はこれだけ日本に強気なのだから、(放送権を持つ)アメリカのテレビ局にも強気に言えばいいのですよね。

飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

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