中国共産党が目標として掲げる「統治システムの近代化」の意味

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月6日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。上海で始まった「中国国際輸入博覧会」をキーワードに、中国の国内市場拡大に向けた動きについて解説した。

1日、空から見た上海国家会展中心。(小型無人機から)第2回中国国際輸入博覧会が5日から10日まで、上海国家会展中心(国家エキシビション・コンベンションセンター)で開催される。会場では既に世界各地からのゲストを迎える準備が整っている。(上海=新華社記者/凡軍)=2019(令和元)年11月1日、クレジット:新華社/共同通信イメージズ 写真提供:共同通信社

中国国際輸入博覧会

中国・上海で5日、外国企業が売り込みたい製品やサービスを展示する「中国国際輸入博覧会」が始まった。開幕式で演説した習近平国家主席は「関税をいっそう引き下げる」と語り、経済の対外開放を進める方針を強調。また、アメリカが求める知的財産権の保護について「各国共同で強化すべきだ」と訴えている。

飯田)中国の巨大な市場を目指して、ということが謳われています。

佐々木)去年(2018年)に続いて2回目で、国内市場をもっと大きくしましょうという、日本が戦後たどって来た道とまったく同じなのです。高度経済成長が日本でもあって、盛んに海外に輸出して儲けました。ところが日本国内の給与が上がると、安い賃金で売ることができなくなって来た。高度経済成長が終わって石油ショックがあり、低成長時代に入ったときに、宮澤首相が「これからは生活大国日本にするのだ」と言った。貧しいけれども小物を海外に売るのではなくて、内需を主導にしようと切り替えました。バブルのころから現在に至るまで、日本は内需が拡大して、結果的に輸出ではなく内需を中心に回る国になりました。

飯田)GDPの6割ほどが内需だと言われていますよね。

佐々木)中国も同じように給与が上がっているので、輸出力が強くなくなっています。もちろん5G、AIなど技術的には強いのですが、それだけでは食べられない。低成長時代に入って来たら、内需中心にする必要がある。14億も人がいるのですから、需要喚起力はすごいわけです。そこに外資が入って来れば経済が回るだろうということで、まさにバブルのころに日本がやったのと同じ方向に進んでいます。

中国の持つ問題

佐々木)ただ、そうは言っても中国は火種を抱えていて、例えば一人っ子政策を長くやったこともあり、少子化がすごい勢いで進みつつある。人口ボーナスが終わってしまったので、日本と同じように市場が縮小して行く可能性が大きいのです。そうなったときにどうなるか。いまは成長が続いていて豊かな国民が増え、中間層が増えているからこそ、共産党の一党独裁が続いているところがあるわけです。これが逆回転し始めたときに、非民主主義的な独裁政権が支持され続けるのかどうかという点については、考えなければいけません。興味深いのが、10月の終わりに中央委員会総会という中国共産党の大きな大会があって、あのときに採択されたドキュメントのタイトルが「国家の統治システムと統治能力の近代化」というものです。

殿試の様子(科挙-Wikipediaより)

共産党の統治システムを近代化しようとしている

飯田)統治能力の近代化。

佐々木)もちろん、それで民主主義にするつもりはまったくありません。ただ、共産党の独裁システムをより近代化すると。何を言っているのかよくわかりませんが、実際に中国共産党の独裁システムはよくできていて、膨大な量の官僚を科挙のような試験で採用して、それを地方政府に送る。送られた地方政府で経済成長を成し遂げるなどの手柄を立てると、中央に戻す。その回転での公務員養成システムがよくできているのです。これはまさに儒教時代の官僚養成システムとまったく同じで、やはり中国は儒教の国であり、儒教時代の、多少腐敗していても優秀な官僚が率いるのであればそれでOKというものです。ある意味で中国がやろうとしているのは、儒教政治のアップデートということを考えているのではないでしょうか。

飯田)さっきおっしゃった5GやAIなどのツールも、効率的に使って行くということですね。

テクノロジー管理をされることに抵抗のない国民性

佐々木)ひょっとしたらデジタルレーニン主義みたいなもので、デジタル経済は官僚が決めていたから上手く行かなかったのだけれど、AIによって特徴や傾向の抽出を上手くやれば、ある程度の計画経済を実現する可能性もあります。それと上手く組み合わせることによって、共産党の独裁システムをテクノロジーと混ぜ合わせてアップデートするということを、もしかしたら狙っているのかもしれません。

飯田)なるほど。ただ、そのためには全体を常に見続ける、膨大なデータをプライバシーに関わらず取って行くことも必要ですね。

佐々木)でも、中国人はテクノロジーに対する信頼度が高い。日本よりもずっと高いので、テクノロジーに監視されることをそんなに気にしていないという分析もあります。中国は日本人にとっては脅威で、隣にあっていつ戦争になるかわからない国ですが、一方で中国がやろうとしている壮大な政治実験というものには、第三者的には関心があります。日本を飲み込んで欲しくはないですけれどね。

飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

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