世界中で拡大する貧富の差〜日本も絶対に大丈夫とは言えない

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月1日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。チリのデモを通して貧富の差の拡大について解説した。

信号機を燃やしてチリ政府に抗議するデモ隊=2019年10月29日、サンティアゴ(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

チリ大統領がAPECとCOP25の開催を断念

チリのセバスティアン・ピニェラ大統領は10月30日、首都サンティアゴで予定されていたアジア太平洋経済協力会議(APEC)と、地球温暖化対策を話し合うCOP25の開催を断念すると発表した。チリでは地下鉄運賃の値上げを発端とした大規模デモが9月から激化し、これまでに20人が死亡していて、大統領は断念について「チリ国民の利益を第一に考えるため」と説明している。

飯田)COP25に関しては、スペインが手を挙げたという報道も流れていました。

宮家)もっと深刻な問題があると思っています。南米にはブラジルという大きな国があるけれど、チリだって優等生だったわけですよね。なぜこうなってしまったかを考えてみると、世界共通の流れがあるのではないかと懸念しています。

首都サンティアゴ・デ・チレの景観。サンティアゴ・デ・チレはチリ最大の都市であり、南米有数の世界都市である(チリ-Wikipediaより)

世界共通で起きている貧富の差の拡大

宮家)冷戦時代の相手は共産主義だから、こちらは修正資本主義で、富の再分配で対抗したわけですよね。しかしソ連がこけてしまって、どうなったかと言うと、これからはグローバリゼーション、規制緩和だろうとなった。そうなると、弱肉強食の資本主義が戻って来るのです。結局はほんのわずかな勝ち組と、おびただしい数の負け組が出るわけですが、そのほんのわずかな勝ち組は月にだって行けるのですよ。負け組の人は街にあふれて不満を持ち、アメリカではトランプ現象、イギリスではブレグジットという形でポピュリスト、ナショナリストの政党を支えている。これが、チリでも形を変えて起きているのではないかと思うのです。この問題の本質は、貧富の差の拡大ですよね。でも、もともと富の再分配をやめたのだから、貧富の差は拡大するに決まっているのですよ。その問題をどうするかというところで、ポピュリズムが出て来るのです。補助金などをばらまくと財政がおかしくなって、これは大変だということになり、本来は金融を引き締めて税金も上げなければいけない。そうしたらますます反対が来るという、悪循環にはまってしまっていますよね。それはチリだけでなく、ブラジルも似たようなものです。アジアでも、ヨーロッパでも、日本とは言いたくないけれど、世界各地に共通する現象になるかもしれません。

飯田)結局、過度な引き締めから過度のばらまきへ、行ったり来たりを繰り返している。かつての冷戦時代はその真ん中を探ろうとしていたのが、極端になって来ているということですか?

宮家)グローバリゼーションであれだけ経済が大きくなったのだから、バブリーな時期もあったかもしれない。いろいろな要素があるとは思いますが、もっと健全な経済運営をやらないと、中南米の経済は持たないですよ。

飯田)確かに世界各国でそうだし、IS絡みで不満を持った若者が参加するのと同じ現象を抱えていますよね。

世界恐慌初期の取り付け騒ぎ時にニューヨークのアメリカ連合銀行に集まった群衆(世界恐慌-Wikipediaより)

1930年代に近い現象

宮家)ですから、宗教かそれ以外の理由でということですよね。安定の時代を維持するのは非常に難しい。今我々は1930年代に近づいているのではないでしょうか。それだと大変なことになると思うので、このチリの問題はとても嫌な感じがします。

飯田)いろいろなところが符合しますね。1930年代は貧富の差が加速し、デフレが世界中に蔓延しました。インフレで、お札で遊ぶドイツの子どもの写真がありましたが、デフレがその後にあり、それが問題だったという説もありますよね。

宮家)歴史は繰り返さないけれど、韻を踏むと。つまり、同じようなことが起きる可能性が常にあるので、我々は気を引き締めなければいけません。

飯田)いかに再分配をやりながら経済成長を目指すかという、ある意味で狭い部分を狙って行くのかもしれませんが、その均衡点をまったく見つけ出せずにいるということですか?

宮家)日本だって他の国ほどではないにせよ、貧富の格差が拡大していると思うし、これは世界共通の問題です。日本は比較的上手くやっている方だけれど、絶対に大丈夫とは言えません。その意味でも、気持ちを引き締めなければいけません。

上に上がるチャンスも失われて行く

飯田)それこそ、民間の英語試験の話題もそうかもしれません。いままでは一発試験で逆転、貧しくても頑張ればいい大学に入れるということがありましたが、それもだんだん難しくなって来ているのですか?

宮家)そうかもしれません。僕はいままでも一発逆転でやって来ましたからね。試験はヤマですからね、ヤマさえ当たればこっちのものですよ。

飯田)そういう社会をつくって行くべく、本当は議論してもらわなければいけません。

宮家)健全な社会がないと、安定しませんね。

飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

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