拷問に代わるテロ対策として多用される“跡が残らない”尋問方法とは

ニッポン放送「ザ・フォーカス」(10月29日放送)に元外務省主任分析官・作家の佐藤優が出演。テロ対策の新しい概念について解説した。

イラク北部モスル旧市街の入り口近くで、政府軍の対テロ部隊による尋問を受ける過激派組織「イスラム国」(IS)メンバーとみられる男(中央)(イラク・モスル) 撮影日:2017年06月24日 dpa/時事通信フォト

アメリカの軍事作戦で、過激派組織IS(イスラム国)の指導者、バグダディ容疑者が死亡したのを受けて、アメリカ国務省は11月14日、関係各国の閣僚級による会合をワシントンで開催すると発表した。会合では、今後の掃討作戦の在り方を協議するものと思われる。

森田耕次解説委員)アメリカのメディアによりますと、死亡したISの指導者バグダディ容疑者の遺体はイスラム教に則った葬儀が実施された後に水葬されたということです。場所はわかっておりません。2011年に殺害された国際テロ組織アルカイダの指導者、ビンラディン容疑者と同じような措置で、埋葬場所が過激派の聖地となることを防ぐ目的と見られています。

佐藤)でも、この説明はちょっと変なのですよ。なぜかと言うと、ビンラディンやバグダディが所属するグループ「ハンバリー法学派」(※ イスラム教スンニー派の四大法学派の一つ)はお墓を崇拝する伝統がありません。ですから聖地になることがあり得ないことなのですね。

森田)そもそもお墓を崇拝しないのですね。

佐藤)お守りなども持たないし、消し去ってしまいたいというアメリカの意図が強いように思います。

伊勢志摩サミット アウトリーチ会合・記念撮影 オバマ米大統領と安倍晋三首相 提供:産経新聞

佐藤)ここでトランプ大統領がいちばん意識しているのは、実はオバマ前大統領です。オバマが9.11の米国同時多発テロ事件を起こしたビンラディンを追い詰めました。トランプはそういうことをやっていないので、それをバグダディでやっているということです。そして、これを最大限に来年の選挙対策として使おうとしているのは透けて見えていますが、アメリカのメディアを見てみると、普段はトランプを批判しているウォール・ストリート・ジャーナルも社説でトランプを絶賛しています。「捕虜の尋問は継続しなければいけない」と。いまは「拷問」はやらないことになっていますが、「物理力を行使する尋問」という新しいカテゴリーがあるのです。例えば、カエル座りをしてその後で立たせるというのを一日中やらせて寝かせない、袋を被せて大音響を流して寝かせない。

森田)それは拷問ですよね……

佐藤)拷問ではなく、跡が残らないですからね。いちばん厳しくて効果があるというのは、椅子に縛り付けて上半身を思い切り揺らすのです。そうすると、頭がふらふらになって、ときどき首の骨が折れて死んでしまうのです。こういったことが「物理力を行使する新しい尋問」ということで、いま非常にテロ対策として多用されているのですよ。イスラエルで開発された方法です。

森田)それはOKなのですね。

佐藤)テロによる被害と若干の人権に対する侵害があることを比べて、テロに対する被害の方が圧倒的に重い場合には使ってよいと。

森田)今回はそれで居場所を突き止めた可能性もあるということですね。

佐藤)十分にあると思います。それをアメリカの新聞は応援しています。あと、『アメリカの軍が前線に出ているからできるのだ』と。『トランプは「撤退しろ」と言うけれど、やはりいた方がいい』ということで、アメリカ全体が勇ましくなっています。

 

ザ・フォーカス
FM93AM1242ニッポン放送 月-木 18:00-20:20

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