有志連合が正式に始動するも〜戦争になることはない米とイランの関係

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月8日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。アメリカ軍主導の有志連合による「センチネル作戦」が正式に始動したニュースについて解説した。

米主導有志連合が本格始動 米主導の有志連合の司令部発足式典に出席する関係者ら=2019年11月7日、バーレーン・マナマ(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

アメリカ主導の有志連合によるホルムズ海峡の警備が正式に始動

中東の原油輸送の要衝、ホルムズ海峡などの安全確保を目的とするアメリカ軍主導の有志連合による「センチネル(番人)作戦」が7日、正式に始動した。この作戦にはアメリカに加え、イギリス、オーストラリア、サウジアラビアなど合わせて7ヵ国が参加を表明。各国が要員や軍艦を派遣し、ホルムズ海峡やバベルマンデブ海峡、オマーン湾などを通る船舶の警備に当たる。なお、日本は参加を見送り、自衛隊を独自に派遣する方向で検討を進めている。

飯田)バーレーンにある、アメリカ海軍第5艦隊司令部で式典が行われたということです。

共同記者発表を終え、握手するイランのロウハニ大統領(右)と安倍首相=2019年6月12日、テヘラン(共同) 写真提供:共同通信社

アメリカが核合意から抜けたことで面子がつぶれたロウハニ大統領

宮家)そもそもイラン情勢がなぜこんなことになったのか、おさらいしたいと思います。イランの核合意ができましたが、イランはずっと合意は嫌がっていました。しかし欧米が圧力をかけて、国連安保理の常任理事国にドイツが入り、交渉してようやくできた妥協の産物が、あの核合意なのです。けれど、イランが抵抗したのだから、完全な合意ができるわけがない。それでもいままで関係国は我慢して合意を維持して来たのに、今回アメリカが抜けてしまった。アメリカは戦争をするために抜けたというより、この合意は不完全だからもっと厳しい内容、すなわちイランが核兵器を未来永劫、絶対に作れないような厳しい制限を課すことを考えているのでしょう。圧力をかけたら、イランも再交渉に応じるのではないかという期待があったのかもしれない。しかしイランからすれば、改革派と言われているロウハニさんが上手くまとめたつもりの合意だったけれど、アメリカが抜けてしまったわけで、彼の面子は丸つぶれです。イラン国内には「核兵器を作れる能力は握っておきたい」というグループが必ずいますから、内部が割れているのです。いまの状況は、アメリカは現行の合意をまず潰そうと思っているから、こうやって徹底的に圧力をかける。その一環がこの有志連合なのです。イランも抵抗している、そして国内も割れている。これが現状です。

イランのロウハニ大統領(右端)と会談する安倍晋三首相(左端)(アメリカ・ニューヨーク)=2019年9月24日 写真提供:時事通信

再交渉に応じないイラン、実態はそれほど強固ではない有志連合

宮家)これから何が起きるかということですが、イランは再交渉に応じないでしょう。応じたら、いまの大統領は政治的に危ない状況になる。強硬派がいるわけですからね。「話が違うではないか。核合意を結んだら経済制裁がなくなって、豊かになると言ったではないか」と批判される。更にまた譲歩をするのかというわけです。アメリカの方も、イギリスとオーストラリアとサウジアラビアが有志連合に参加しているとはいえ、サウジアラビアはもともとあの辺りにいるわけだし、大した海軍はない。イギリスとオーストラリアが入ったのは、お付き合いでしょう。他のヨーロッパ諸国は入っていません。日本も参加を見送りました。日本はもうジブチに部隊がいるわけだし、海賊対処などのミッションをすでにやっています。その一環でもう現地にいるのだから、防衛省設置法で調査研究をやるという形で出て行ったということ、そこまではよいと思います。

ジブチ共和国における自衛隊拠点-Wikipediaより

小競り合いはあっても大戦争は起きない

宮家)私はこの後、あまり大きな事件は起きないのではないかと思います。まずイランがここで、アメリカに軍事的喧嘩を売るわけはありません。ホルムズ海峡の封鎖でもしようものなら、アメリカが逆封鎖してイランの石油だけが止まってしまう。イランにとってそれは完全にオウンゴールだから、イランがそんな馬鹿なことをするはずがない。一方、アメリカがイランを攻めることもありません。アフガニスタンで18年戦争やっても平定できなかったのです。イランと戦争をやろうものなら、5年10年では済まない。ものすごく長い大混乱となります。湾岸地域の石油ルートが不安定になるわけだから、アメリカだって対イラン攻撃を簡単にできません。前から言っていますが、米イラン間は小競り合いはあっても大戦争は起きない。普通に常識的、合理的に判断すればね。その段階はまだ続いていると思っています。

イラン学生通信(ISNA)が13日、AFP通信に提供した、オマーン湾で黒煙を上げるタンカーの画像=2019年6月13日 写真提供:時事通信

心配はイランの強硬派の暴走

宮家)ただ心配なのは、イランの強硬派が暴走した場合です。この間もタンカーに穴を開けたり、アメリカの無人機を落としたりしているようですが、そういう誤算に基づくいろいろな駆け引きが、突然暴走するという危険性はまだある。そういう点では要注意です。今回の日本の判断ですが、普通なら有志連合に参加してもおかしくないのだけれど、いまの状況では妥当だと思います。トランプさんが何を考えているかわからない状況で、火中の栗を拾う必要はまだないと思うからです。しかし、ここでもし日本の、もしくは日本人の乗る船舶が本当に攻撃されたら、話は違います。日本として見て見ぬふりはできません。そういう意味でも、自衛隊が行ってプレゼンスを示すことはよいと思います。

無人機の攻撃を受けたサウジアラビア東部アブカイクの国営石油会社サウジアラムコの施設から上がる黒煙(ビデオ映像より)(サウジアラビア・アブカイク)=2019年9月14日 写真提供:時事通信

サウジアラビアの問題は内政上の不安さ

飯田)アメリカとイランが直接ということは考えにくいですが、サウジとイランがぶつかったとき、アメリカがどう出るかによって、自動的に引きずり込まれることはありませんか?

宮家)あるかもしれません。もしイランが判断を間違えて、サウジアラビアに対して、もしくはサウジアラビアの油田に対して全面的な攻撃をはじめたら、アメリカは必ず守ります。ただサウジアラビアの真の問題は、外からの脅威ならアメリカが守れるけれども、内側の脅威からは守れないということです。例えば、石油油田地帯はシーア派が多いわけですから、シーア派住民が暴動を起こすなど内政上の問題が出た場合、アメリカは手の出しようがないのです。

飯田)今回の件もそうですよね。

宮家)ええ。サウジアラビアの油田地帯に、イランがあからさまに外的攻撃をかけるのであれば、アメリカが反撃すればいい。むしろ心配なのは、湾岸各国で内部から何かの動きがあって、地域全体が不安定化することです。

飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

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